法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない?』二月公著

アイドルらしからぬ裏の顔を出すことでトラブルを乗りこえ、素顔に近いキャラづけで再出発した声優コンビ。しかし炎上した結果として声優ラジオの聴取率こそ上々だが、声優としての本業は停滞して、先輩声優にも批判される……


2月に出版された大賞受賞作品につづき、早くも6月に出たシリーズ2作目。すでにシリーズ3作目も11月に発売されている。

1作目の感想に対して教えていただいた同期銀賞作品もそうらしいが、百合ライトノベル電撃文庫でも多くなっていることに時代の変化を感じる。


それはさておき、1作目につづいてライトで読みやすい。さまざまな疑問点は作中で指摘が入るか伏線として回収されるし、敵味方どちらも大人は未成年の保護者としてふるまう。その保護と裏腹な束縛に主人公コンビが反抗していく展開も、オーソドックスで受けいれやすい。
意外な良さとして、1作目の結末で「ウラオモテ」のコンセプトが終わってしまったかと思いきや、素に近いキャラづけもまた演技の一種という問題提起がされた。それが不仲営業を悲しむファンだけでなく、無意識に主人公コンビの負担にもなっていたことが印象深い。


しかし、周囲に迷惑をかけてでもパートナーを救った1作目の事後処理として物語が展開していったのに、今回のクライマックスではファンと地域にまで借りをつくる展開になったことには首をかしげた。
1作目の無茶は何度もできないだろうからこそ爽快感があったのに、さらに大規模にリフレインされても感動しづらい。ファンが集結して何が起きるのかも1作目以上に見えすいていて、リアリティがない*1のにサプライズもない。
派手なできごとを終盤に配置する効果もわかるが、クライマックスのファンの集結は中盤に配置して、中盤に描かれたファンとの交流会を終盤に配置するべきだったと思う。この構成なら、ファンの集結が交流会での謎解きの伏線にもなるし、ずっと地に足をつけたかたちで物語を終わらせられる。何より、素に近いキャラ付けとは何なのかという声優ラジオらしい問題提起が、交流会で明かされた真相とともに、ぐっと印象に残っただろう。


また、1作目で疑問に思った挿絵のイマイチさが、さらに悪化していたことも残念だった。口絵のカラーページは悪くないが、モノクロページは純粋にクオリティが厳しい。
『声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?』二月公著 - 法華狼の日記

イラストで声優モードと学校モードの姿があまり変わらないことも、文章の再現としてイマイチに感じたし、ギャップがきわだたない惜しさがあった。

矢継ぎ早に出版されたためかもしれないが、モノクロページもカラーページくらいの労力を使ってほしいし、それだけの単価ははらってほしい。この担当イラストレイターは線画だけで魅力を出せるタイプではない。

*1:作中の会話から1作目以上の無茶と自覚していることはわかるし、多人数の衝突によって関係者のほとんどが求めず実現したように構成はしているが……