法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

ぼくの考えた仮面ライダー

 映画評論家の町山智浩*1が清廉潔白ではないヒーロー像を求め、仮面ライダーをネタにしていた。

 当然のようにそのヒーロー像に反発があるだけでなく、そもそもニチアサライダーや関連作品で部分的に実行されているとも指摘されている。
 とはいえ、悪趣味な与太話としては良くも悪くも珍しくないネタではある。
 実際に私も上記ツイートを見かける以前から、具体的には新型コロナ禍が特撮番組に影響をあたえたころに考えたコンセプトがひとつある。


 霧がたちこめ、ひとけのない近未来の日本。
 ただよう霧を吸いこむと、人々は恐怖にかられ、周囲を攻撃し、肉体も怪物化していく。すなわち、「ショッカー」に。
 そうしたショッカー化を防ぐため、誰もが「マスク」をつけ、他人とできるだけ接触しない生活をしていた……


 制作困難から放映一時中断にいたった『仮面ライダーゼロワン』に、最初から3DCGで描写された異世界で戦う設定にしながらVFXリソースが不足している『仮面ライダーセイバー』。
ゼロワン 46話:「最終回を終えて」 | 仮面ライダーWEB【公式】|東映

毎週テレビで放送する意味そのものが問われるような事態に直面しました。新型ウイルス感染拡大という未曽有の事態に。“不要不急”の行動の自粛が叫ばれ、本編の撮影も一時中止を余儀なくされました。「仮面ライダーゼロワン」は新撮エピソードの代わりに、今まで放送した映像を再編集して新しいエピソードを作り出しました。

 ならば最初から群衆も主人公も不織布マスクをする社会で、市街地の日常から戦闘までひとけがなくても成立する設定にしてはどうだろうか?
 新型コロナ禍においてはロケ撮影やエキストラの制限が多い。そこを逆転して、多くの人々がマスクをしつつ、隠れて生活するディストピアを舞台にする。撮影もできるだけ少人数で可能なかたちにする。
 逆に一定以上の距離をとれば普段通りの生活をできるようにする。大事件が起きているのに遠景で普通に自動車がゆきかっている撮影の説明として。


 ひとたびショッカーがあらわれれば、普通の警察などでは充分な対処ができない。元市民を攻撃するための法的根拠も必要になる。
 そこで犯罪者とは別個に、怪人化しつつある人間を制止することと、完全に怪人化した人間を処理することのみ許可された公的組織が生まれた。
 その組織の構成員こそ、怪人化を完全にふせぐ特別な装備をつけた、「マスク」ド・ライダー……


 恐怖の存在と思われることをふせぐため、マスクドライダーの活躍はプロパガンダされる。
 できるだけ太陽のもとで戦い、バリアを作り出すドローンで街角を即席のリングにして、ドローンで格闘戦を撮影し、華々しいヒーローとして広報される。
 怪人以外の人間であれば犯罪者であろうとも存在を気づいてもらうため、マスクドライダーはカラフルで目立つデザインをしている。
 元人間を傷つける法的根拠を示すため、アイテムを装備するごとに、あるいは強力な攻撃をするごとに、恐怖を与えないよう軽快な自動音声が流れる。
 外出が困難な人々は、マスクドライダーの活躍をTVやスマホで楽しみ、自室にこもりながらSNSで応援する……


 マスクドライダーは一種の医療行政であり警察権力であると同時に、古代ローマでいうパンとサーカスの剣闘士。
 時に生身で、時に騎乗で戦う、すなわち「ライダー」というわけである。

 これならば最近のライダーが販促商品を増やすため無数のアイテムごとに音声を用意している設定も、派手でわかりやすい戦いを観客に楽しませる作中演出として説明がつく。


 物語としては、怪物化に追いこまれていく弱き人々や、根本的な原因への無力さをかかえながら処理していくヒーローのドラマを展開していく。
 もちろん、そうしたパワードスーツを着た公権力集団だけがヒーローでは1年間の放映は成立しないだろう。
 そこで素顔も見せながらヒーローを演じている主人公たちに対して、完全に素顔を見せないライダーも登場する。多くのマスクドライダーと違って、怪人化した人々の尊厳を守るように、月夜に隠れて処理していく謎の人物。


