法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

近現代

軍艦島が「地獄」と呼ばれたのはいつから?

もちろん日本人証言者でも、少なからず炭鉱夫の苦難を語っていたことが記録されている。 note.com 一方で、世界遺産を広報する立場からは、登録時に条件づけられた強制連行の明記に抵抗して、くりかえし支配者側からの美化が表明されている。 ドキュメンタリ…

ずいぶんひさしぶりに揶揄表現としての「おタッキー」を見かけた

公文書にもとづくメディア研究で知られる早稲田名誉教授の有馬哲夫氏は、近年になって極端に保守的な歴史観をあらわにしている。 NHK解体新書 朝日より酷いメディアとの「我が闘争」 (WAC BUNKO 311)作者:有馬哲夫ワックAmazon そして同じく真面目な経済学者…

ソン・ガンホで見る韓国史

togetter.com 『弁護人』 - 法華狼の日記 こうなるとソンガンホひとりで韓国近現代の激動を描けそうな気がしてきた。 やってみた。 1905年 ソン・ガンホ、植民地朝鮮で支配者と野球対決*1 1923年 ソン・ガンホ、日本統治下の警官として独立運動に潜入*2 1950…

第二次安倍政権で学問的知見より閣議決定を優先して教科書に記述できるようにされた問題が、ついに動き出してしまった

維新の会と自民党が国会で予定調和のような質疑をおこない、従軍慰安婦と強制連行という歴史用語を無理やり否定したことがあった。 hokke-ookami.hatenablog.com どうやらその閣議決定を根拠として文科省が説明会を開いて、教科書の記述まで書きかえられてし…

日本の敗北による植民地解放に別の文脈が生まれたように、国境を超えて少女が仲良くする光景にも別の文脈が生まれうる

第二次世界大戦のビルマ戦線について、日本側証言などを新たに収集した同人誌『ビルマ方面海軍部隊、死闘と生還の記録』。 booth.pm 書店にも置かれてツイッターで広く紹介され、その十数日後に注目が集まり、表紙に対する疑問が多数ぶつけられていた。 [B! …

カンボジア内戦でポルポト政権の虐殺が軽視された経緯は、ロンノル政権の虐殺を重視した取材回想を読むと少し理解できる

アフガニスタンの混乱を受けてか、かつて朝日新聞に掲載されたカンボジア紛争の記事が再注目されているようだ。 hokke-ookami.hatenablog.com くわしくは上記エントリに書いたが、「アジア的な優しさ」は首都進攻が穏健に見えたことを評しており、それも対立…

『ハクソー・リッジ』

第一次大戦帰りの父親にあおられて、幼いデズモンドは弟へひどい暴力をふるってしまう。成長したデズモンドは暴力を嫌うようになったが、対日戦争のため軍隊に志願した。 しかしデズモンドは軍隊でも暴力を嫌い、けして銃にさわろうとしない。それでも組織や…

『 終戦ドラマ「しかたなかったと言うてはいかんのです」』

1945年5月の福岡。教授に呼ばれて捕虜の手術に参加した助教授は、人体実験をしていることに気づく。 敗戦とともに裁判がはじまり、拘置所の教授は軍に命令されたが自分に全責任があると遺書をのこして自殺。 助教授は出廷できるなかでの最高責任者として、死…

『NHKスペシャル』東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年

オリンピック直前の混沌とした東京。記録映像と再現映像を組みあわせて、田舎の若き労働力を飲みこむブラックホールとして描きだす。 東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年|NHKスペシャル 1964年は、東京オリンピックが開催され、日本に“夢と希望があふ…

歴史認識論争についての記述を読むかぎり、DavitRice氏の記憶力や要約力は信用しづらいし、誠実な対応をする信頼ももちづらい

hokke-ookami.hatenablog.com 上記エントリと関連あるようなないような話。 日刊ゲンダイなどに寄稿しているid:DavitRice氏の下記エントリで私が言及されていた。 davitrice.hatenadiary.jp 応答を求める意見が第三者からあったので*1、「北村紗衣」氏の誤記…

