法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『小説 魔法つかいプリキュア! いま、時間旅行って言いました!?』村山功著

魔法学校の創立祭の準備をしていた主人公カップルのところに、敵幹部オルーバが襲来。それぞれ家族と葛藤していた主人公たちは、過去に戻って同世代の親の視点を知る……


ドラえもん』の「プロポーズ作戦」*1を思わせる、2017年10月出版の児童小説。2016年2月から2017年1月にかけて放映されたTVアニメを、シリーズ構成がノベライズした。

他のシリーズノベライズは、放映終了から数年たって成長した読者に向けているためか、やや高年齢向けな印象がある。
しかし終了から半年のこの小説は、あまりアニメ本編と雰囲気が変わらず、語り口も内容も低年齢向けな印象だ。


内容も後日談ではない。後半に登場してさまざまな作戦を展開した敵幹部の、作品の主題をほりさげつつも本筋を動かさないくらいの作戦のひとつを描いている。良くも悪くも本編でそのまま映像化されたとしても違和感が無さそう。
それでいて主人公カップルのドラマこそが最重要*2だったアニメ本編と異なり、あとがきで著者が語っているように描ききれなかった家族の物語を補完する内容となっている。放映終了後に出す意味は感じられた。
親子関係だけでなく、序盤で描かれた創立祭の光景が過去に飛んだ主人公たちによって作られていく展開や、主人公たちが正しい時間に戻そうとして失敗していくくだりもタイムスリップSFのポイントを押さえている。それでいて、決意によって主人公の今後の行動がかたまり、時間が本来の流れに戻っていくことが確定していくところに、プリキュアらしさもあった。
物語の展開上、主人公ふたりの仲を見せる局面は少ないが、息をぴったりあわせて魔法をつかう場面は印象的だ。時間を変えるポイントとなる料理で、食材のひとつが「愛を示さなければ」*3美味しいハート型にならないという設定があるのだ。


ただ残念ながら、あまり小説としては感心できなかった。
幼い登場人物がパートごとに一人称を分担するのはいいとして、プリキュアならではの戦闘シーンはひたすら技の名称をならべるばかりで、動作も脚本家らしく説明的。
ただ日常バートはそつなく書かれていたとも思うし、公園で落ち葉に寝そべる象の影などは印象的だった。良くも悪くもOVAで見たかったな、という印象を覆すほどではないが……

*1:『ドラえもん』クモノイトン/プロポーズ作戦 - 法華狼の日記

*2:主人公カップルをしっかり別離させてから大人になって再会させた終盤が、敵を倒すことがクライマックスではない作品の個性を象徴している。『魔法つかいプリキュア!』第49話 さよなら…魔法つかい!奇跡の魔法よ、もう一度! - 法華狼の日記

*3:123頁。