 その「仮面」ライダーこそ、石ノ森章太郎が描いたように怪物化した素顔を隠した、孤独なヒーロー。

 ショッカー化して周囲の恐怖にとらわれながら、弱き市民は攻撃せず、仲間であるはずのショッカーを裏切るように倒していく。
 怪人化した力にパワードスーツの機能があわさるため、訓練しただけの人間がパワードスーツを着ているマスクドライダーよりも強い。すでに怪人化しているため、汚染度の高い空間にも迷わず入っていける。
 また、マフラーが背後に延びて、昆虫がもつような硬質の羽のようになって回転。前面の霧を吹き散らすことができる……つまり風の力を受けて変身する初代設定を逆転して、風の力を発する設定にしたわけである。


 仮面ライダーがなぜ自我をたもっているかの理由と、その正体の謎解きを縦軸にして物語が進んでいく。
 マスクドライダーのなかにも職務の正当性に悩んでいく者が出てきたり、成績が悪いマスクドライダーが怪人を処理せず逃がして僻地にすまわせていることが判明したりする。
 逆に嗜虐するように怪人を処理するマスクドライダーも出てきて、それを止めるためのマスクドライダー同士の戦いがおこなわれたりもする。


 やがて怪人化する条件も判明していき、マスクドライダーが戦う機会も少なくなる。
 少しずつ世論が異常事態になれてきたころ、政府はショッカーを処理する最初で最後の大々的なイベントを開催しようとした。
 しかし、ヒーローとして自立していったマスクドライダーは各地で職務をまっとうし、会場*2に来ることはなかった。
 災害を人気取りに利用しようと会場で権力者が密集した席は、怪人化する格好の条件だった……

 一方、仮面ライダーはとある行政機関の地下にもぐり、完全に自我が消える寸前で最後の戦いを始めようとしていた。
 そこにあるのは、ショッカーを蔓延させないためという理由で一国の全住民の行動をドローンで追跡し、情報を管理するためのスーパーコンピュータ。
 もちろん仮面ライダーは管理システムを否定し、人類の自由のために破壊する。たとえそのシステム自体は合理的であったとしても、それを導入するために政府が災害を蔓延させる動機を生みだしてしまう。
 管理システムの撮影セットが崩壊するなかで、権力への恐怖で完全に自我を失った仮面ライダーは、主人公のマスクドライダーに倒される。
 そして主人公のマスクドライダーが仮面をうけつぎ、日本政府と対立する鏡像として「黒い太陽」を名乗り、実態は怪人でしかなかった仮面ライダーの尊厳を守るように真実を葬り、物語が終わる……

 つまり原作の結末……日本政府が隠していた全体主義的な管理システムを悪の組織が利用する……という設定を、災害の蔓延を口実にして日本政府が全体主義的な管理システムを導入しようとしていた……と逆転したわけ。


 また、途中の販促アイテムで言及したように、各要素を分解すれば、実はほぼ全てニチアサシリーズに前例がある。たとえば主人公の仮面ライダーが組織系でありつつ傍流で、アクセントのように第三勢力の仮面ライダーがいるというのは、ニチアサシリーズの定番だ。主人公が敵側の存在だったという展開も、一時期は多用されすぎて意外性が弱まるほどだった。
 もちろん、敵の組織性を弱める方向のニチアサシリーズでも怪人化を完全に天災として描いたものはなかったと思うし、物語をひっぱる仮面ライダーが本当に人格がない自動的な存在だったというオチもないわけではあるが。何より、新型コロナ禍によって社会が一変した風景を物語にとりこむことまでは、仮面ライダーにかぎらず大半のドラマがおこなえていない*3


 いずれにせよ新型コロナはきっかけにすぎず、テーマ面では原作漫画版の設定を逆転する方向で遊んだ二次創作だが、思ったより普通の構成にまとまった。
 元ネタにした原作の世界観に普遍的な強度があるから、逆走しても崩れにくいのだろう。

