法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『メディアタイムズ』アニメは自由に表現できる?

たまたま録画していたEテレの小学校高学年向け教育番組。第16回は人形劇のアニメ化『がんがんがんこちゃん』のアニメ制作風景に密着。
www.nhk.or.jp
がんこちゃんが巨大化する場面を、絵コンテから作画し、さらに撮影効果を足して、より巨大感を表現していく過程を見せていった。2018年放映の2期で先行して公開されたカットと同じだった。
www6.nhk.or.jp
通常のアニメらしい作画段階でも、前景と後景を別けてスライドし、疑似的な回りこみで巨大感を表現。森の木々で足元を隠し、背後の月は逆に隠され、対比的にがんこちゃんのサイズも実感できる。
そして月光によって巨大がんこちゃんが逆光になることを依田伸隆監督が思いついて追加したアイデアのように見せていたが……最初に紹介された絵コンテをよく読むと、その段階で逆光という指示がある。
アニメはあらゆる要素が作者の意図と指示で描かれると素直に説明すればいいのに、いくらでもコントロールしなおせるかのように説明されると違和感がある。ひんぱんに後から演出を追加するのは、かつての出崎統監督作品くらいではないだろうか。


アニメの自由だからこそ過剰になりがちな暴力性と、その自由と規制の緊張関係など、メディア教育番組らしい観点も手短に伝えつつまとめていて、10分間で密度の濃い内容ではあったのだが……

『スター☆トゥインクルプリキュア』第49話 宇宙に描こう!ワタシだけのイマジネーション☆

日本初の有人ロケットがうちあげられる日、かつてロケットを置いていた湖畔に集まっていた星奈たちは、フワやララと再会する。そして怪人ノットレイの強化版が生まれる事故に、プリキュアとして対処を終えたが、それは……


村山功シリーズ構成の脚本に、宮元宏彰シリーズディレクターの共同コンテ*1。高橋晃作画監督で、成長したキャラクターの新たな姿も見せていく。
前半はあまり活躍できなかったメインキャラクターの父親を、ギャグタッチで描写。後半は前半との微妙な違いを比べるだけで、夢想に対応する現実を示すというミステリの謎解きに近い楽しさがある。約三十歳に成長した星奈たちの未来図が、すべて宇宙での再会へ収束する流れも美しい。大人になった星奈と羽衣がたがいの子供時代の髪型をしているのも、なかなか関係の重さを感じさせて良かった。

何より、恒例となった次作のプリキュアとの共演イベントと最終回らしい後日談ドラマを、リフレインする構成で両立したことに面白味がある。いかにも子供向けアニメのイベントらしく簡単に再会する前半と、大人になるまで時間をかけて再会を目指す後半。いつものプリキュアらしい描写と共演をエンタメとして処理しつつ、その幼いころの夢想を大人になって自らの力でたどりつくドラマもじっくり楽しめた。
ちなみに今年春の共演映画『映画プリキュアラクルリープ みんなとの不思議な1日』もタイムループ設定を使っているという。前半と後半のリフレインは次作『ヒーリングっど♥プリキュア』の設定がかかわっているのかもしれない。


最終回なので、全体の感想も書いておく。
おおむね良い意味で、過去最高に安定した作品だったと思う。全49話の半分以上となる26話分もの脚本をシリーズ構成がひとりで担当したのは、シリーズでは今作が初めてだ。連続脚本率の高さで印象深かった『Go!プリンセスプリキュア』で数えたことがあったが、実際は全50話で16話分だけだった。
プリキュア作品におけるシリーズ構成の脚本率 - 法華狼の日記
さらに異なる脚本家が担当しても、前回の結末を受けて物語がはじまる話数が多く、連続ストーリーらしさを強調していたのも特色だった。イベント的な最終回ですら、中盤に出ただけのゲストキャラクター「リンリン」を再登場させたほどだ。
ただし、かわりに突出したエピソードがほとんどなく、アクション作画も芳山優参加回くらいしか目を引かなかった。各プリキュアにも敵幹部にもまんべんなくエピソードがわりふられ、それぞれの課題もほとんど決着するぐらい偏りをさけたが、それゆえ1年間かけた物語のうねりやメリハリに欠けていた感はある。
娯楽として魅力があったのは個性的な異星人の設定。ファンタジックな外見のようでいて、ちょっとした理科的知識を反映したSF設定で、異なる生態の異なる社会をバラエティ豊かに展開した。『アニメージュ』の特集によると、異星と異星人の設定をふくめたデザインは、コンセプトアーティストとして起用された升井秀光の仕事だという。

Animage(アニメージュ) 2019年 09 月号 [雑誌]

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  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 雑誌

