法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

軍事技術に反対するならインターネットは使えない、という揶揄はバカバカしいからやめるべき

 楽天が軍事企業と提携することへの抗議のため撤退する企業が出たことをTogetter公式がまとめ、イーロン傘下になったTwitter*1を使うべきではないという反論ツイート*2を最後から二番目に収録していた*3
「買うのやめるわ」楽天が海外軍用ドローン会社と提携を発表、それを受けて通販生活が楽天市場からの撤退を表明することに - Togetter


@nikkei 「楽天は軍需だ!使うのやめる!」

って言ってる方々。

正真正銘の軍需、ドローン戦で収入を得てるイーロンのSNSをやめない辺り、実にダブスタなんだよなあ。

今までもこれからも軍需を満たす企業の商品やぞ、Xは。

 それに同調するように、コメント欄では軍事技術をさけるならばインターネットも使うべきではないという意見が複数あり、賛同も多くあつめている。

sinkoro@h_okasann
使い古しであれだが、インターネット自体が軍事からの派生なので、まずはネット通販を止めてTV、ラジオ、カタログ、広告通販に戻ることじゃないのか?もちろん申し込みにメールの利用はだめだからな?通信もおそらくは軍事からの派生だから電話、FAXもだめだなw

おきらく@信長出陣@GameOkiraku
ここから楽天市場から撤退する一大ムーブメントが起きたら凄いけど、実際はここしかそんな動きしないんだろうなって感じはする。そもそも軍需に関わったらダメなんて言うならインターネットなんて利用できないですよ。

X.Y.S@y_sugizou
軍事技術を出自とした素材や技術の製品、サービス(インターネットや電子レンジや缶詰)を使わないのはもちろん、関連する企業(三菱系とか、新明和とかダイキンとか)の製品サービスも徹底排除するところまで厳密に徹底するなら分かるんだけど、この手の左翼仕草は薄っぺらいポーズだけなのよね。


 たとえば瓶詰技術などはナポレオンが遠征の保存食のために考案させた技術ではある。しかし、だからといって瓶詰技術を批判するならばナポレオンの行為をいっさい批判できない、ということはないだろう。
アペールとは? 意味や使い方 - コトバンク

フランス革命後、政府は陸海軍の食物を保存する方法について懸賞募集した。アペールは食物を広口のガラス瓶に入れ、水を加えてコルク栓を緩くしてこれを鍋(なべ)に入れ、2時間ほど煮沸して瓶を取り出し、栓を堅く密封した。1810年、彼はこの方法でナポレオンから1万2000フランの賞金を得、それで食物保存の工場を建て、その方法について著作した。

 保存食をもとめて実現させた事績そのものは賞賛されるとしても、特に関連するわけでもない他のさまざまな行為の評価は個別に評価されるものだ。
 そこで評価の対象を軍事という存在に広げたとたん、個別に評価できなくなるのは逆だろう。個人にかかわる技術ひとつであっても個人全般の評価に直結できないのであれば、より大きな物事のかかわる技術ひとつを物事全体の評価に直結できるわけがない。
 肯定であれ妥協であれ利用するならば、かかわる他の技術や行為をいっさい批判するべきではない、ということはないだろう。既存の社会が戦争によってかたちづくられているからといって、新たな戦争を批判するべきではない、ということもない。


 技術の発展と使用にはさまざまな過程がある。過程の一端にかかわった物事を、技術に関係ないところまで肯定するのは、軍事技術を批判されたくない動機が先にあり、そのために理屈がゆがめられているのだろう。
 そもそも軍事技術におけるインターネットの立場は、食料の保存方法のひとつにすぎない瓶詰とは違う。米国防省がかかわる技術すべてが軍事技術と呼べるかは微妙なところがあるし*4、コンピュータをネットワークでつなぐシステム自体は米国防省がかかわる以前から研究が進められていた。軍事がかかわらなくても、現在のようなインターネットが存在した可能性は充分に考えられる。瓶詰がなくても他の食料保存方法が考えられてきたように。


 たとえばTogetterのコメント欄では、下記の意見も十以上の賛同をあつめている。しかし八木宇田アンテナは軍事技術の象徴といえるだろうか。

reesia@reesia_T
テレビ受信のために八木宇田アンテナを使ってるご家庭って多いと思うんですけど、まさか軍事アレルギーの方のご家庭には設置されていないですよね?

