法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

近現代

日本の漫画やアニメが社会学者や教育学者によって不当に弾圧されてきた歴史はどこにあるのだろうか?

狸穴猫氏が3月11日に書いた下記noteが多数のはてなブックマークを集めていた*1。 世界中で愛される、日本の「マンガ・アニメ」は、社会学者や教育学者によって不当に弾圧され続けてきたことを掘り起こしておく|狸穴猫(まみあなねこ) 鳥山明急逝を受けて、…

『新少林寺/SHAOLIN』

清朝が倒れ、内戦がつづく20世紀初頭の中国。敗北して少林寺へ逃げこんだ敵将を追って、侯杰という将軍が近代的な軍隊をひきつれて押しよせてきた。そして侯杰は部下とともに少林寺の僧侶をしりぞけ、敵将を撃ち殺して去る。侯杰は組織内で下剋上も考え、腹…

『世界まる見え!テレビ特捜部』ピンチを乗り越えて3HSP

2024年初の放送。他番組のSP化にあわせて内容をよせあつめたような作りで、良くも悪くも特番感はない。 ただ紹介されるドキュメンタリの質は全体的に良かった。 「カメラがとらえた信じられない瞬間」は、監視カメラが個人店などにも設置されることが普通に…

なるほど『オバケのQ太郎』は日本兵のPTSDと米国との和解を描いていた?!

臨床検査技師でもあったSF作家の林譲治氏を発端として、ノンフィクション作家の松浦晋也氏らが引用リツイートしていった流れが興味深かった。 まだ現役だった時に、さる病院のベテラン看護婦さんから「うちの病院には、中国に従軍して精神を病んだお爺さんが…

『窓ぎわのトットちゃん』

日本が戦争をつづけている時代にトモエ学園という風変わりな学校があった。電車の車両をならべて校舎として、さまざまな困難をもつ子供たちを尊重していた。 そこに奔放すぎて普通の小学校にかよえなくなった少女「トットちゃん」が入ってきた。トットちゃん…

『ラーゲリ〈収容所から来た遺書〉』河井克夫著

辺見じゅんが1992年に書いたシベリア抑留のノンフィクションを、河井克夫が漫画化。2021年から文春オンラインで連載され、2022年に単行本としてまとめられた。 ラーゲリ〈収容所から来た遺書〉 (文春e-book)作者:辺見じゅん ・原作文藝春秋Amazon 時期的に映…

精神病テーマの映像作品に関東大震災の朝鮮人虐殺を組みこんだところ、東京都から奇妙な理屈で却下された件についての反応をふりかえる

https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/iiyamayuki-tokyo-metropolitan-human-rights-plaza-news-2022-10 記者会見では、①公権力による美術作品への介入について(飯山)、②ヘイトスピーチ規制について(FUNI)、③東京都の歴史認識について(外村)、それ…

『日本敗れず』

1945年5月23日、日本へはげしい空襲がおこなわれ、人々は焼け出されていった。さらに8月6日と8月9日に広島と長崎へ原爆が投下され、日本の中枢は降伏しようと動き出した。しかし戦争継続をもとめる日本軍の一部隊が、降伏宣言の録音を奪取しようと決起する………

『特集ドラマ「軍港の子~よこすかクリーニング1946~」』

父は戦地から帰らず、母は空襲でうしなった小川今日一は、終戦直後の横須賀で親戚の家に身をよせていた。しかし親戚よりさらに貧しい食事しかあたえられず、いつもクリーニングの仕事を強要されていた。 ある日、運んでいた衣服と乗せていた自転車を戦争孤児…

『妻と飛んだ特攻兵』

1945年、戦火がはげしくなった本土からひとりの女性が満洲へわたった。そこはまだ五族協和の建前がかかげられている豊かな植民地で、陸軍の特攻隊が訓練を受けていた。その指導をおこなう少尉こそ、女性の夫。 夫婦は若い飛行士や整備士をいたわり、つかのま…

『オッペンハイマー』との悪趣味クロスオーバー「#Barbenheimer」へ『バービー』公式広報がのっかったとして、実際の作品を見ずに批判していいのだろうか?

