20世紀初頭のロサンゼルス。その一角に居をかまえる私立探偵と助手の女性コンビは、まともな人間ではなかった。オカルト的な意味で。そして立ちむかう事件もまた、人間の社会から外れたものだった……
2015年に出版され、後に文庫化された幻想怪奇連作短編。レトロSFやレトロ特撮への愛好が前面に出つつ、作者にしては人間描写はライトでクセのない娯楽作品になっている。
作者は過去作品で何度かレズビアンやバイセクシャルを登場させているが、今回の女性コンビはそういう関係ではない。かといって『ダーティペア』のように男好き描写が強烈なわけでもなく淡白なので、逆に百合っぽい解釈もしやすい。
1話目は幻想怪奇な設定を活用した特殊設定ミステリ*1として標準的で悪くない。しかし以降はミステリ的な推理や意外な真相よりも、舞台となった時代と場所を意識した特撮趣味やB級ホラーへと1話ごとにジャンルを変えていく。
各話ごとにネタはまとまっているのでジャンルが変わっても読みやすいし、舞台設定にすぎないはずの女性コンビの来歴もしっかりSFホラーとして物語にくみこんで小説としてまとまっているが、2話以降も謎解きミステリとしての枠組みを守るほうが好みではあった。