 大正時代に開発された先端的な技術だったが日本国内では活躍できず、戦争で敵軍がレーダーに採用していたことが後年に判明した逸話は有名ではある。
 しかしこの逸話は、むしろ戦時体制で余裕のなかった日本において有用な技術が見向きもされず、戦後にようやく文化的な技術として普及したという解釈ができないだろうか。
 軍事に選択と集中をおこなって開発された技術がある一方で、疎外された技術があるかもしれない。開発できなかった技術は認識することすらできないが、八木宇田アンテナのように開発はできても実用化ができなかった技術があることはわかる。

*1:現X。

*2:現ポスト。

*3:最後は「攻撃型ではなく、迎撃でしょ」という反論ツイート。

*4:インターネットは何のために作った? | 日経クロステック(xTECH)

『ウォーフェア 戦地最前線』

 イラクの住宅街のひとつの家に、米軍の小隊が突入し、壁を破壊していく。住人をひとつの部屋に押しこめた小隊は家を拠点にして、壁の穴から危険なテロリストの監視を始めるが……


 イラク戦争を米軍少数部隊の視点で切りとった2025年の米国映画。A24作品では珍しいドキュメンタリタッチで注目され、2026年1月に日本で公開された新作が、早くもプライムビデオで会員向けに見放題。

ウォーフェア 戦地最前線

ウォーフェア 戦地最前線

  • ディファラオ・ウン=ア=タイ
Amazon

 架空性の高い内戦映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』*1のアレックス・ガーランド監督と、共同で監督脚本をつとめるレイ・メンドーサが、イラク戦争で体験した出来事を写真と証言と記憶で再現したという。
 中東を舞台とした近年の戦争映画では、すでに『リダクテッド 真実の価値』や『レバノン』のように視野を制約した傑作佳作がある。比べると、前評判ほどには舞台や視点を限定せず、最新VFXも活用してそれなりの規模感で戦争を描いている。


 前半は『裏窓』*2を思わせる。無理やり現地の住居に押し入り占拠して、住民を一角に押しこめ、軽口を叩きながら治安維持のため周辺住民を監視して銃口を向ける。体験した現実にもとづきつつ、イラク戦争における米軍全体のメタファーになっている。そして『裏窓』の主人公のように、事件の発生を警戒しながらも安全圏から一方的に論評していた米軍は、そのように一方的にまなざすために開けた壁の穴から攻撃され、まなざされる存在へといれかわる。
 中盤では、拠点とした民家に閉じこもるしかなくなり、ここで事前情報どおりの視野がきわめて制限された戦場が描かれる。敵の姿どころか外の景色もほとんど映らず、カーテンを閉じた窓の向こうから銃声だけがひびく。軍上層部との通信は音声だけで、上層部の表情はわからないし、友軍の状況も伝聞のように知らされるだけ。
 後半は予想された地獄絵図になるが、その端緒が友軍が救援に来てからという構成が事実にもとづくにしても興味深い。一気に殺すのではなく重傷を負わせることで、それを助けようとする隊全体の負担になりつづけるという理屈が、包囲された状況で治療しつづける情景を念入りに描くことで劇映画として実感できた。もちろん重傷者は見捨てるべきだったという話にはならないし、そうしない。一方で、米軍が必死に撤退したラストシーンで、むしろ街角が日常と生活にもどっていく短い描写が、意図したかどうかはわからないが自己批判的で、むしろ制作者と米国に好感をもった。


