法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?』二月公著

番組に穴があかないよう、突発的にはじまった声優ラジオ。たまたま別事務所ながら同じ高校にかよっていることに着目され、若手アイドル声優ふたりが起用された。
しかし急造コンビとなったふたりは、プライベートではキャラクターが異なるだけでなく、対立するスクールカーストにいた。さらにふたりの正体に気づく者が……


第26回の電撃小説大賞を受賞し、シリーズ1作目となった現代青春小説。コミカライズも一巻の途中まで連載中。

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ひとことで説明するなら百合営業百合。
女性アイドル同士が仲良くする姿でファンを楽しませ、その裏側ではケンカをくりかえしながら、さらに内心ではたがいを尊ぶ。さらっと描かれたツイッター漫画でバズりそうなストーリーを、読みやすい文章で手なれた小説にしあげていた。
パートナーの突発的な言動にちゃんと前振りがあって納得できるし、ふたりの声優キャリアの格差でシリアスな青春職業ドラマとしても楽しめる。周辺の大人も有能や無能なだけではない、それぞれの思惑と能力の限界をもって別々の方向から主人公を動かしたり助けたりする。
やっかいなファンを短い出番で多様に書きわけ、それが終盤で少しひねった展開になったことも感心した。セクハラリプライを嫌がる声優側と、それを面白いネタと思って公開するファンのコントラストが強烈でいい。
最終的な大事件の解決にあたって主人公が選んだ手段も、まっすぐで無茶だが青春らしい。結果として作品のコンセプトを終わせらてしまい、続刊をどうするのかとも思ったが、2作目は解決手段の悪影響に向きあう内容らしく、なるほどと思った。

声優ラジオの表側を顔アイコンのかけあいで表現したり、ライトノベルという媒体もうまく活用されている。


ただ、問題の大事件は真相がすぐ見当がついてしまって、終盤はオチを確認する気分で読みすすむことになった。伏線から真相が読めても、主人公が選択をしてパートナーに影響をあたえるドラマで読ませはするのだが。
もうひとつ、イラストで声優モードと学校モードの姿があまり変わらないことも、文章の再現としてイマイチに感じたし、ギャップがきわだたない惜しさがあった。
最近はオタク向けギャル作品も少なくない。もっと化粧がケバかったりヤボったかったりして、さらにウィッグなどで髪型や髪色を変えてもライトノベルとして成立したと思うのだが……