法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

小説

『闇の女王』半村良著

国家への不信感から新たな共同体が生まれつつある日本社会で、東京ジャックなるテロリスト集団による爆破事件が連続する。その裏側では旧家の御曹司による陰謀が進行していた。その旧友の動きを止めるために二人の男が奔走するが…… 1979年に出版されたSFファ…

百田尚樹氏はどのような「歴史の本」を読んで『永遠の0』を書いたのだろうか

朝日新聞による百田氏へのインタビュー記事を読むと、「日本通史」として出版した『日本国紀』に出典が明記されていないとの批判に対して、巻末の参考文献の有無に話をずらしていた。 「日本国紀」批判にどう答える 著者の百田尚樹氏に聞く:朝日新聞デジタ…

『走れメロス』の結末をふりかえりながら妥当なビジュアル化を考える

太宰治 走れメロス|青空文庫 佳き友は、気をきかせて教えてやった。 「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」 勇者は、ひどく赤面した。 つ…

『スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ』森川智喜著

襟音ママエという少女が、探偵事務所をいとなんでいた。捜査も推理もせず、事務や広報は助手の小人に丸投げ。 しかも解決は魔法の鏡にたよっていた。あらゆる問いに回答して、必要であれば映像を見せるアイテムで、少女は一足飛びに真相をいいあてていく。 …

「異世界転生・転移もの」を合わせた通称だけなら、「異世界転生」で充分ではないか?という提案

少し前、「小説家になろう」の代表のようにイメージされるジャンルカテゴライズについて、id:kazenotori氏が下記エントリを書かれていた*1。 「異世界転生・転移もの」の略称というか通称を考える - WINDBIRD 異世界転生とは「現実世界で死んで異世界に生ま…

『浮世絵師の遊戯 新説 東洲斎写楽』高井忍著

海外で絶賛されるほどの存在でありながら、いまだ正体がはっきりしないとされる浮世絵師、東洲斎写楽。 その正体をめぐる珍説奇説をさまざまな手法で物語化していく連作短編。商業作家なのに、なぜか文芸社から2016年に出版された。 浮世絵師の遊戯 新説 東…

『綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(3)』

雑誌『メフィスト』で連載していた対談企画の完結編。テーマに合わせた短編やショートショートを選んで丸ごと掲載することで、ミステリでは難しい真相に言及したレビューがおこなえる。 綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(3)作者: 綾辻行人,有栖川…

『綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(2)』

雑誌『メフィスト』で連載している対談企画をまとめたもの。テーマに合わせた短編やショートショートを選んで丸ごと掲載することで、ミステリでは難しい真相に言及したレビューがおこなえる。 綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(2)作者: 綾辻行人,…

『俺、ツインテールになります。13』水沢夢著

さまざまな性癖*1を力に変えて異世界の侵略者と戦うシリーズの、TV番組ならば1クールひとくぎりにあたる13巻目。 シリーズの序盤をTVアニメ化した制作会社が倒産したとの報を聞き*2、2017年8月に出版されたものを今さら読了したが*3、全キャラクターが活躍す…

ライトノベル表紙群や『ドラえもん』をめぐる、表現の部分否定と全否定

『ドラえもん』のトロフィーワイフ問題について - 法華狼の日記 chounamoul氏のツイートだが、娘の発言を紹介するかたちは気になるが*2、ひとつの感想として理解はできるものだ。 *2:これ自体がパターナリスティックなふるまいではないかという注意がほしい…

津原泰水氏のWEB小説語りと、孫向文氏のラノベ語り

window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "https://platform.twitter.com/widgets.js"; fjs.paren…

Gyo_ree氏の「推理小説の書き方」は、「推理小説には主人公が二人必要です」という主張で引っかかった

「いらすとや」の画像を素材にして漫画形式で自己流のミステリのつくりかたを説明しているのだが、2番目のツイートでいきなり首をかしげてしまった。 「ミステリで大事なのは人間ドラマでトリックは付属物」初心者でも書ける推理小説講座がミステリ界隈で炎…

あくまで「小説家になろう」で自作を発表しているアマチュアのひとりを、サイトの代表のようにあつかうのはやめよう

『二度目の人生を異世界で』の問題*1を受けて、南京事件否定論を主張するhimuwata氏のツイートが、Togetterにまとめられていた。 『二度目の人生を異世界で』騒動を受けなろう小説家、自著の中韓への出版を拒否。また、チャイナ服キャラは台湾人設定へ - Tog…

『二度目の人生を異世界で』で作者の差別ツイート等が問題視された件で、TVアニメから声優が降板したり、原作の出荷が停止したりしたとのこと

商業化およびTVアニメ化までされるWEB小説『二度目の人生を異世界で』の作者が、ありふれた保守的思想をたれながしていた件について - 法華狼の日記 上記エントリで言及したように批判がもりあがっていたわけだが、ついに公式的にも距離をおくような動きが出…

商業化およびTVアニメ化までされるWEB小説『二度目の人生を異世界で』の作者が、ありふれた保守的思想をたれながしていた件について

下記のTogetterで、小説自体が日中戦争での日本軍を肯定的に位置づけていると疑われていたり、中国や韓国への偏見に満ちた作者のツイートがまとめられたりしている。 TVアニメ化される『二度目の人生を異世界で』の作者がtwitterで中韓に対するヘイトスピー…

