法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

スティーブン・スピルバーグ監督が南カリフォルニア大学でのスピーチで、イスラエルの被害にふれるなかでガザ虐殺にも初めて言及したらしい

 まだ日本語の記事にはなっていないようだが、3月25日にCNNが報じて、スピーチ全体も掲載している。
Steven Spielberg: ‘The echoes of history are unmistakable in our current climate’ | CNN
 言及は下記の部分で*1、あくまでイスラエルの被害を重視した流れで「無実の女性と子供」にかぎった一言ではある。

We can rage against the heinous acts committed by the terrorist of October 7 and also decry the killing of innocent women and children in Gaza. This makes us a unique force for good in the world and is why we are here today to celebrate the work of the Shoah Foundation, which is more crucial now than it even was in 1994.
私たちは、10月7日のテロリストによって犯された凶悪な行為に対して激怒することができ、またガザでの無実の女性と子供の殺害を非難することもできます。これが私たちを世界で唯一の善のための力にしているのであり、それが私たちが今日ここに来て、1994 年当時よりも今ではさらに重要になっているショア財団の活動を祝うためにここに集まっている理由です。

 ずいぶん遅いし、まだ足りないし、それでも待っていた。最初に予想した「中立」的に平和をもとめる内容にとどまっているが、それでも現状では意味がある。
スティーブン・スピルバーグ監督が、ハマスの蛮行のみ批判する声明を出したという報道に悩んでいる - 法華狼の日記

 もともとショアー財団はユダヤ人の被害記録に限定せず、CNNが言及しているカンボジアルワンダの他、アルメニアの虐殺なども対象にしている。そこにパレスチナをくわえない理由がどこにある。

 ユダヤ人の被害記録のために設立したショアー財団が評価された状況での発言という重みもあるし、スピーチ全体を見ればユダヤ差別を問題視した場面でアラブ差別にも言及したりしている。


 さらに少し前のことだが、絶賛*2したホロコースト映画『関心領域』のジョナサン・グレイザー監督がアカデミー賞のスピーチでガザ虐殺を正面から批判*3したことについて、否定するオープンレター*4にも参加しなかったらしい。


More than 450 Jewish creatives, executives and Hollywood professionals have signed an open letter denouncing Jonathan Glazer’s “The Zone of Interest” Oscar speech.
Jonathan Glazer's Zone of Interest Oscar Speech Denounced in Letter

 ここまでの沈黙や一方的な言及、そして現在の立場を思えば、もちろん現状でもスピルバーグへの批判はありうるだろう。
 それでも原則としての平和をうったえる発言には意味があるし、社会の側が意味をもたせなくてはならない。

*1:日本語訳は、google翻訳を手なおしせずにつかった。

*2:スピルバーグがベスト・ホロコースト映画と大激賛!『関心領域』 – VOID

*3:アカデミー国際長編映画賞「関心領域」の英監督、ガザでの戦争について声明 受賞スピーチで - BBCニュース

*4:ちなみにリンクされたページの下部にある署名者の末尾によると、更新前は偽名がひとりふくまれていたらしい。その良し悪しはさておき、オープンレターで厳格に本人確認をおこなうことは世界的にも一般的ではないようだ。 不正署名されたオープンレターと不正署名したリコールを同列で考えるのは、いくつもの意味で間違っている - 法華狼の日記