*1:はてなアカウントはid:TomoMachi

*2:いくつもの意味をこめて、当然さいたまスーパーアリーナである。 2020.yahoo.co.jp

*3:一応、『仮面ライダー電王』のようにメインキャラクターの大半を着ぐるみにした作品はあり、今期のスーパー戦隊に採用されている。ただし閉所で発声せざるをえない声優のリスクが上がるという別の問題もあるようだが……

何人殺してでも2021年に東京五輪を強行したい、と日本政府や五輪委員会が考えているなら、せめて……

遅れに遅れたワクチン接種がいきわたるかもしれない10月まで延期する、という方便は選べなかったのか。
東京で過去最多の2848人感染 半年ぶりの2千人超 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

2千人を超えるのは第3波の1月15日(2044人)以来約半年ぶりで、8日連続で1千人を超えた。前週の火曜日(20日)を1461人上回った。27日までの1週間平均の新規感染者数は1762・6人で前週の149・4%だった。

コロナ病床、最大数を要請 患者急増で診療制限も―東京都:時事ドットコム

都は患者受け入れのため、救急医療の縮小や停止▽手術の延期▽一部診療科の停止▽診療機能の縮小―などの検討を医療機関に要請した。28日には担当者への説明会を開く予定。

米国の放送局の意向がどうであれ、おそらく現状で開催を強行するよりは、ずっと国内世論の反発も弱まっただろう。
そのため必要ならば、8月も10月も「最高の状態でパフォーマンスを発揮できる」天候に変わりはない、新型コロナさえなければ7月下旬に問題なく開催できた、などと白々しい嘘をついてもいい。
屋外競技の選手「常に脱水状態」 連日の真夏日に悲鳴 - 東京オリンピック [テニス]:朝日新聞デジタル

開幕から連日真夏日となり、25日も午前から気温が上昇。午前8時半すぎには30度を超えた。日中、屋外でのプレーを強いられる選手たちからは暑さと湿度に悲鳴が上がった。

どうせ嘘をつくなら、犠牲者が増えるよりは減るのがまだいい。今から延期しても来日した選手にとって負担だろうが、少なくとも熱中症の危険は緩和できるだろう。
正午ごろに外出してから、ずっとそのようなことを思っている。

外国の製薬会社が一野党議員の一発言を理由に政府交渉で激怒することが、はたしてありうるだろうか?

dot.asahi.com
上記のAERA記事は、はてなブックマーク等で注目されつつ、官邸側の野党批判は半信半疑で受け止められていた。
[B! COVID-19] 菅首相が国賓級のおもてなしでワクチン前倒し要請もファイザーは“スルー”「野党のせい」と恨み節 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)
[B! COVID-19] 菅首相が国賓級のおもてなしでワクチン前倒し要請もファイザーは“スルー”「野党のせい」と恨み節〈dot.〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
しかし医師で小説家の知念実希人氏は、官邸周辺者の野党批判発言を無断転載*1して「これはひどい」とツイートしていた。


これはひどい……

「ワクチン交渉は非公表なのでこれまで報じられていませんが、実は立憲民主党所属議員の軽率な国会での言動がファイザーの怒りを買い、ワクチン供給の遅れに一役買ったという重い事実があるのです」(官邸周辺者)

 問題となったのは、立憲民主党柚木道義衆院議員が今年2月12日の衆議院予算委員会での以下の発言だという。

「ワクチン確保が後手後手に回ってきてるんじゃないかと指摘もある中で、私はぜひ、3社以外でロシア製ワクチン、中国製ワクチンも含めて確保に努めるべき」

 当時、政府はファイザーと供給量や時期を巡りギリギリの交渉や駆け引きを行っていたという。

「この国会発言を知ったファイザー幹部は激怒。『我々のワクチンは世界が求めているものだ。日本以外に求めているところはいくらでもある』『国会という公式の場で、中国やロシアから供給を受けるなどという議論がなされているのであれば、日本の態度は理解した』として態度を硬化してしまったのです。難しい交渉が一層紛糾し、供