転生した異世界で現代文明の知識をつかって活躍するパターンで

「主人公がそのまま転生したのではなく、異世界の肉体に現世の記憶だけがあるという展開はどうだろう?」 「憑依パターンだな。多くはないが珍しくもないぞ」 「そしてその肉体は実は魔王であり、進んだ文明の知識を利用するために主人公の記憶を自分にコピ…

異世界シャワーをめぐる論争を見ていて、必然性や呼称の軽視にもやもやする

小説であれば、それを形成する文字ひとつひとつ、改行の位置から文字のひらきかたまで、必然性をもって配置されるべきだという理想論もあるはずだ。 ディテールをくわしく書きこんだり、それを作品世界の構築に奉仕させることだけが必然性ではない。本筋に関…

『メロディ・リリック・アイドル・マジック』石川博品著

音楽で幻覚を見る体質に苦み、学校で疎外されてきた少年ナズマは、逃げるように進学した高校の学生寮にアイドルが集っていることを知る。 アイドルに(相撲部屋のように)かわいがられ、以前と変わらず幻覚に苦しむナズマだったが、ひとりの少女の歌に初めて…

「会社のもっさりした女オタクが許せなかったのに」という匿名エントリの件

アノニマスダイアリーに投稿された下記エントリが、1000以上のブックマークを集めている。 会社のもっさりした女オタクが許せなかったのに 私が働いている会社には女性社員が100人ほどいるのだけど、廊下ですれ違うたびに「今日ももっさりしてるな……」と思う…

二重国籍報道をめぐる蓮舫氏に対して、ハリーポッターを使って批判した三浦瑠麗氏の意味不明さ

まず三浦氏*1は、蓮舫氏が差別的な状況におかれていることは想定しながら、「今回の機会を自分のためだけにスピン」と批判する。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElem…

文藝春秋が直木賞や芥川賞を上げるためにアニメを下げている謎

「人生に、文学を。」と称するプロジェクトで、とりあえずティーチインイベントをするらしいという情報しか書かれていないが*1、その説明文に首をかしげるところが多々ある。 人生に、文学を 文学を知らなければ、 目に見えるものしか見えないじゃないか。 …

『本能寺遊戯』高井忍著

扇ヶ谷姫之、朝比奈亜沙日、アナスタシア・ベズグラヤの3人は、歴史愛好家の女子高生。 歴史雑誌の新説公募に対して、3人は受けねらいの奇説をでっちあげ、賞金や副賞を獲得しようとたくらむ。 本能寺の変、ヤマトタケル、春日局、弓削道鏡、それぞれの謎の…

小説ノンブル21頁目の謎

はじまりはid:srpglove氏のツイート。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "https://platfor…

「石田可奈さんの魔法科のデザインに関するあの記事を読んで」を読んで

『魔法科高校の劣等生』でイラストレイターが批判されていることがよくわからない - 法華狼の日記 以前にも上記エントリのように疑問を感じたことがあったが、あいかわらず『魔法科高校の劣等生』のファンが挿絵を批判する基準がよくわからない。 石田可奈さ…

KADOKAWAとはてなが組んだ小説投稿サイト「カクヨム」で、第1回コンテストの読者選考を通過した一作品が悩ましい

ほとんど未読なので各作品の評価はできない。ただ、新しいサイトの機械的な選考なためか、傾向の見えにくさが興味深くはある。 第1回カクヨムWeb小説コンテスト 最終選考結果 - カクヨム しかし疑問をおぼえたのは、「現代アクション」ジャンルで通過した作…

「小説家になろう」で異世界転生が多いのは、単純に二次創作の人気ジャンルとして残っただけという可能性はないのかな

読者側や作者側の方針は指摘されているのだけれど、なぜか公開側の事情についての文章を見かけないので、念のため書いておく。 なぜなろう小説に異世界ファンタジーが多いのか - orangestarの雑記 かつての「小説家になろう」は二次創作作品も多かった。オリ…

『星籠の海』島田荘司著

愛媛県沖の小島にながれついた死体。その源流をめぐって、名探偵の御手洗潔と助手の石岡和己は広島にたどりつく。 古くから潮流による海運がいとなまれていた瀬戸内海で、水軍の超兵器の謎解きと、暗躍する新興宗教との戦いが並行する…… 2013年にハードカバ…

『絶望系』谷川流著

儀式的な肉体関係を求める姉妹。友人の部屋にとびこんできた四つの闖入者。闖入者は天使と悪魔と死神と幽霊だという。そして街で連続する猟奇殺人。 いくつもの異常が日常となり、しかし主人公は心を動かされることなく、淡々と観察しつづける。 比較的に新…

『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人』森川智喜著

人間をはじめとして、あらゆる存在に変身できる化け猫たち。その一匹が人間を新鮮な食肉へ加工する方法を思いつき、猫世界の成功者となることをもくろむ。 そして人間をさそいこんで食肉に加工する偽コテージを建て、四人の男女をまねいたところ、そのなかに…

『ハーモニー』『虐殺器官』を批判する匿名記事を読んでいて気づいたこと

下記の匿名で書かれた批判文が注目を集めていた。 王様は裸だ! と叫ぶ勇気 ~伊藤計劃『ハーモニー』の崩壊~ 今回は、自分の名前を出して発言するのはあまりにリスクが大きいと判断して、不本意ながらこういう形を取らせてもらった。実は匿名で書くことに…