法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

保守系団体「日本世論の会」のLGBTに対する態度をメモ

林田有香氏のnoteで、2018年に書かれた日本共産党批判が注目を集めている。時期的に見て、『新潮45』での杉田水脈氏の主張がはげしく批判された*1ことへの反駁だろう。
LGBT問題 ホモフォビア(同性愛憎悪)政党だった日本共産党の不都合な真実|林田有香|note

 最近こそ、LGBT問題に取り組む姿勢を見せる日本共産党。しかし、日本最大のホモフォビア(同性愛憎悪)政党だった過去をいまだに総括していません。
 他党の議員を批判するより、まずは自党の歴史を顧みるべきでしょう。日本共産党の欺瞞に満ちた姿勢には憤りを感じます。

指摘されている問題は、1976年に共産党議員が犯罪を起こした時、きちんと機関紙で内部批判したまでは良いのだが、そこで同性愛者という個性を原因のように記述したというもの。たしかに批判されてしかるべき内容である。
近年の例でいうと、2015年に自民党の武藤貴也議員がスキャンダルを報じられた時、しばしば未成年買春よりも同性愛が注目された問題を思い出させる。


なお、はてなブックマーク*2でも指摘されているように、2020年に入って党大会などで公式に誤りを認めて、謝罪した。

もちろん一度の謝罪で終わるわけではなく、これからの行動も反省にふくまれる。これからも過去の過ちを見つめつづけてくれることを期待したい。


さて、林田氏は「日本世論の会」という団体の雑誌に寄稿しているという。調べてみると相当な保守派団体で、なぜ林田氏が寄稿しているのかよくわからなくなった。
何しろ団体本部のブログで、Change.org同性婚反対の署名をはじめたという報告や、社会の片隅でひっそり生きることをLGBTに望むという主張が掲載されているくらいだ。
同性婚に反対する側のネット署名 サイト | 日本世論の会 本部

同性婚推進派のネット署名サイトがありますが、やっと反対する側のネット署名
サイトを立ち上がりました。

LGBT(性的少数者)への配慮ってそんなに大切? | 日本世論の会 本部

レズ、ホモ、性同一性障害など、これらLGBTは昔からいた。彼らはこれまで社会の片隅でひっそりと生きてきた。それでいいのではないか。もちろん彼らを差別したり排除したりすべきではないが、特別に社会で認知する必要などあるのだろうか。

また、日本世論の会グループメールでは、「反日メディアの横暴を許すな!! 杉田水脈議員への言論封殺は民主主義を破壊する」なる主張が広められていたようだ。
みんなの経済新聞:LGBT杉田水脈を守れ! - livedoor Blog(ブログ)

月刊誌新潮45に掲載された自民党杉田水脈衆議院議員の寄稿文に、朝日、NHKなどの反日メディアが発狂しています。

日本共産党日本世論の会の、はたしてどちらが欺瞞に満ちた姿勢と呼ぶにふさわしいだろうか。

『相棒 Season18』第12話 青木年男の受難

いきなり休んだ青木の電話により、借りていたという本が杉下に返された。しかしその本を杉下が貸したことはなく、青木は誰かに拉致されたと推理される。
青木がハッキングしているのは警察の内部資料。その二つの事件で犯人は早々に罪を認めて服役しつつ冤罪の疑いがあるが、調べる関連性がはっきりしない……


児玉頼子脚本。青木の拉致は早々に推理されて、犯人が青木に何をさせたいのか、それで逆算される犯人像は何かが謎解きの焦点となる。
物語の構造はメタミステリとして古典的といっていいが*1、それを一種のミッシングリンク物として展開したのが面白い。関連性はあからさまなのだが、犯人の意図がわからなければ気づけない。どちらか一方がミスディレクションかと思い違いさせられる。
立場のわりに目立っているゲストキャラクターが真犯人という真相も、表面的に装った性格の中身が凶悪というパターンではなく、見たままの性格ゆえの犯行だったのが一周まわって意外だった。