そうした異星人の姿をとおして、ここ数年かかげてきた多様性というテーマを、ビジュアルとして魅力的かつ説得的に作品化した。プリキュア側も、初めて人間に日本人とメキシコ人のダブルを配置。金髪に褐色肌のキャラクターとして、きちんと現代にむきあった存在感があった。

スター☆トゥインクルプリキュア vol.4[DVD]

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しかしあえて難をいえば、世界に多様な他者がいると示した段階にとどまり、そこからどのように向きあうかまでは描けていなかったとも感じる。通訳という天宮の進路選択もふくめて、難しさを知ってなお対話することの大切さは描いているものの、敵対する存在とは過去作*2と同じく敬して距離をとることが限界だった。
そもそも天宮が敵幹部に接したエピソードで描かれたように、プリキュアという強者が手をさしのべることは、相手を見くだしていることと表裏一体だ。ていねいにテーマを深めたことで、そうしたシリーズの枠組みそのものの限界に直面しつつ、その克服まではできなかった。
『スター☆トゥインクルプリキュア』第43話 笑顔への想い☆テンジョウ VS えれな! - 法華狼の日記
しかし逆にいえば、今作でシリーズの課題もうきぼりになったことで、それを超える新たな可能性も生まれた。次作以降でどのような回答が出るかに期待したい。

*1:他に座古明史と、演出処理も担当している川崎弘二がクレジット。

*2:代表的なのが『Go!プリンセスプリキュア』の最終回。 『Go!プリンセスプリキュア』第50話 はるかなる夢へ!Go!プリンセスプリキュア! - 法華狼の日記

『相棒 Season18』第13話 神の声

近くまで来たからと、特命係が奥地の牡丹鍋店にたちよったところ、休業していた。山岳信仰のため閉山しているためだという。しかしそれゆえ人が登らない時期の山で、地面にはりつけにされた変死体が見つかった……


脚本はシリーズ初参加の山崎太基。ちょっと前のこのドラマらしく、2時間サスペンスを1時間に濃縮したような作りで、オーソドックスに楽しめた。
謎めいた溺死から機械式トリックに、冤罪だった被疑者への偏見をめぐる村八分といった社会派テーマを組みあわせ、さらに米国の終末論者「プリッパー」を配置。いつもと違うロケーションに次から次へ新しいネタが舞いこんで、見ていて飽きない。


ただネタ密度が高いだけに無駄が少なく、何が手がかりなのかわかりやすいし、容疑者も簡単にしぼられる。行方不明の冤罪被害者や女性がプリッパーの地下室にでも隠されているのかといった可能性も途中までは感じたが、わりと単純な復讐劇で終わった。
ふりかえってみるとプリッパーの存在意義も、閉山している時期に山をこっそり動きまわることで、過去の事件を目撃して記録する意味しかなかった。社会から距離をとる思想のため、警察にうったえなかったことが後の復讐劇に発展したともいえるが……

「表現の不自由展・その後」が台湾でひらかれて、そこに少女像も展示されるという

台北当代芸術館で4月18日から開催予定と美術手帖が伝えている。
「表現の不自由展・その後」、台湾の美術館で開催へ。《平和の少女像》も展示|美術手帖

開催理由については次のようなコメントを得た。

「台湾には現在、アートや文化に対する検閲はない。しかし、アートや文学などはいまだに伝統的な考え方に制限されている。台湾の歴史を見ると、過去には様々な検閲が実際にあった。例えば日本統治時代の台湾では、特定の歌を歌うことができなかった。また台湾には白色テロの時代があり、戒厳令解除後でも一時的に様々な制限があった。今回の展覧会を通し、日本をはじめ、台湾やアジア、そして世界中の『不自由』を考察したい」。

《平和の少女像》の展示はほぼ決定しており、加えて「あいちトリエンナーレ2019」の不自由展から6〜7点を展示予定だという。さらに同展では、台湾において検閲された音楽や文学、美術なども展示。ワークショップやトークイベントなどを行い、台湾における文化的表現に対する検閲を考察するとしている。

 台北当代芸術館は、この展覧会のために諮問委員会を設立。「表現の不自由展」実行委員会とも連携しており、具体的な出品作品や作家に関しては、現在も日本側と検討している段階だという。

芸術館側の回答には、近年に独力で民主化を達成した国だからこその自負と、歴史を見つめようという意思を感じる。
日本統治時代の検閲への言及は、芸術館が日本占領時代の小学校を転用している歴史も念頭にあるのかもしれない。


ちょっと興味深いのが、はてなブックマークで支持するようなコメントがならぶなか、記事本文を読んでいないとしか思えないite氏*1はてなスターを集めていること。

b:id:ite 中国で禁止された表現が並ぶなら面白いが、日本でやったのと同じなら単なる反日プロパガンダだろう。本当の表現規制と人権侵害が中国にはある。そこに日本の左翼が出て行っても相手にされるとは思えない。

