法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『友だちをやめた二人』今井福子著

幼馴染の七海と結衣は、上級生になった今は違うグループにわかれていた。
それでも人気者の結衣はグループの垣根をこえて七海に助言してくれる。
七海はかすかな違和感をいだきながらも毎日を楽しくすごしていたが……


2019年8月に発売された児童文学。生と死を描く教訓的な物語にのせて、百合の味わいがある。

友だちをやめた二人 (文研じゅべにーる)

友だちをやめた二人 (文研じゅべにーる)

念のため、明確に同性愛を描いているわけではない。タイトルは友達から恋人になるという意味ではない。
しかし百合心中ならぬ無理心中を口走ったり、冗談めかして愛の告白がおこなわれたりもする。
この恋人面な関係性なんて、『まちカドまぞく』なんかでよく見たぞ*1

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単なる友情にとどまりたくないという重さを表現するにあたって、恋愛を連想させる描写が選択されたという感じか。


捨てられた動物への共感を描きつつ責任の重さや大切さに向き合ったり、死者を記憶する大切さを教えながらスピリチュアルに一線を引いたり、幼い読者を想定しているからこそ慎重さを感じさせる筆致も興味深い*2
アクセルをふんで問題を突きぬけるのではなく、ブレーキをかけるように配慮しているので、娯楽としてイマイチはじけていないのだが、その不器用さもふくめて好感をもてる内容だった。

*1:7頁。

*2:近年の表現への批判と反発を思うに、こうした配慮はもっと高年齢の読者にも必要なのかもしれないな、という気持ちになったりもした。