ただ、真犯人に対して杉下がはげしく指弾するのだが、たしかに一般人よりも重い責任があるとはいえ、その批判のすべてが杉下にもしばしば当てはまることへの留意が見えないことは気になった。
インターネットで感想を見ても、少なからず指摘されている。せっかくなら、今回あまり活躍しなかった冠城にチクリと指摘させるくらいの出番を与えても良かったのでは。

*1:『ブラウン神父』シリーズが代表。

麻生太郎氏、同レベルの事実誤認をくりかえし公言することで、成人式での自説を自ら反証する

麻生太郎氏「日本は2千年、一つの民族」政府方針と矛盾:朝日新聞デジタル

13日の国政報告会の中で、昨年のラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表チームの活躍に触れ、「いろんな国が交じって結果的にワンチームで日本がまとまった」などと指摘。その上で「2千年の長きにわたって一つの場所で、一つの言葉で、一つの民族、一つの天皇という王朝が続いている国はここしかない。よい国だ」と述べた。

「結果的に」という表現を入れているとはいえ、国がまじりながら「ワンチーム」でまとまったことを、たぶん肯定はしているのだろう。それなのに、つづけて「一つの民族」を賞賛する意図がわからない。「ワンチーム」を賞賛するなら「八紘一宇」をもちだしたほうが、まだしも文脈の一貫性はある。もちろん一貫性があればいいというものではないが……
2000年という期間もよくわからない。皇紀として伝説から考察された天皇の歴史は2700年近くあるし、逆に史実では皇統はいったん断絶していると考えられているし。なぜ宗教と史実の中間的な数字をあげているのだろうか?
もちろん、王朝という階級制度がつづいていることを、仮にも民主国家の選挙で政治家になった人物がなぜ肯定するのか?という原理的な疑問もある。


朝日記事で指摘されているように、麻生氏の主張は今回が初めてではない。

総務相時代の2005年にも「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」と発言し、北海道ウタリ協会(当時)から抗議を受けた。

それどころか、他国の人種への蔑視につながる中曾根康弘発言以降、くりかえし批判されながら保守政治家に根づいた観念である。
そしてこの朝日記事には、前日の成人式における主張についても言及している。細かい説明はないが、きっと皮肉の意図だろう。

「皆さんがた、もし今後、万引きでパクられたら名前が出る。少年院じゃ済まねえぞ。間違いなく。姓名がきちっと出て『20歳』と書かれる。それだけはぜひ頭に入れて、自分の行動にそれだけ責任が伴うということを、嫌でも世間から知らしめられることになる。それが二十歳(はたち)だ」と発言している。

姓名がきちっと報道で出て、一般的な成人よりも重い責任があるはずの立場で、同じような誤認をくりかえす麻生氏……

『スター☆トゥインクルプリキュア』第47話 フワを救え!消えゆく宇宙と大いなる闇!

双方の戦線が崩壊し、ノットレイダーの残党は星空連合に救助された。一方、正体をあらわした蛇使い座のプリンセスは、他のプリンセス12人を拘束する……


今回も村山功シリーズ構成の脚本だが、最終決戦をもりあげる苦しさを感じた。
これまで各話で物語をまとめつつ、前回にダークネスとの真意がノットレイダー各員のドラマと分断されたため*1、新たな対立構図を示すために怒涛の設定開示がされた。
その設定は前回の予想とは少し違っていたし、興味深い説明や描写はそれなりにあった。艦隊内で治療されるノットレイダー各員の素顔が多様なことと、彼らが戦いに向かう決意で無個性な戦闘員のマスクをつける逆説。シリーズのタイトルを「pretty」の「cure」という初代の意味ではなく「pre」の「cure」とこじつけたのも面白い。
特に良かったのが、地球から見える形でしかない十二星座がプリンセスになっている理由。十二星座のイマジネーションが先に存在して、それゆえ地球もふくめた各星が文化として持っているという説明には感心させられた。
さらに、妖精フワが「器」として十二星座のプリンセスに道具あつかいされる結末も印象的だ。『フレッシュプリキュア!』の妖精シフォンと同じくらい唐突だが、比べて自己犠牲のドラマになっているだけでなく、味方の神格すら主人公たちとは価値観が違うという絶望感があった。