半世紀前のNHKによる軍艦島ドキュメンタリ『緑なき島』について、あらゆる意味で問題はないと国会でNHK側が答弁していた

1955年にNHKの制作した短編ドキュメンタリ『緑なき島』。 当初は軍艦島関係者からも好意的に紹介されていたが、朝鮮人徴用工の被害を否認したがる人々によって、2019年ごろから攻撃を受けるようになった。 hokke-ookami.hatenablog.com hokke-ookami.hatenab…

良いこともしたナチス党員はいると思うのだが

ナチス研究者の田野大輔氏による警鐘記事が話題になっていた。 gendai.ismedia.jp 善行をおこなったナチス党員だが、雇ったユダヤ人が強制収容所に送られることをふせいだオスカー・シンドラーや、南京で日本軍の暴虐から安全区をまもったジョン・ラーベなど…

『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』デイヴィッド・グラン著

北米の先住民は多くの部族が故郷を追われつづけた。しかしオセージ族は先住民の血をひく弁護士の助けで、居留地の契約書に地下資源の権利をすべりこませる。そして発見された石油の権利で裕福な生活をおくることができた。 しかし1920年代になって、オセージ…

国家が加害者としての態度を問われた時、被害者へ配慮しすぎたなどと踏みつける必要がどこにあるのか

米中が日本に「踏み絵」をせまるという表現を、どの報道もタイトルで使いがち - 法華狼の日記 想像するに、「踏み絵」は歴史的に宗教弾圧のため権力者がつかったことから、選択を強要される理不尽さそのものをにおわす表現として好まれるのではないだろうか…

「従軍慰安婦」という表現をつかわないのはいいのだが、閣議決定の根拠には大いに問題あり

「従軍慰安婦」や「強制連行」といった歴史用語について質問した維新の会の馬場伸幸氏に対して、「慰安婦」という用語が適切と答弁したという。 「従軍慰安婦」表現は不適当 「強制連行」も 政府答弁書 教科書は使用 - 産経ニュース 答弁書では、平成5年の…

亀田俊和氏の「非モテ」の歴史と「反フェミ」の現在

日本中世史家の亀田俊和氏と、「非モテ」という概念にまつわる歴史 - 法華狼の日記 「非モテ」当事者として活動している集団「革命的非モテ同盟」は、2009年の取材時点で状態のみを指す概念ではないと表明していた。 上記エントリに対するはてなブックマーク…

『海底軍艦』

敗戦後の復興をはたしつつある日本で、謎の拉致事件が起き、海辺に銀色の怪しい人影が出没する。それは一万二千年前に滅んだはずのムー帝国の尖兵だった。 拉致事件に出くわしたカメラマンが、美女を見かけて被写体にするため追いかけると、旧日本軍の縁につ…

そういえば、慰安婦が思いどおりに辞められるラムザイヤー理論が正しいなら、ひとつ日本政府に不都合な話へつながるよね

日本軍慰安婦の総数について明確な資料や、信頼できる総数の証言はない。 そこでほぼ明確な人数がわかっている日本軍の総数に、兵士にあてがわれた慰安婦の比率でわって、そこに交代率をかけることで、のべ人数が推計されている。 慰安所と慰安婦の数 慰安婦…

比較政治の専門家なら「狭義の強制連行」という概念を1991年以前に反映できないことは指摘できるはずではないか

先日に、金学順証言を植村隆氏が報じた「当時の段階」において、はたして「挺身隊」と「慰安婦」が日本で区別できたのだろうかという疑問を書いた。 hokke-ookami.hatenablog.com 同じように、「連行」という表現が当時において必ず「強制連行」と読解され、…

ラムザイヤー論文批判記事にからんで、慰安婦の写真が誤用されているリプライが衝撃的だった

経済学者ラムザイヤー氏の慰安婦論文が批判されていることは先日も言及したが*1、ザ・ニューヨーカー誌に日本語の批判記事が掲載された。 www.newyorker.com ジニー・ソク・ガーセン氏の批判は端的にまとまりつつ、ラムザイヤー氏の同僚としての心象も興味深…

「挺身隊」という言葉が1944年の「女子勤労挺身隊」の意味しかないと、はたして1991年の日本で断言できただろうか?