もちろん批判していい。 pic.twitter.com/2SYdD6Bxva— 映画『バービー』公式 (@BarbieMovie_jp) 2023年7月31日 シリアスな核兵器開発者の史実映画『オッペンハイマー』と、ポップでフィクション批評的なメタ映画『バービー』という、公開時期の近いヒット2作…

日本軍による性暴力の被害者は「身体女性」だけではない

ツイッターでトランス差別を批判している哲学者の能川元一氏に対して、トランス女性を男性視しつつ日本軍慰安所制度の被害者にいたかどうか問いつめるツイートがあった。 別に「男が女になった」わけじゃないから。女性が女性であることを認めろ、と言われて…

NHKが政府与党の圧力に屈して軍艦島ドキュメンタリ『緑なき島』を封印したらしいという報道

時事通信がつたえていた。放送年などから考えて、以前から圧力を受けつづけてきた短編ドキュメンタリ『緑なき島』のことと思われる。 NHK、軍艦島映像「今後使わぬ」 自民会合で、元島民疑義:時事ドットコム 自民党は19日、外交部会と「日本の名誉と信…

科研費裁判で杉田水脈氏が一部でも逆転敗訴したのは良かったが、「捏造」という評価をめぐる裁判所の判断はよくわからない

杉田水脈氏に33万円賠償命令 控訴審判決、教授らの訴え一部認める | 毎日新聞 清水裁判長は、経理に関する発言は科研費が不適切に使用されたと受け取られる内容で、真実とも認められないと判断。「ずさん」と指摘された牟田氏の社会的評価を低下させたと認定…

キャンセルカルチャーを警戒すると自称する某大学教授、自国で表現が弾圧されていることより外国の団体のスキャンダルが気になる様子

京都女子大教授の江口聡氏が、暇空茜こと暇な空白氏にブロックされているという、自分自身でどうでもいいというツイートをしていた。 あ、あの先生は暇な先生についていろいろ書いてたけど消して(訴訟回避?)、私をその先生のアノンだかなんだかに見立てて…

「日本軍は当時の南京市民に歓迎された」という写真で女性が和服を着ている謎を、信州戦争資料センター氏が解明していた

発端は「私は嘘を申しません」とだけプロフィール欄に書いている「Alsnova@alsnova」氏の下記ツイート。 日本軍は当時の南京市民に歓迎されたみたいですね。写真が多数残ってますよ。そもそも軍事目的として大量虐殺なんかする必要性がありませんね。 pic.tw…

「共産党アレルギー」の由来を質問するツイートに対して、シベリア抑留に対する社会党議員の答弁をリプライする謎

自分と同世代のオタクでも共産党アレルギーって凄いあるなって思うし、でも自分の人生の中で共産党に何かされたっていう覚えが全く無いから、どういうルートでそうなってくんだろうなって。— Lhasa (@AtTheBlackLodge) 2023年1月14日 自分と同世代のオタクで…

「従軍慰安婦」という言葉は、千田夏光氏の造語ではないことはもちろん、ずっと以前から普及した言葉だった可能性があるくらい古い使用例を、国会図書館の全文検索で発見した

まずは半官半民組織のアジア女性基金から「従軍慰安婦」という言葉の説明を引こう。 慰安婦とは 慰安婦問題とアジア女性基金 いわゆる「従軍慰安婦」とは、かっての戦争の時代に、一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たち…

「従軍慰安婦論争」をあつかったドキュメンタリ映画『主戦場』が高裁でも勝訴し、映像配信も開始される予定とのこと

日本軍慰安所制度をめぐる裁判では珍しく、ひとまず良かったと思える判決が出された。 www.asahi.com 公式ツイッターでも勝訴とあわせて配信が告知されていた。 映画『#主戦場』ご報告今年1月の一審につづき、控訴審でも原告らの訴えをすベて棄却する判決が…

学生運動はガイナックスに似ている

……と比喩すれば、一部のアニメ愛好家には理解しやすいかもしれない。全体像の理解しにくさが。 庵野秀明監督が実写版『キューティーハニー』を撮っていたころ、山賀博之監督は『まほろまてぃっく』を作っていた - 法華狼の日記 一時代を築いたスタッフが抜け…