しかし、説明内容に面白さがあるといっても、主人公たちが変身して現場に到達した後半で、ひたすら設定説明を聞きつづけるのは、さすがに映像作品として問題がある。マニア向けアニメの長い設定説明なら好きなことも多いが、それらはたいてい長々とした台詞を語るキャラクターがそれを許す状況に置かれた時に描写されるものだ。
せめて、プリキュアとノットレイダーが現場に向かうのと同時並行で、蛇使い座のプリンセスが現場の光景を宇宙に投影して演説し、それを聞いたプリキュア側の言葉を十二星座のプリンセスがテレパシーでつなぐ……みたいな描写にすれば、棒立ちで説明を聞きつづける不自然さは軽減されたと思うのだが。

法務省の広報マンガ『桃太郎と学ぶ民法(債権法)改正後のルール』が色々な意味で面白い

yasei_desk氏のツイートで知ったが、たしかに広報や啓発を目的とした漫画として興味深い内容だった。

問題の漫画はPDFファイルで政府ドメインにアップロードされている*1
http://www.moj.go.jp/content/001311772.pdf
いかにもファミリー向けの絵柄で、昔話のキャラクターを現代的なトラブルに直面させて、法律の説明をおこなうという形式。見た目は単調で期待しづらい。
しかし読んでみると、ただでさえギャップがある昔話の世界観と堅い法律説明に、淡々としたボヤキで奇妙な生活感がくわわり、シュールな雰囲気をかもしだしている。


昔話の善悪をひっくりかえしたりするパロディなので、キャラクターも状況設定もわかりやすい。
さらに世界観が過去であることや、擬人化動物をつかっていること、説明役が女性であること*2などで、解説漫画が批判されがちなさまざまなバイアス*3を回避できている。
とはいえ、上記までは珍しくない工夫だろう。すごいのは、冒頭いきなり解説役によって主人公がトラブルに巻きこまれる、理不尽なスピード感。

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あえて明らかなマッチポンプにすることで、こうした漫画の御都合主義をメタフィクション的に解消しつつ、解説役と相槌役に上下関係が生まれない。これほど主人公に共感しやすい解説マンガは珍しい。
さらにトラブルごとにキャラクターの法律における優劣が変わり、先読みできない展開に意外な読みごたえがある。それでいて法律を盾にする鬼といったキャラクターの一貫性は守られている。
つまらない長台詞という下手な広報漫画がおちいりがちな問題もない。基本的に短いかけあいでコマを進め、長々と条文をひく台詞はうまくギャグで流して要約につなげている*4


ちなみに「マンガ:ほんままり」というクレジットから検索すると、広報漫画の制作会社「マンガ製作所」に登録されていた。
ほんままり|漫画家詳細|【マンガ製作所】安心料金設定|高品質な漫画制作・イラスト制作
しかし掲載されているサンプルは平凡な印象で、良い意味でのシュールな味わいは感じられない。
漫画家個人のサイトも見つけたが、仕事を募集をするシンプルな内容で、やはり実際の漫画の面白味がつたわってこない。
Mari's illustration
多くの広報漫画の実績から、技術がある漫画家とはわかる。しかし一頁に情報をまとめたような漫画が多くて、あまり良さが出ていない。

*1:なぜか異様に画質が悪いが、印刷を意図していないのだろうか。

*2:ただし、現代人が古代人に対して知識で優越するパターンであることには変わりない。そこで関係の上下が生まれない工夫は後述のとおり、キャラクター設定とは違う次元でおこなわれている。

*3:この点では、自民党憲法改正解説漫画がひどかったことが記憶に新しい。 hokke-ookami.hatenablog.com

*4:14頁等。