日本へ舞台を変えて『夏への扉』を実写化するという報道を受けて、SF小説として欠点が多いと批判する意見と、それゆえ初心者には良いという意見が出てきている。
『夏への扉』を勧めるのは素人騙してSFにオルグするため
重要なのは作者がハインラインだという事だ。
『夏への扉』のあとに、間違って同じ作者の『異星の客』(※1)とか『悪徳なんかこわくない』(※2)みたいなヤバげなSFを手に取って色々目覚めてしまうかもしれないだろ。
それならば前世紀に実写ドラマも実写映画もヒットして、今世紀もオリジナルストーリーでアニメ映画化されてヒットを飛ばした『時をかける少女』も、同じ作者のSFに手をのばしてもらえたはずではないか。
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そもそもアニメ版『時をかける少女』の結果を思えば、『夏への扉』も映像化スタッフの仕事が追いかけられ、原作者の別作品には必ずしも食指がのばされない結果になるように思える。
事実として、同時期に同じ制作会社で同原作者の別作品をアニメ化した『パプリカ』ですら、高い評価は受けつつもヒットとはとうていいえない結果に終わっている。
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ライトなSF作品を気にいったファンは、近いテイストの作品を欲していくことが多くて、同じ原作者の異なるテイストの作品に興味がいくことは少ないのではないだろうか。
初心者をタイムスリップSFからハードSFにひきこむなら『ドラえもん』の間口の広さで充分だろう。短編「ドラえもんだらけ」の複雑なプロットと毒気のあるドタバタギャグは読みごたえがある。
小説という媒体で、ライトなドラマでひきこんで小難しい設定をときほぐす楽しさを理解してもらうなら、『マイナス・ゼロ』や『タイム・リープ あしたはきのう』などが古典として良いのではないか。