法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

歴史

『天幕のジャードゥーガル』のアニメ化で原作者と制作者が密に連絡をとっているというエッセイ漫画

原作自体は以前に少し読んだことがあるだけだが好印象だった。制作会社サイエンスSARUも、湯浅政明監督のための会社と思いきや完全に別スタッフがつくっている近年の作品も意外なほど内容が充実しつづけ、日本の商業アニメのなかで特異な位置にあるので期待…

『キングダム 運命の炎』

大将軍の王騎に指導された信が、少数民族をひきいて混乱する地域の平定に成功したという。しかし隣国の趙が手薄な秦に侵攻をはじめた。秦王はかつて趙の人質だった時のことを王騎に語り、防衛を主導することを命じるが…… 佐藤信介監督による2023年の日本映画…

「占領期の性暴力」の論文では昭和恐慌で村役場が身売りを斡旋した根拠にならないという主張は、そう主張する側こそが根拠をきちんと確認していない

✖「町役場が『娘の身売り』を斡旋していた」〇かと思ったら実は✖「実際にあった身売りを防止するために、お金や生活に困ったら相談してくださいという案内を村が出した」〇「視察に来る内務省の役人に財政支援を求めるため、実際には身売りは無いのに案内を…

『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』

19世紀、ロシア貴族のオルキンがロシア皇帝にあたえられた艦船で北極探検へ行き、消息をたった。捜索は終わり、オルキンは北極探検ができなかったと思われたが、孫の少女サーシャは祖父の矜持を証明するため北極へ行こうとする。 有力者の説得はうまくいかず…

『侍タイムスリッパー』

江戸時代末期の京都、会津藩で家族も持てない下級武士のふたりが、長州藩士暗殺の大役をあたえられた。ひとりはあっさり気絶させられ、のこったひとりが若き長州藩士とむかいあう。 しかし戦いのさなかに雷が落ちた。そして会津藩士は江戸らしい路地で目ざめ…

今村翔吾の新聞小説『未だ本能寺にあり』で、織田信長が弥助を武士と認めたという描写があった

歴史資料に残る黒人侍という珍しさから外国のゲームの主人公に抜擢された弥助。 ゲーム『アサシン クリード シャドウズ』の販売後に判明した、神社内オブジェクト破壊や弥助の立ち位置などの意味について - 法華狼の日記 IGNのレビュー記事で指摘されたよう…

無視する以前に「日本人が、アフリカ人奴隷を使うという流行が始まった」とはトーマス・ロックリー氏は書いてないよ

トーマス・ロックリー氏が黒人侍の弥助を「旗手」と評したことを、民主主義をたいせつにするかぎり否定することはできない - 法華狼の日記 半世紀前から日本の書籍でも弥助を侍と位置づけているものは多数ある。 弥助が黒人の「侍」だったという話を今さら否…

トーマス・ロックリー氏が黒人侍の弥助を「旗手」と評したことを、民主主義をたいせつにするかぎり否定することはできない

約1年前に、仏国のゲームシリーズ新作『アサシンクリード シャドウズ』の主人公として歴史に残る黒人が選ばれたという情報が流され、多数の誤解や誤認とともに反発された。 そこで日本での黒人の活躍が誇張されている原因として逆算的に名指しされ、今も産経…

弥助が黒人の「侍」だったという話を今さら否定することはできない

東映が南アフリカ共和国と共同で弥助の物語を映画化する企画があると、米国の報道をつたえつつ関連情報をまとめるかたちでRiverが記事にしている。 黒人侍「弥助」東映が映画化決定 ─ 南アフリカと共同製作、世界市場ねらう | THE RIVER 日本の東映が、戦国…

ゲーム『アサシン クリード シャドウズ』の販売後に判明した、神社内オブジェクト破壊や弥助の立ち位置などの意味について

発売は3月20日 神社内オブジェクト破壊機能の意味 予想以上にメイン主人公は女忍者 人間は意外と自国の文化を知らない 発売は3月20日 今作の舞台となっているだけあって、日本では苦戦していた過去シリーズとくらべてヒットしているらしい。 Amazonの評価は…