 そしてエンディングで、モデルとなった人々や風景が描かれる。俳優の風貌などまで相当に再現しようと努力していたことが比較画像から実感できる。
 くわえて、その現実の後日談によって、たとえ被害を拡大するようであっても、負傷した兵士を見捨てないことの意義が描かれる。思えば、足手まといになる味方であっても見捨てない米軍の強靭さは、大日本帝国の兵士が無残な敗北を実感した象徴ではあった*3。それは同時に、この映画において現地の協力兵を道具のように利用した米軍が、周辺全体を敵にまわして無残な敗北を喫したのも当然だと思わせる。

*1:『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 - 法華狼の日記

*2:『裏窓』 - 法華狼の日記

*3:こちらの映画の冒頭で印象的なシークエンスは証言を聞いたことで追加した原作にない描写だという。 『アルキメデスの大戦』 - 法華狼の日記

セキュリティコンサルタントという二本松哲也氏は、インターネットにはびこるデマに流されすぎでは?

沖縄県知事選で批判された勝手連の生成AIイラストが、生成AIの誤った回答によって、対立勝手連の捏造とされてしまった件 - 法華狼の日記

 二本松哲也氏がバイラルアカウントを引用して、共産党支持者の生成AIの問題という枠組みで認識し、生成AIの事実確認は不充分と留意はしつつ表現を批判するという言論の自由を全否定していた。


立憲民主党党員による「中村りほ」の件に続き、今度は共産党支持者の生成AIが問題になるとは
立憲民主党も共産党も、生成AIの政治利用や偽情報への規制・ルール整備を訴えている以上、規制を訴える側が問題事例まで生み出すことになり、結果としてマッチポンプと受け取られかねません。

 上記エントリで指摘したように、共産党支持者が生成AIで対立陣営の問題を捏造したというデマを二本松氏は引用で広めて、生成AIの誤った回答の被害者が問題事例を生みだしたと責任転嫁した。


 しかし二本松氏の言動が気になったのは今件が初めてではない。そもそも私がその存在を認識したのは、N党系映画『偏向報道』*1の下記宣伝を特に否定することもなくリツイート*2していた場面だった。


鳥居さんに知事のポストの件を伝えたところ、とても喜び、知事に感謝している旨の返事がありました。

主演を引き受けてくれた鳥居さんにとって、知事のご感想は大きな励みになったと思います。温かいお言葉をいただき、ありがとうございました。#映画偏向報道

 制作背景を知らないならばセキュリティの専門家にしては脇が甘すぎるのではないかと思って、他の発言もいくつか見ていったところ、Colabo攻撃に加担していたことも知った。


上野千鶴子氏「日本国民は平等に貧しくなろう」というコラムのような、賃金の上がらない日本で移民政策の効果は不透明であり、colaboのように表向きの活動で助成金を受け取り政治的な活動を行う状況から、日本においては主権を揺るがす大きな混乱を招くと考えます。
日本経済新聞 - ニュース・速報 最新情報

 もちろんNPOや一般社団法人のたぐいが狭義の政治的な活動をおこなうことは一般的で、それを目的として設立することも珍しくない。しかしそれを問題視するにあたって、助成金をこえる支援活動をおこなっているColaboを持ちだすことは暇空茜こと暇な空白氏のデマに影響されているとしか思えない。


 また、2025年にもなって従軍慰安婦問題について朝日新聞の影響を特異視して過大視して、明らかに事実に反した記述もおこなっている。


中国人による靖国神社への放尿や落書きといった行為を目にすると、日本と中国との関係を修復することは極めて難しいと感じざるを得ません。

そもそも1980年代後半から1990年代初頭にかけて、日本国内の一部メディアが「従軍慰安婦」という表現を広め、特に朝日新聞の誤報や不正確な証言が国際的に引用されました。その結果、日本の責任が過度に強調される形で拡散され、2014年に同紙が誤りを認めた後も、「日本軍による強制連行」という印象は国際社会に定着してしまいました。