しかし、もともとのAERA記事からして国内治験を要求したと野党批判をしているものの、引用された官邸側の発言は「恨み節」という位置づけで距離をとっている。
「この国会発言を知った」と書かれているが、どのようなかたちで伝わったのだろうか。激怒された責任がどれくらい野党にあるだろうか。


そこで国会議事録でやりとりを確認すると、仮にファイザー側の発言が事実だったとしても、柚木氏の主張が正確につたわっていない可能性が高いように思える。
国会会議録検索システム

変異ウイルスへ対応するワクチン確保についても伺います。
 もちろん、今の三社のワクチンがどういう形で副反応が出る、あるいは効果があるということを確かめながらということだと思うんですが、他方で、この間、ワクチン確保がなかなか後手後手に回ってきているんじゃないかという指摘もある中で、私は是非、この変異ウイルスへ対応するワクチンの確保についても同時進行で進めていただきたいと思うんです。
 また、加えてお尋ねしたいのは、今朝の報道でも出ていますが、この三社以外、例えばロシア製のワクチン、大使館から協力したい、日本に供給したい、こういう報道も出ています。あるいは、中国製というものもあります。そういったものも含めて、ワクチンの確保並びに変異ウイルスへ対応するワクチン確保、こういったことに努めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

読んでのとおり、「是非」という表現で「確保」を求めているのは「変異ウイルスへ対応するワクチン」だ。それもファイザー、モデルナ、アストラゼネカの三社確保との「同時進行」で。
中国製やロシア製は、そうしたワクチン確保を求めた後、ふくめるように要求したにすぎず、明らかに優先度が低い。


それでも、ロシア製や中国製からも確保する選択肢を野党が言及しただけで、ファイザーは交渉で激怒するような企業だとしよう。
しかしAERA記事では、知念氏が転載した部分につづけて、官邸周辺者の発言を下記のようにまとめている。

柚木衆院議員が提案したとおりに中国製やロシア製ワクチンを確保できたとして、成果は出たかは、甚だ怪しいだろう。中国製ワクチンはデルタ株には有効性が低下するとされ、またロシア製ワクチンはEUでもまだ承認されていない状態だ。仮に確保しても日本国内ではほとんど活用できないということになりかねない。結局、野党の国会提案がワクチン確保の足を大いに引っ張ることとなったというのだ。

柚木氏はまさに同じ質疑で変異型ウイルスへの対応ワクチンを求めつつ、それとは別個に中国製やロシア製の確保を提案している。
ここでの官邸周辺者の主張は、柚木氏の質疑を歪曲していないと成立しない。確認しなかったのか、曲解したのか。


それに柚木氏個人ではなく、野党の責任を全体として問うならば、同じ委員会で先におこなわれた質疑に注目するべきだろう。
柚木氏と同じ立憲民主党に所属している大西健介氏が、国外に居住する日本人へのワクチン接種について論じている。

ワクチンの確保ができない国も出てくるんじゃないか。そういうところにいる日本人の方は、打ちたくても打てない。あるいは、打てる場合にも、在留先によっては、中国製であったりロシア製であったり、治験データが不透明で安全性に不安があるワクチンしか接種できない、そういう国もあります。世界中に駐在員のいる企業からは、日本国内で承認されたワクチンを在外邦人にも供与してほしい、こういう要望があります。

今言ったように、なかなかロシア製、中国製しか打てないような国に対して場合によってはワクチン供与を検討するということも、私は、日本で承認をされたワクチンを供与するということも場合によっては検討すべきじゃないかと思いますけれども、検討していただけませんか、まず。

明らかにロシア製や中国製よりもファイザー等のワクチンを信頼し、優先した供給を求めている。
対して政府与党の国務大臣である茂木敏充氏は「多くの国で外国人を別扱いとはしない方向となっていること、また、医療行為という事柄の性格上、現地の保健政策や法令に基づいて行われるべき」と答弁し、検討にとどめている。
大西氏の質疑後に柚木氏が質疑した順番で考えると、野党としてはファイザーに信頼性でロシア製や中国製が劣ることは前提にしつつ、確保を求めたと理解するべきだろう。
そして議論の流れを見ると、野党を批判するつもりで中国製やロシア製のワクチンを低評価するほど、政府与党こそが批判されるべき構造になっている。


