法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

戦争

『ハクソー・リッジ』の舞台が宣伝から隠されている事情は理解できるが、それを生みだした状況そのものがつらい

もちろんダチョウ倶楽部を呼んで芸をさせるような広報が正しかったとは思わない。 しかし違う計画を副題に入れたような『ドリーム』*1と比べて、沖縄戦という要素を隠した判断は理解せざるをえない。映画界の問題というより、日本社会の問題として。 映画「…

浅羽祐樹『韓国化する日本、日本化する韓国』において、「強制連行はなかった」等の事実誤認が「いちいちもっとも」と評されていた件について

下記エントリで予告した問題について、あらためて簡単にまとめておく。 浅羽祐樹『韓国化する日本、日本化する韓国』巻末の読書案内を読んで、池上彰氏と同じくらいの信頼性と感じた件 - 法華狼の日記 浅羽氏の文章は、できるだけ多義的に読めそうな表現を多…

米国から少女像を失わさせるため、原爆の子の像の記憶を失う人々

米国のグレンデール市に、従軍慰安婦を表象する少女像が建立されている。 それを撤去させようとする訴訟に、日本政府が意見書を出したあげく、少女像の建立を官房長官が批判した。 http://www.asahi.com/articles/DA3S12865185.html 米国のロサンゼルス近郊…

『トンマッコルへようこそ』

1950年代の朝鮮半島で、人民軍と韓国軍が激しい戦闘をつづけていた。そしてとある山奥の村に両軍の小部隊が迷いこみ、一触即発の状態になる。 しかし武器を向けあう兵士を横目に、村人たちはいつもどおり平和な日常をおくろうとしていた…… 2006年に日本公開…

わざわざ中国共産党が発掘しないことをかんぐる人々は、南京軍事法廷で死体の発掘をしていることすら知らないのだろうか

死体が出てこないという古典的な詐術を意識してか、「ニュースの社会科学的な裏側」が死体を発掘すべきと主張している。 南京大虐殺論争に決着をつけるためのココ掘れワンワン 自説を裏付けるための発掘調査が出来るのに、中国政府がそれを実行していない今…

南京の人口が20万人から25万人に増えたから30万人も虐殺されていないと主張する人々は、5万人も増えたことをどう考えているのだろう

大前提として、20万人都市で30万人を殺せたはずがないという主張は、きわめて古典的な詐術にすぎない。 「20万都市で30万虐殺は不可能」論は欺瞞 - 南京事件FAQ まず、基本的に南京事件の犠牲者数は、民間人だけでなく軍人もふくむ。台湾の40万人説はもちろ…

アパホテルによる歴史認識を謝罪しない文がちょっとすごい

諸外国からの批判*1を受けて形式だけは謝るだろうと思っていたので、意外ではある。 客室設置の書籍について | 【公式】アパグループ 本書籍の中の近現代史にかかわる部分については、いわゆる定説と言われるものに囚われず、著者が数多くの資料等を解析し、…

産経新聞が「日本政府の調査などでは、「少女」と呼ばれる年代の女性が慰安婦になったことは裏付けられていない」と報じた件について

少女と呼ばれるべき年齢層の被害者もいたことくらい、なぜ日本政府もはっきり回答しないのだろうか。 【釜山・慰安婦像設置】慰安婦像は少女像にあらず 菅義偉官房長官「問題視しているのは慰安婦像」 - 産経ニュース 「少女」として描くことで、旧日本軍の…

戦争映画ベストテン〜実写限定〜

戦争映画ベストテン〜アニメ限定〜 - 法華狼の日記 あまり実写映画を押さえていない人間として、例年のとおりにアニメ限定で上記エントリを上げた。 しかし以前に参加したエントリのコメント欄を見返していて、こんなことを書いていたことを思い出した。 音…

「戦争映画ベストテン」の各賞への雑感

washburn1975氏による年末恒例のネット投票企画の集計結果が出ていた。まず上位50位から。 2016-12-18 今年も参加させてもらったが、票を入れた作品は『火垂るの墓』が17位、『風立ちぬ』が21位、『戦場でワルツを』が37位と、予想よりも高かった。 戦争映画…