オープンワールドゲームでは一般的な『アサシンクリード』の処理を、人種差別のような特異な処理と信じている能出新陸氏は大丈夫なのだろうか……

ゲーム『アサシンクリード シャドウズ』でダブル主人公の一方として史実に残る黒人の弥助がモデルとして選ばれ、その起用への反発から歴史的な位置づけを誤りとして、外国の歴史家個人に負わせようとする動きがある。 ゲーム『アサシンクリード シャドウズ』…

『キングダム2 遥かなる大地へ』

春秋戦国時代の中国大陸で、若き秦王が刺客におそわれたところを信が助けた。そして隣国の魏からせまりくる軍勢に対抗するため、信は一兵卒のような立場で最前線におもむく。見渡す限りの平原における戦争がはじまる…… 原泰久の少年漫画を実写化した2022年の…

北朝鮮の政治外交軍事を研究している専門家の宮本悟氏、大統領選挙の実現と大正デモクラシーを同等の民主化のように主張

共和国どころか議会主義的君主国ですらなかった大日本帝国と、大統領を直接選挙で選べるようにした大韓民国が同じように民主化されているとはいえまい。 韓国が民主化したのは1987年で、日本で最初の民主化は1910年代の大正デモクラシーとされているから約80…

歴代ジャンプラ史劇読切3選

WEB漫画サイトのジャンプ+が、十周年を記念した読切ポータルサイトを一週間ほど前に公開した。 読切ディスカバリー | 少年ジャンプ+10周年を記念した読み切りだけのポータルサイト そのなかに読切をみっつ選んで画像化するジェネレータもあった。 ジャンプ…

『サザエさん』においても、戦時中の記憶とむすびついたイモを忌避する描写があるらしい

サザエさんで夕食がイモの天ぷらと聞いて、波平とマスオがブチ切れる四コマがあるのだが、これも戦争経験を踏まえたもので、今の読者は2人がなんでキレてるのか分からんだろうと思う。つまり、南方に従軍していた波平は当然として、マスオさんも戦時中の食生…

『碧いホルスの瞳 男装の女王の物語』犬童千絵著

3500年前、古代エジプトで数少ない女性ファラオ、ハトシェプストの生涯と影響を描いた全9巻の歴史漫画。2014年から2021年までハルタで連載された。 碧いホルスの瞳 -男装の女王の物語- 1 (HARTA COMIX)作者:犬童 千絵KADOKAWAAmazon ハトシェプストは特異な…

もしも北村紗衣氏の『ダーティハリー』感想におけるアメリカンニューシネマの説明がまちがっていたとしても、あまり感想の良し悪しとは関係がないし、ウソをついたことを意味しない

未見の有名映画を北村氏*1が初鑑賞して気楽な感想から批評につながる要点をさぐっていくような企画で、『ダーティハリー』がとりあげられていた。 メチャクチャな犯人とダメダメな刑事のポンコツ頂上対決? 『ダーティハリー』を初めて見た – OHTABOOKSTAND …

ゲーム『アサシンクリード シャドウズ』が日本を舞台に外国出身の黒人男性を主人公にした差別性は、漫画『ゴールデンカムイ』が北海道を舞台に和人男性を主人公にしたくらいに差別的な可能性はあるが……

もともとゲーム発売前ということもあり騒動はくすぶりつつもおさまってきたと思っていたところに、産経新聞のインタビューに呉座勇一氏*1がこたえていた。 弥助問題「本人は芸人のような立場」「日本人の不満は当然」 歴史学者・呉座氏に聞く(上) - 産経ニ…

『アサシン クリード』

テンプル騎士団とアサシン教団は、数世紀にわたって秩序と自由をもとめて争っていた。現代のメキシコで育った幼少期に母を殺した父から逃がされ、やがて殺人犯となった男カラムは、米国で死刑執行されたはずが無機質な巨大建築物のなかでめざめる。それは現…

ゲーム『アサシンクリード シャドウズ』の販売停止をもとめる署名報道に対して、日本軍慰安所制度映画『鬼郷』の歪曲された監督発言を引くhagakuress氏

「日本史を侮辱」戦国時代舞台の仏ゲーム、発売中止署名に9万超 主人公「弥助」巡り論争 - 産経ニュース フランスのゲーム会社が発売を予定しているソフトがSNSなどで〝炎上〟し、発売中止を求めるオンライン署名の賛同者が10万人をうかがう勢いになっ…