中国政府は、こうした歴史問題を外交カードとして利用し続けています。韓国のように「慰安婦」一色ではなく、「南京事件」「歴史教育」「愛国主義教育」といった要素を組み合わせて活用し、日本への圧力を強めてきました。したがって、日中間の摩擦は単なる慰安婦問題にとどまらず、より包括的な「歴史問題」や「領土問題(尖閣諸島)」と結びついています。

日本国民の多くも、自国の尊厳が不当に傷つけられたという思いを抱いており、両国の関係を本質的に修復することは困難であると見るのが妥当でしょう。

 千田夏光氏のベストセラーのタイトルに「従軍慰安婦」がつかわれたのは1970年代のことだし、1950年代から複数の書籍や雑誌でつかわれていることも判明した。
「従軍慰安婦」という言葉は、千田夏光氏の造語ではないことはもちろん、ずっと以前から普及した言葉だった可能性があるくらい古い使用例を、国会図書館の全文検索で発見した - 法華狼の日記

「従軍慰安婦」という言葉が広まったのは、1970年代に出版されて映画化されるほど話題になった千田氏の一連の著作によってと考えられてきた。

1956年と1957年の木村良平氏による書籍は、本文の記述として現在と同じ意味で「従軍慰安婦」をつかっているように読める。

 韓国が「慰安婦」一色という認識であることも、逆に視野がせますぎて珍しい。世界遺産選出に関連して軍艦島が争点になった強制労働問題を認識できていないのだろうか。


 2026年の同種の発言はさすがに批判されていたが、反論する二本松氏は、自身が前提にしている吉田清治証言の重要視がナラティブである可能性を認識できていない*3


中国は日本に対し、慰安婦問題について
「公式謝罪と賠償」を求めています。
しかし、この問題を巡っては2014年に朝日新聞が過去の報道を検証し、慰安婦の強制連行を証言した吉田清治の証言に基づく記事を取り消し、誤りを認めています。
つまり、国際社会で広く引用されてきた重要な根拠の一部が否定された経緯があります。
歴史問題を議論するなら、こうした報道の経緯も含めて
事実関係を冷静に整理することが重要だと思います。
朝日新聞社インフォメーション | 記事を訂正、おわびしご説明します 慰安婦報道、第三者委報告書 朝日新聞社


「事実関係を冷静に整理する」と慰安婦問題を吉田証言の捏造のみに矮小化するのは、歴史修正主義者の手口です。

日本の慰安婦問題裁判
で慰安婦の強制性を認定したのは8つあります。

⓵「アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求訴訟」
②「釜山『従軍慰安婦』・女子勤労挺身隊公式謝罪等請求訴訟」→
③「在日韓国人元『従軍慰安婦』謝罪・補償請求訴訟」
④「オランダ人元捕虜・民間抑留者損害賠償請求訴訟」
⑤「中国人『慰安婦』損害賠償請求訴訟(第一次)」
⑥「中国人『慰安婦』損害賠償請求訴訟(第二次)」
⑦「山西省性暴力被害者損害賠償等請求訴訟」→
⑧「海南島戦時性暴力被害賠償請求訴訟」

整理はされてる。されてないのはネトウヨと歴史修正主義者の頭の中だけです。


吉田証言の訂正は重要な事実ですが、私は慰安婦問題全体をそれだけに還元しているわけではありません。
一方で、裁判は裁判ごとに認定の内容が異なり、被害事実を認定したものもあれば、事実認定自体をしていないものもあります。
だからこそ、判決・政府調査・報道経緯を分けて整理する必要があると思います。
日本で行なわれた日本軍性暴力被害者裁判 – アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)