戦争映画ベストテン〜アニメ限定〜

例によってアニメしばりで参加。 2016-10-31 推奨されている形式にそって、まず冒頭にリストを置く。 人狼 JIN-ROH(2000年、沖浦啓之監督) アンネの日記(1995年、永丘昭典監督) 映画ドラえもん のび太のアニマル惑星(1990年、芝山努監督) 戦場でワルツ…

『火垂るの墓』や『はだしのゲン』に比べれば、まだ『この世界の片隅に』は“よくある反戦アニメ”に近い

まだアニメ版の『この世界の片隅に』は観れそうにないが、産経記事*1の監督コメントで『火垂るの墓』が好意的に言及されたこともあって、とりあえず原作準拠で考えをまとめておく。 【スクリーン雑記帖】「この世界の片隅に」をめぐる“国旗”論争 政治的意味…

『不屈の男 アンブロークン』

映画の基本情報 イタリアから移民した不良少年ルイス・ザンペリーニは、その逃げ足の早さを兄に見こまれる。 陸上選手となったザンペリーニは、長距離走で高校生記録を叩きだし、ベルリン五輪で入賞し、つづく東京五輪に目標をしぼった。 しかし戦争がおしせ…

『南京1937 Don't Cry Nanking』

日本軍の侵攻から逃れて、首都南京へたどりついた四人家族。夫は中国人の医師で、妻は妊娠中の日本人。日本人の娘は年頃で、中国人の息子は幼い。 すぐに大規模な空襲がはじまり、街が壊滅していく。そして侵入した日本軍は暴虐のかぎりをつくし、もてあまし…

『風立ちぬ』

丸眼鏡の子供が飛行機を設計し、乗りこんで飛びたった。しかしその夢はゆがんでいき、ついには墜ちていく。 やがて成長した子供は設計技師となり、新しい飛行機をつくろうとする。戦争へつきすすむ国家に乗ることで…… 堀越二郎の半生と堀辰雄の小説を混ぜあ…

TVアニメ『食戟のソーマ 弐ノ皿』で太平洋戦争のゴボウ都市伝説が削られていた

ゴボウ都市伝説とは、日本軍が捕虜にゴボウを食べさせたところ、食文化の違いから虐待と受け止められ、戦犯裁判で有罪になったという逸話のこと。『はだしのゲン』などにも出てくる。 しかしApeman氏が10年ほど前から都市伝説として情報を集めて、少なくとも…

『スターリングラード大攻防戦』

列車を降りたソビエト連邦兵が列をなして、徒歩や騎馬で雪原を進んでいた。スターリングラードにせまりくるドイツ軍を押しとどめるため展開された一部隊だった。 だだっぴろい荒野に配置された兵士たちは、過酷な環境で塹壕に身をひそめながらドイツ戦車を待…

『グランド・ブダペスト・ホテル』

東欧の古びた高級ホテルに滞在していた作家は、大富豪のオーナーが狭い従業員室に泊まっている不思議に興味をもつ。 すぐにオーナーと知りあった作家は、かつて華やいでいたホテルの記憶を聞かせてもらうこととなった。 紳士なコンシェルジュと移民のベルボ…

『NHKスペシャル』ドラマ戦艦武蔵

どのように祖父が最期をむかえたのか知りたくて、真中麻有は祖父の戦友をさがしに四国へと来た。 祖母とともに遍路道をたどった真中は、ついに戦友の木山三男に出会うことができた。 歩き遍路をしていた青年とともに、真中たちが木山から聞いた祖父の最期と…

『ロシアン・スナイパー』

第二次世界大戦時のソ連に、ひとりの女性狙撃手がいた。戦争協力を求めて米国におとずれた時、20代で309人のファシストを殺害した戦果ともども注目される。 ルーズベルト大統領夫人も狙撃手に好意をもち、私的な交流をもった。大戦後にソ連へおとずれた時も…

『肉弾』

敗戦間近の日本で、激しい訓練を受けさせられる丸眼鏡の青年。彼は特攻隊員に選ばれ、作戦実施の直前、1日だけの休みを与えられる。 あてどなく歩き、童貞を捨てようとして、やがて少女にすがった彼は、最終的に特攻に向かう。しかし彼は日本から捨てられた…

『十二人の怒れる男』にチェチェン紛争をからめてリメイクしたように、『羅生門』に日中戦争をからめてリメイクするのはどうだろう?