ちなみに上記より少し前の2月3日に、立憲民主党参院議員である杉尾秀哉氏がファイザーの確保状況について質疑をおこなっている。
国会会議録検索システム

アメリカのファイザー本社が去年の暮れに日本側に、この六月までに全国民分のワクチン接種を供給するのが困難だと、こういうふうに内々に通知したというふうに聞いておりますけど、これについてイエス、ノーだけお答えください。

これに対して政府与党の国務大臣として、田村憲久氏が下記のように答弁している。

ファイザーですか。ファイザーは、そもそも基本合意においても全国民分のワクチンを供給するというのは、もう以前からそういうような基本合意ではございませんでしたので、そもそも全国民分をファイザーは供給する話にはなっておりません。

中国製やロシア製の供給を野党が求めただけでファイザーが激怒するなら、この田村氏の口調に対して気分を害することはなかったのだろうか。

*1:引用元を示していないため、明らかに引用の要件を満たしていない。後日にリプライで質問されて、ようやく「たしかアエラですね」と答えているだけ。

日本の夏、為末大と伝次郎


ところで大会期間中の気温を心配する人たちと、現政権に反対の人たちが妙に重なっているのが偶然だろうか


このあたりも選手への負担が大きすぎます。
nordot.app

【お知らせ】『はだしのゲン』が、「しんぶん赤旗」(7/30日付)文化欄<金曜名作館>で評論「極限状態の人々に生きる力」掲載! | 株式会社汐文社(ちょうぶんしゃ)

鮫島伝次郎町会長に着目します。鮫島は戦時中、軍国日本の銃後を守る先兵としてゲンの父を特高警察に売り渡し、敗戦後には反戦主義者だったと叫ぶ。

戦前から反戦主義者だったと戦後に自称したキャラクターと比べれば、まだ為末氏のほうがマシなのかもしれない。
かわりに、毎年くりかえされる問題を初めて気づいたかのような無能を演じているわけだが……


もちろん、問題は為末氏個人ではなく、五輪委員会から招致関係者すべてにある。


【猛暑問題 組織委「早急に検討」】
https://yahoo.jp/kA0lUm

東京五輪パラリンピック組織委員会国際オリンピック委員会は25日の会見で、一部のテニス選手から猛暑の不満が出ていることに言及。組織委の小谷実可子スポーツディレクターは「選手の健康のために早急に検討したい」と話した。

1年延期の猶予をもらって「早急」とは……

東京五輪の記者向け1600円ハンバーガーは、平昌五輪の1200円ランチと比べて、そう悪くないと思っていたのだが……

東京五輪におけるメディアプレスセンターの食事が高すぎると、女性自身*1北日本新聞などが報じている。
1600円ハンバーガーに相次ぐ失笑…海外記者もあ然の“おもてなし崩壊” | 女性自身

投稿には写真も添えられており、そこに写っているのはテイクアウト容器の半分を埋めるポテトと、具とバンズがバラバラになったハンバーガー。なんと、この内容で1,600円だという。

f:id:hokke-ookami:20210725234011p:plain

7月19日配信の東京新聞によると、MPCにある食堂の食事メニューは現在6種類。最も安い食事は1,000円のビーフカレーで、自販機のお茶がペットボトル1本(500ml)で280円と一般的なスーパーやコンビニよりも高額であることを報じている。


しかし五輪の記者向け食事の問題は今回だけではなく、2018年の平昌冬季でも国内外で報じられていた。
<平昌五輪>国際放送センターのメニュー料金にぼったくり論争 | Joongang Ilbo | 中央日報

f:id:hokke-ookami:20210725232956p:plain

「これはいくらだと思いますか?」というタイトルと共に、食パンとベーコン、スクランブルエッグなどが盛り付けられた写真が掲載された。

投稿者は「国際放送センター(IBC)内の食堂で売っているメニュー料金がとても驚いたのでここに掲載する」とし「こんなゴミが何と1万1300ウォン(約1174円)だ。こんなぼったくりも他にない」とコメントした。