「嘘捏造や印象操作はトコトンボコります」とプロフィールに書いているアカウントが、チャーチルの名言コピペをもちだしていて首をかしげた

「若いうちに左翼に傾倒しない者は情熱が足りない 大人になっても左翼に傾倒している者は知能が足りない」(ウィンストン・チャーチル) というのは実に的を射ていると思う。ハッキリ言って日本のサヨクは「遅れてきた反抗期」一旦「目覚めて」しまえば、サ…

『世界まる見え!テレビ特捜部』お笑い怪獣もやってくるミステリークイズ3時間SP

番組改変期恒例の、明石家さんまをゲストにまねいてのミステリークイズ。 「衛星カメラが捉えた地球の謎」は、衛星写真にうつった謎の存在についてさまざまな専門家が仮説をたてていいく、英国の謎解きドキュメンタリ。 アンデス山脈にあいた真円の穴は、隕…

『きんぎょ注意報!』が「ポテチ」という言葉を広めたとしても、それ以前のメディアにおける使用例は複数ある

はてな匿名エントリで、湖池屋が「ポテチ」の商標をもっているという話題の前提として、Wikipediaから根拠を引いていた。 「ポテチ」食ってて何となく気になったんだけど wikiにも載っている通り、「ポテチ」という言葉が世に広く知らしめられたのは1991年に…

『草原の実験』

羽毛がちらばる地面に机がポツンとひとつある。草むす荒野でトラックの荷台に男が寝転がっている。男は羊をつれて家に帰り、娘と生活する。 どこまでも地平線がつづく荒野のなかに、男と娘の一軒家がポツンと立っている。ふたりの生活に、さまざまな来訪者が…

『アンテベラム』

米国で南軍を支持する地域において、黒人たちが奴隷としてしいたげられ、女性たちが凌辱されていた。一方、それとは異なる時期の米国で、社会学者として活躍する黒人女性の周囲に不可思議な出来事が起きはじめる…… 『ゲット・アウト』と同じプロデューサーに…

スーツケースに車輪をつけるまで5000年かかったという話ではなく、昔から知られている車輪をスーツケースにつけるアイデアが遅かったのはなぜか?という問題

少し前、『なぜスーツケースにキャスターがつくまで5000年も要したのか?』という仮タイトルの書籍が、批判的な話題になっていた。 「スーツケースにキャスターを付けるという発明ができるまでなぜ5000年もかかったのか?」という本が出るが整備された舗…

ゲッベルスのものとされる「嘘も百回言えば本当になる」という言葉の使用例を、ゲッベルスがナチスに入党する以前の日本の書籍で見つけた

主にヨーゼフ・ゲッベルスの宣伝手法とされ、他にも批判や嫌悪の対象の言葉にされているが、そのように語るに落ちた発言は実際には確認されていない。 そうした怪しさは先行して複数の指摘があるが、特に下記エントリで詳細な検証がされていた。 I am an idi…

「月がきれいですね」という言葉で愛を告白する日本人は外国人より詩的、という逸話を国会図書館の全文検索で半世紀前までさかのぼる

夏目漱石が英語の「I love you」を「月がきれいですね」と翻訳したという逸話は、複数の研究者がさがしても原典が見つからない。 夏目漱石がI love youを「月がきれいですね」と訳した説はガセ?出典をめぐる検証が興味深い - Togetter 逸話が語られはじめた…

『王国の子』びっけ著

かつて大陸の西にある島で絶大な権力をふるい、次々に女性をとりかえては子を産ませた国王だが、いまは老いて衰えている。 そして順位が低いながら王位継承権をもつ王女は、王位継承者に必要とされる影武者を見つけなくてはならなくなった。 ふさわしい容貌…

卑怯な暗殺犯を「義士」とたたえてきた日本人と、そうした賞賛をつごうよく排外に利用してきた日本人

元海上保安官の一色正春氏が下記のようにツイートし、3万以上のいいねを集め、はてなブックマークでは批判されている。 我が国には卑怯な暗殺犯を「義士」などとたたえる風習はない気色の悪い思想を持ち込まないでいただきたい— 一色正春 (@nipponichi8) 202…