ふっとそんなイメージがわいた。 12人の怒れる男 [DVD]出版社/メーカー: 東宝発売日: 2009/01/23メディア: DVD クリック: 17回この商品を含むブログ (45件) を見る 外国での『羅生門』リメイクは舞台を置きかえているのに、日本でのリメイクは時代劇というと…

稲田朋美防衛大臣が、誤解を払拭したいと語った直後、持論の封印に失敗

防衛大臣に就任して初めて、8月4日におこなわれた記者会見でのこと。 防衛省・自衛隊:防衛大臣臨時記者会見 平成28年8月4日(17時14分~17時42分) まず、各メディアに右翼視されている現状に対して、誤解をといていきたいと語っている質疑がある。 Q:大…

日本政府の核保有は重要なのかそうでないのか、はてなブックマークでの不思議なコメント

稲田朋美防衛大臣が、誤解を払拭したいと語った直後、持論の封印に失敗 - 法華狼の日記 最初に目についたのは、id:zions氏の上記エントリに対するコメントだった。 はてなブックマーク - はてなブックマーク - 稲田朋美防衛大臣が、誤解を払拭したいと語った…

『百合子さんの絵本〜陸軍武官・小野寺夫婦の戦争』

『ムーミン』の翻訳者で知られる小野寺百合子は、戦時中に陸軍武官だった夫とともにスウェーデンに駐在し、機密情報の暗号化を手助けしていた。 夫は元ポーランド軍人のスパイと懇意になり、独ソ戦やヤルタ会談を早期に察知して、勝ち目のない戦争を止めるた…

池田信夫氏と藤岡信勝氏への高木健一氏による名誉棄損訴訟が和解したとの報

藤岡信勝氏・池田信夫氏が「誤り」認め謝罪文 慰安婦訴訟の弁護士批判記事 | ハフポスト 東京地裁は2015年4月の判決で、高木氏がインドネシアを訪れ広告を出したとの記述について「真実との証明があったとはいえない」と認定する一方、「広告を掲載したかど…

redfox2667氏のネットデマ検証は少なくとも歴史認識については当てにならない

鳥越俊太郎氏の戦争体験は簡単には否定できない - 法華狼の日記 上記エントリで批判したTogetter*1をまとめたid:redfox2667氏だが、ツイッターのプロフィールには下記のように書かれている。 ブロガー。米国在住。ザ・コーヴ、シーシェパード、ダイレクトア…

鳥越俊太郎氏の戦争体験は簡単には否定できない

鳥越俊太郎氏の都知事選への出馬会見において、防空壕に退避した経験が語られていた。 【全文】鳥越俊太郎氏「76歳、残りの人生を東京都のために注ぎたい」都知事選出馬表明会見 - ログミー[o_O] これはあえて付け加えさせていただいております。私は昭和15…

「『帝国の慰安婦』著者批判に熱中する日本の正義オタク」という記事によると、「引用や取材の甘さを持ち出して糾弾するのは、あまりにオタクな対応」だという

元は『SAPIO』2016年7月号に掲載された岸建一氏の記事で、「ZAKZAK」や「NEWSポストセブン」に転載されている。 『帝国の慰安婦』著者批判に熱中する日本の正義オタク│NEWSポストセブン 「オタク」とは何か。それは、強力な「排除の論理」を持っていることだ…

少女が被害者であったという観念を『帝国の慰安婦』が批判するのはいいのだが、慰安婦募集広告の検証が見つからないので困っている

従軍慰安婦問題にかぎらず、少女だけに社会問題を表象させるべきではないという問題提起は、もちろん朴裕河氏よりも昔からあったし、私個人も同意できる。 また、頁数が多い分厚い書籍であることと、どうにも読み進めることが難しい内容なので、見落としてい…