第二次世界大戦後のシベリア抑留を描いた実写映画『ラーゲリより愛を込めて』が12月9日に公開予定とのこと

原作は角川春樹の姉でもある作家の辺見じゅんのノンフィクションで、主演は二宮和也とか。監督の瀬々敬久は『菊とギロチン』は印象に残っている。 lageri-movie.jp 予告映像を見るかぎりは、爆撃シーンの描写などはそつがないし、収容所もおそらくVFXとセッ…

『NHKスペシャル』ビルマ 絶望の戦場

主要な戦力を失い、独立させた現地にも離反された日本軍の、無謀で無意味な末路を描く。初回は終戦記念日に放映され、8月17日早朝に再放送された。 www.nhk.jp 無謀なインパール作戦よりも多くの死者を出したこと、それが沖縄戦と同じように本国の降伏後まで…

『セイコグラム 転生したら戦時中の女学生だった件』

現代の若者が戦時中の著名人に転生し、インスタグラムに投稿するという体裁のNHK企画。 www.nhk.jp 昨年末に放映された古川ロッパ転生の第一弾につづいて、作家田辺聖子*1に転生した形式の30分ドラマとして、終戦記念日に23時から放映された。 下記エントリ…

『ロッパグラム 転生したら戦時中の喜劇王だった件』

現代の若者が戦時中の著名人に転生し、インスタグラムに投稿するという体裁のNHK企画。 www.nhk.jp そのドラマ版の第一弾は、喜劇王の古川ロッパに転生した形式の30分ドラマとして昨年末に放映された。今年8月15日には第二弾『セイコグラム』が放映予定。 ww…

『特集ドラマ「アイドル」』

日中戦争の直前、「スター」になるために岩手から上京してきた少女がいた。新宿のモダンな劇場「ムーランルージュ」でオーディションを受け、肌をさらす覚悟を認められる。やがて病気で舞台を降りたメインの代役として、少女は「スター」ではなく、ファンひ…

『アルキメデスの大戦』

大日本帝国の誇る巨大戦艦が、米軍の航空機攻撃になすすべもなく撃沈する。その数年前、日本海軍では軍艦の更新で空母派と巨大戦艦派が争っていた。戦艦は航空機に勝てないと考えて空母派となった山本五十六は、巨大戦艦派が出した建造費の見積もりが不自然…

日系人収容所の歴史小説が米国の学校から排除されたことは問題だが、それをつたえるツイートへのリプライにも頭をかかえる

NPOサルタック*1の畠山勝太氏が、米国の学校で「焚書」がおこなわれている問題のひとつとして、日系人収容所の歴史も隠されようとしているとツイートしていた。 アメリカの学校で焚書の嵐が吹き荒れているけど、第二次大戦中の日系アメリカ人の強制収用を描…

南京事件について「そもそも東中野氏だって専門家なんです」と反駁するとか、藤栄道彦氏は本当にそういうとこだぞ

漫画家の藤栄道彦氏が、またツイッターで商業作家らしからぬ「引用」の基準を見せていた - 法華狼の日記 「ナチスは良いこともした」という逆張り その根底にある二つの欲求:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASQ5S4HFPQ5SUPQJ001.html …い…

漫画家の藤栄道彦氏が、またツイッターで商業作家らしからぬ「引用」の基準を見せていた

数年前、藤栄氏のツイートや作品が話題になったことを受けて、該当するコマを引用してエントリを書いたことがある。 接客を題材にした漫画『コンシェルジュ』の作者による、誤解しようのないオモテナシ - 法華狼の日記 しばしば作者の政治性を稚拙に反映させ…

『NHKスペシャル』東京ブラックホールⅢ 1989-1990 ~魅惑と罪のバブルの宮殿~

バブル末期の狂騒に満ちた東京。世界中の富が集められ抜きとられる直前の、幸福に満ちた都市をブラックホールとして描きだす。 「東京ブラックホールIII 1989-1990 魅惑と罪のバブルの宮殿」 - NHKスペシャル - NHK 山田孝之演じる若者がタイムスリップする…