法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ハクソー・リッジ』の舞台が宣伝から隠されている事情は理解できるが、それを生みだした状況そのものがつらい

もちろんダチョウ倶楽部を呼んで芸をさせるような広報が正しかったとは思わない。
しかし違う計画を副題に入れたような『ドリーム』*1と比べて、沖縄戦という要素を隠した判断は理解せざるをえない。映画界の問題というより、日本社会の問題として。
映画「ハクソー・リッジ」は沖縄の地名。でも宣伝文句に「沖縄」の言葉はゼロ…なぜ?

「沖縄の表記を前面に出していないのは、沖縄の方への配慮。舞台が沖縄であることにフォーカスして宣伝することで、観た後に複雑な思いを抱く人もいるのではないかと考えた」

実際、観た人の感想を見ると「一般住民の被害が描かれていないのが気になった」「アメリカ美談に感じた」などの声もあるのは事実だ。映画とはいえ「遺族や被害者が傷つく側面もあるかもしれない」という配慮という。

公開前日の6月23日が沖縄戦戦没者を悼む「慰霊の日」だったことにも留意したという。「タイミング的にも、変に煽るようなイメージにはしたくなかった。全国的にうたうのは避けた」。

事実、『不屈の男 アンブロークン』*2に対しておこなわれたような抗議が、『ハクソー・リッジ』に対してもあったらしい。

「いろいろなご意見があることは認識している。直接寄せられた中にも、沖縄をもっと前面に出すべきという声も、逆に、このような“反日的な”映画を公開するのかという声もあった」と複雑な思いを覗かせた。

真珠湾攻撃を題材にした映画『パールハーバー』は今でもひどい内容だったと思うが、それでも当時の日本では部分的な修正だけで全国上映され、好意的に受けいれられていた。作品そのものの評価とは独立して、幅広く公開できたこと自体は良かったと思える。