 こうした部分を見るかぎり、二本松氏がおこなっているのは整理というより、誤った観念の固定化ではないだろうか。

*1:映画評「偏向報道」。ややネタバレあり・・・っていうか何これ。偏向してんの監督やろ | 黒猫ドラネコ【トンデモ観察記】

*2:現リポスト。

*3:複数の歴史学会の声明で、吉田証言は重要な根拠としてもちいられなかったことや、吉田証言で否定された部分よりも強制連行という言葉が指す範囲が広いことが指摘されている。「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 - 日本史研究会

沖縄県知事選で批判された勝手連の生成AIイラストが、生成AIの誤った回答によって、対立勝手連の捏造とされてしまった件

 発端は、8月29日の「川上芳明 #日本共産党推し@Only1Yori」氏による批判だった。


古謝玄太応援ポスター キモすぎて言葉がない。
#沖縄県知事選2026
#古謝玄太はないわ
スーツ姿の若い女性が3人立って並んだ生成AIイラストの下部に、古謝玄太候補を応援するテロップが書かれている。

 これに対して、Grokなどに質問して初出がみつからないことから、「川上芳明 #日本共産党推し@Only1Yori」氏が捏造したと疑いをかけ、自作自演あつかいする反応が殺到している。


あんたが作ったもんじゃないのかコレ AIはあなたのポストが初出だとしている 拾い物だとしたら作成者の呟きを転載してくれ


なんとか庇えないかと思ったんだけど、無理だった。 ごめん。


自作自演のデマということで決定なのでしょうか? 公職選挙法違反というリスクをものともせず、使命感に燃え行動される勇気は大したものと思いますが、さすがに有権者をバカにし過ぎでしょう。 共産党の権益を守るためなら何でもしてやるという姿勢が恐ろしいです。

 そして「NewsNews.Today@newsnews_today」のような悪質なバイラルアカウントや、「野党監視委員会@wZ9tUOjp5corpIo」氏のようなインフルエンサーも自作自演疑惑を確定あつかいし、元国会議員の浜田聡氏も共産党がつくった可能性を考慮すべきと主張している。


共産党支持者「古謝げんた応援ポスターキモくて言葉がない」

「お前が作ったんじゃね?」との疑惑が…

AI「これらのポスター画像の初出・拡散起点はこの共産党支持者です」
 
wwwwwwww🤣


ええええええええええーー‼️

自分で作って古謝支持者キモいとか言ってるのかよ⁉️⁉️⁉️

うわあああああああああああああ……


このポスター、共産党が作った可能性について考える必要がある。

 二本松哲也氏がバイラルアカウントを引用して、共産党支持者の生成AIの問題という枠組みで認識し、生成AIの事実確認は不充分と留意はしつつ表現を批判するという言論の自由の全否定をおこなっていた。


立憲民主党党員による「中村りほ」の件に続き、今度は共産党支持者の生成AIが問題になるとは
立憲民主党も共産党も、生成AIの政治利用や偽情報への規制・ルール整備を訴えている以上、規制を訴える側が問題事例まで生み出すことになり、結果としてマッチポンプと受け取られかねません。


論点は、赤いきつねの件と同じく、「性的表現」「キモい」「不快」といった感情記号を使って、特定候補や支持者全体への否定的印象に接続するプロパガンダ的な構造です。
なお、生成AIの特定については、Grokの回答だけで断定すべきではないですし、そこは訂正されるべきだと思います。
つまり、事実関係の検証より先に感情を動かし、その嫌悪感を政治的評価へ変換する。
AI時代は、こうした嫌悪を喚起する素材そのものまで簡単に生成できるので、生成者の特定と同時に、どの記号が、どの感情を、どの政治的ナラティブへ接続しているのかを見る必要がありますね。

 事実関係の検証より先に感情を動かすことを批判するならば、その対象は今件では共産党支持者批判者であって、共産党支持者ではあるまい。


 念のため、批判するならば検証のためにも「川上芳明 #日本共産党推し@Only1Yori」氏は引用元を明記するべきだったとは思う。
 しかし生成AIに質問して見つからないことは、存在しない根拠としては弱すぎる。
 事実として引用されているイラストは、今は鍵アカウントになっている「恩納の菊@sakurasaku1894」氏によって8月22日に投稿されたことが確認されている。