植村隆氏の名誉棄損裁判で対西岡力敗訴確定*1を受けて、朝鮮半島地域研究者の木村幹氏がツイートしていた。 「当時は慰安婦被害が詳しく知られていなかったため、“挺身隊”と“慰安婦”が混用」というのも違うと思う。当時の段階でもこの程度は十分調べられた筈…

東京大空襲の証言が封印されている報道を読んで、きちんと展示される韓国の博物館などを思う

くりかえされた空襲のなかでも、特に重視されている3月10日にあわせて東京新聞が報じていた。 www.tokyo-np.co.jp 証言ビデオは1996~99年度、当時都が建設を目指していた祈念館での公開を目的に収録した。330人分が集まったが、日本の加害について…

ラムザイヤー論文の要約によると、高額な前払金は慰安婦側が常に優位な交渉をした証拠という主張らしくて、さすがに目を疑っている

「余命三年」や「桜井誠」を論拠として引用した問題*1で話題沸騰なJ・マーク・ラムザイヤー氏の慰安婦論文*2について、弁護士の堀新氏が感想記事をあげていた。 note.com 堀氏の重要な指摘が、契約において正確な説明がされていて慰安婦側が理解していたと…

『世界まる見え!テレビ特捜部』偶然か?奇跡か?神様のイタズラ

番組中でも言及があったが、今回はサブタイトルに反して人間のおこないが印象に残るエピソードばかりだった。 最初に紹介されるエピソードからして、野生動物や家畜とはなればなれになるしかなかった人々の逸話。どれも人間が介入している出来事だ。 シリア…

首相をやめた安倍晋三氏が、産業遺産情報センターの用意したブーメランを脳天に刺していた件

「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に選ばれた時、強制労働などの問題も紹介する条件がつけられていた。 しかし日本側はきちんと約束を守るどころか、むしろ歴史的な問題を否認する方向へ力を入れている。 www.kinyobi.co.jp 同時代の日本国内でも問題に…

遊女リンの描写を増やした『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、遊郭の制度的な監視をアニメオリジナルで強調している

雑誌で読んだ対談だが、公式サイトで全文公開されているので、その紹介をかねて該当箇所を引く。 ikutsumono-katasumini.jp 2018年に亡くなった高畑勲監督は、2016年に公開されたアニメ映画『この世界の片隅に』をくりかえし見て、改善案なども語っていたと…

「近代」が「世界史」と関係あることすら理解できない匿名記事を読んで、からまれている社会学者の田野大輔氏の大変さを思う

hokke-ookami.hatenablog.com 上記エントリに対して、批判したいらしい匿名記事を読んでいた。 anond.hatelabo.jp 引用文も読めていないことが明らかに思えたので、とりあえず無視しておいた。 しかし、はてなブックマークが意外と集まりつつきちんと批判さ…

「世界史の稲田先生」は自身の授業では、きちんとナチス体制の「相互に矛盾するご都合主義」などを教えていたとのこと

「世界史の稲田先生」は、ナチス政策を肯定する高校生の小論文を「思想はともかく、事実は問題なく、高校生のレベルではない」と評した人物として登場する。 hokke-ookami.hatenablog.com 私にしても「少し情けないのでは」という感想を上記エントリで書いた…

ナチスの政策を肯定した高校生の小論文は、「虐殺の有用性」を主張する内容だったという

予備校講師の田島圭祐氏による下記ツイートが注目を集めていた。 思い出した。かつて一番添削に困った小論文。彼女はヒトラーのファンでナチスの政策を徹底的に肯定した内容。文体は完璧で中身は私ではわからない専門的な内容だったので、世界史の稲田先生に…

NHKの軍艦島ドキュメンタリ『緑なき島』が産業遺産情報センターから敵視されている問題について

NHKが1955年に放映した短編ドキュメンタリ『緑なき島』*1が、産業遺産情報センター所長の加藤康子氏や、自民党衆院議員の高木啓氏に非難されている*2。 60年も前の、ほとんど誰も見ていない番組にケチをつける粘着ぶり! これが歴史修正主義者の「一点突破全…