しかし先に引用したとおり、日本で開催された時の展示物も展示予定だが、台湾で検閲された作品も展示されると明記されている。
また、美術手帖によれば芸術館側が諮問委員会を設立し、日本の不自由展実行委と連携しているとある。台湾美術関係者が主体的な存在と思えないのはなぜだろうか。
そもそも政治体制が異なる台湾で、中国で禁止された表現がならばないと面白がれない意味がわからない。かつての国民党と同じような、ひとつの中国論者なのだろうか。


とはいえ台湾では攻撃されていない表現が展示されるのは、あくまで参考の意図なのだろうと思ったが……そういえば1年半前に異なる慰安婦像が敵意を向けられた事件もあった。
慰安婦像を蹴った疑いの日本人男性、移民署が法的措置検討/台湾 | 政治 | 中央社フォーカス台湾

内政部移民署は10日、南部・台南市に設置されている慰安婦像を蹴った疑いが持たれている日本人男性について、蹴ったのが事実だと判明すれば「法的措置を取る」と発表した。また、すでに男性が器物損壊罪で刑事告訴されているのを受け、司法機関の調査と裁判の結果に応じ、男性を入国禁止またはビザ(査証)なし入国を適用しないブラックリストに記載する方針を示した。

これに限らず、慰安婦をいたわる記念碑を抑圧しようとする日本の政府や自治体の動きは各国でおこなわれている。
日本が愚かな攻撃をつづけるほど、どの国や地域でも少女像は不自由展にならぶべき作品になってしまう。
本当に痛ましく心苦しいことだ。

保守系団体「日本世論の会」のLGBTに対する態度をメモ

林田有香氏のnoteで、2018年に書かれた日本共産党批判が注目を集めている。時期的に見て、『新潮45』での杉田水脈氏の主張がはげしく批判された*1ことへの反駁だろう。
LGBT問題 ホモフォビア(同性愛憎悪)政党だった日本共産党の不都合な真実|林田有香|note

 最近こそ、LGBT問題に取り組む姿勢を見せる日本共産党。しかし、日本最大のホモフォビア(同性愛憎悪)政党だった過去をいまだに総括していません。
 他党の議員を批判するより、まずは自党の歴史を顧みるべきでしょう。日本共産党の欺瞞に満ちた姿勢には憤りを感じます。

指摘されている問題は、1976年に共産党議員が犯罪を起こした時、きちんと機関紙で内部批判したまでは良いのだが、そこで同性愛者という個性を原因のように記述したというもの。たしかに批判されてしかるべき内容である。
近年の例でいうと、2015年に自民党の武藤貴也議員がスキャンダルを報じられた時、しばしば未成年買春よりも同性愛が注目された問題を思い出させる。


なお、はてなブックマーク*2でも指摘されているように、2020年に入って党大会などで公式に誤りを認めて、謝罪した。

もちろん一度の謝罪で終わるわけではなく、これからの行動も反省にふくまれる。これからも過去の過ちを見つめつづけてくれることを期待したい。


さて、林田氏は「日本世論の会」という団体の雑誌に寄稿しているという。調べてみると相当な保守派団体で、なぜ林田氏が寄稿しているのかよくわからなくなった。
何しろ団体本部のブログで、Change.org同性婚反対の署名をはじめたという報告や、社会の片隅でひっそり生きることをLGBTに望むという主張が掲載されているくらいだ。
同性婚に反対する側のネット署名 サイト | 日本世論の会 本部

同性婚推進派のネット署名サイトがありますが、やっと反対する側のネット署名
サイトを立ち上がりました。

LGBT(性的少数者)への配慮ってそんなに大切? | 日本世論の会 本部

レズ、ホモ、性同一性障害など、これらLGBTは昔からいた。彼らはこれまで社会の片隅でひっそりと生きてきた。それでいいのではないか。もちろん彼らを差別したり排除したりすべきではないが、特別に社会で認知する必要などあるのだろうか。

また、日本世論の会グループメールでは、「反日メディアの横暴を許すな!! 杉田水脈議員への言論封殺は民主主義を破壊する」なる主張が広められていたようだ。
みんなの経済新聞:LGBT杉田水脈を守れ! - livedoor Blog(ブログ)

月刊誌新潮45に掲載された自民党杉田水脈衆議院議員の寄稿文に、朝日、NHKなどの反日メディアが発狂しています。

日本共産党日本世論の会の、はたしてどちらが欺瞞に満ちた姿勢と呼ぶにふさわしいだろうか。