実際にいるんだよなあ どんまい👋
https://x.com/sakurasaku1894/status/2090912752907010449

 いいねやリツイートこそ少ないが、YAHOO!のリアルタイム検索の記録*1を確認すると、投稿直後は好意的なリプライが複数ついていることが確認できる。


おはようございます😊
古謝げんたさんを応援します😊


おはようございます(*˙ᵕ˙ *)
日本の為にもこれ迄犠牲となられた方の為にも古謝げんたさんを応援させていただきます。


このイラスト使ってもいいですか?


 さまざまなことの真偽を生成AIに質問することを止めるつもりはないが、現状ではファクトチェックにつかえないことくらいは理解してほしい。
 生成AIは雑多に集めた情報の平均をとるようなシステムなので、実在する情報源をさがして確認する助けにするか、一般論や通説のような一定の確立された主張を確認する助けにはできるが、それだけだ。
 知られていない新たな出来事を発見することや、一般常識に反した事実を確認するような機能は、不可能でないにしても期待するべきではない。

『NHKスペシャル』終戦特集ドラマ 15歳の志願兵

 2010年8月15日に初回放送された、NHK名古屋制作の終戦特集ドラマ。当時は見逃し、2026年8月の再放送を録画して視聴した。
www.web.nhk
 戦局の厳しさがあらわになった1943年、全国の旧制中学から志願兵をつのることとなった。学業が優秀な生徒をあつめるための旧制愛知一中では戦時体制との距離感があり、志願者がわりあてより少なかったが、学校は卒業生の軍人に時局講演会をさせて志願者を増やそうとした。その結果として生徒全員が志願兵として名乗りをあげたが、周囲の説得や検査の落第で、最終的にはわりあてられたくらいの志願者数に落ちついた。そのような史実にもとづくドラマ。


 空気に流されて全体主義にのめりこんでいってしまう危うさをテーマにしつつ、教師側の視点もはさんで誘導した責任も明確化していることが、現在に視聴すると良さを感じた。報道や国民にも責任があったという批判が、国体や軍部の責任を弱めがちな昨今、流された側の愚かしさだけでなく、流した側の愚かしさも明確化することに意義がある。
 このドラマの独自性として、軍国主義なりの視点で優秀な若者を動員することへの嫌悪や批判も水準的に描かれるが、それが軍国主義という枠組みでの批判でしかないと明らかにしていること。たとえば教師の会議において、優秀な一中生は前線でつかうより兵器を開発させたほうが役立つという反論などもあったが、その立論を維持することができない。日本を勝利させるという最終目標を懐疑することができないから、論理的には敗北するしかない状況において、非論理的な作戦を止めることができない。目先の犠牲だけでなく、全体的な枠組みがもたらす問題であることを端々で描いていた。
 眼鏡をかけている主人公が視力をあげようと努力しつづける姿が描かれ、それでも視力検査で引っかかった時、検査官に糾弾されたことも印象にのこる。志願しておきながらわざと見えないふりをしているという理不尽な説教。


 当時のNHKドラマらしく、ミニチュア特撮やデジタルVFXの見せ場はないが、総決起の若者エキストラを多数集めたり、EDの写真にもある手漕ぎボートを再現したり、見てて冷めないだけの絵作りはできている。東日本大震災前、民主党政権時代につくられた文化的な豊かさが画面から感じられてしまう。
 講演会の軍人の激にはBGMをつけずに雰囲気の詭弁と声の力強さだけで若者を誘導してしまう説得力があって良かった。一方、主人公の父でもある英語教師が若者たちを説得する描写は、湿っぽいBGMだよりで、ドラマ制作者の自信のなさが感じられた。ドラマとしては良くないのだが、制作側の迷いを想像すると味わい深さがある。