いくつかの料理から選ぶセルフ配膳方式で、ビッフェと違って料理ごとに料金が加算されたという。

セルフ式で、購入者が好きなものを皿に盛ればそれに応じて価格が決まる仕組みだ。平昌組織委員会が公開した資料によると、食パン1枚1500ウォン、クロワッサン一個2000ウォン、コーンフレークシリアル2000ウォンだ。

トースト1枚やオレンジジュース1本が約200円というのは、たしかに見た目と比べて高額に見える。東京五輪の記者向け食事と印象として大差ない。
値段については冬山の観光地と思えば理解できなくもないが、こうした批判をあびて運営側は食事を見直すよう動いたらしい*2


ただし、そもそも平昌五輪で記者や関係者の多くは外食したり、食事をもちこんだりしていたようだ。東京写真記者協会の池田正一氏が中央日報にこたえている。
<平昌五輪>外国取材陣「韓国料理おいしく、市民・ボランティアは親切」 | Joongang Ilbo | 中央日報

「食べ物がおいしいのでいい。スンドゥブが好きなのだが、江陵はスンドゥブが有名ということでもう店を予約を入れてある」と言って笑った。

テレビ朝日宮嶋泰子氏による取材日記では、よりくわしく記者の食事事情が書かれていた。
スポーツ古今東西 | 平昌オリンピック その6 のりきるための食事

おかゆやブルゴギ、キムチなど韓国料理をはじめとして、スープ、サラダ、パン、温野菜、卵、魚、果物、さらには回教徒のためのハラル料理も用意されています。大会期間中は基本的に毎日同じメニューです。自分の好きなものを取っていけばよいのです。

上記は氷上競技がおこなわれた江陵のメディア村で出された料理で、問題視されている平昌のIBCとは約50分間の移動時間がかかるという。IBCには軽食をもちこんでいたようだ。

出先のプレスセンターの机の上には、日本から持って行ったおさかなソーセージや豆乳クッキーなどを並べての作業です。

IBCのテレビ朝日のブースには、今回もずらりとカップ麺やカレーが並べられています。山から下りてきての温かいカップ麺は、えも言われぬおいしさだったようです。


おそらく東京五輪のMPCや平昌五輪のIBCでの食事は、時間のない記者が手早くすませるためのものだ。
根本的な問題は、東京五輪は平昌五輪と違って外で選ぶことが難しいところではないだろうか。時間がない記者がセンター内ですませる料理とは別個に、時間がある時に周囲でゆっくり楽しむ食事も本来はできたはずだ。
外食が難しくなった時点で、過去の五輪と比較して良好な食事を出す必要があった。逆に、短時間でも外出しての購入を許しているなら、公言されている感染症対策が虚偽ということになる。
これもまた現場の不手際というより、感染拡大下で開催した無理がたたった結果ではないだろうか……


……などと思っていたのだが、平昌五輪では記者向けに用意されていたハラル食が、東京五輪では用意されていないという新たな報道があった。
五輪の報道拠点、ムスリムに不評 礼拝室、ハラル料理もなく | 共同通信

(MPC)に、イスラム教の礼拝室や戒律に従った「ハラル」料理が準備されておらず、ムスリムイスラム教徒)から不評を買っている。

レバノンから初めて来日したフリーの写真家は「食堂に行ってもハラル料理は見当たらないので、MPCでは何も食べずにコーヒーばかり飲んでいるの。案内板の言葉は日本語や英語ばかりで(国連の公用語でもある)アラビア語は全く目にしない」と不満を訴えた。

ムスリムも多く居住する東京は、宗教にあわせて多様な料理をそろえやすいはずだ。
少なくともメディア村では用意されていたことが確認できる平昌五輪と比べて、ここは明らかに悪化している。

*1:記事には写真やツイートのURLが記載されていない。途中で挿入した画像は、こちらの元ツイートから引用した。

*2:こちらの記事をWEB翻訳して読んだ。スタッフ向けはもう少し安く、種類も多いものの、安っぽく見える。使い捨て食器をつかっているのは衛生のためらしいが。[단독] “교도소밥도 이보단 낫겠다”…뿔난 평창 직원들 | 서울신문