法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

マンガ

「ジェンダー」という台詞と、漫画の細部に宿る神

漫画の一幕を抜粋するタイプの画像広告は、耳目をひく刺激的な場面をピックアップするあまり、作品のニュアンスをゆがめることがまれによくある。 togetter.com それが広告にかぎった話ではなく、楠本まき氏の下記インタビュー記事に対しても、どうやら引用…

「バイアス」が一般的に悪いものだという合意すら今のインターネットでは難しいのだろうか

漫画家の楠本まき氏に対する下記インタビュー記事の件なのだが。 「ジェンダーバイアスのかかった漫画は滅びればいい」。漫画家・楠本まきはなぜ登場人物にこう語らせたのか | ハフポスト まず、主題となっている「ジェンダーバイアス」については、編集部の…

『ドラえもん』初期の藤子スタジオについて、えびはら武司氏の証言

東洋経済オンラインに『ドラえもん』を主軸としたインタビュー記事が掲載されていた。 toyokeizai.net 記事タイトルにある「黒歴史」となった日テレ版アニメは、すでに多くの先行研究があるし、直接のタッチはしていない原作サイドの証言なので目新しい情報…

『オバケのQ太郎』の「国際オバケ連合」が封印された理由は「黒いオバケが出てる、それだけ」ではない

まず、『ちびくろサンボ』が一時期に封印された理由は「黒人を黒く描いたこと」ではない、と指摘するツイートがあった。 「ちびくろさんぼ」が一時、入手できなくなった事件は残念な話だと思ってますが(既に復活して普通に買えますけど)、あの時問題になっ…

『ドラえもん』の「ジャイアン」が芸名と「推察」するツイート

政治学者の鈴木一人氏がツイートをしていた。 ジャイアンは自分のリサイタルショーも開催して「ジャイアン」の名でやっているから、きっと芸名なんだろうと推察。— Kazuto Suzuki (@KS_1013) October 21, 2018 タイムラインへの反応なのか思いつきをつぶやい…

「お前がそう思うんならそうなんだろう」と「シャブ山シャブ子」の一人歩き

「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」とは、漫画『少女ファイト』1巻においてメガネの青年が語った言葉だ。 少女ファイト(1) (イブニングコミックス)作者: 日本橋ヨヲコ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/28メディア: Kindle版こ…

ライトノベル表紙群や『ドラえもん』をめぐる、表現の部分否定と全否定

『ドラえもん』のトロフィーワイフ問題について - 法華狼の日記 chounamoul氏のツイートだが、娘の発言を紹介するかたちは気になるが*2、ひとつの感想として理解はできるものだ。 *2:これ自体がパターナリスティックなふるまいではないかという注意がほしい…

『王様ランキング』は、キャラクターの印象が好転してもダメなところはダメなままなのがエライと思う

ここ数日で一気に注目をあびたWEB漫画。どこを経由して読みはじめたのか忘れたが、私自身もそんな流れで知り、期待しない状態からひきこまれて、一夜で最新話まで読み通してしまった。 王様ランキング / goriemon - マンガハック | 無料Web漫画が毎日更新 古…

『ドラえもん』のトロフィーワイフ問題について

テーマのうまくまとまっていないTogetterが話題になっているのを見かけた。 何故しずかちゃんは出木杉くんじゃなくてのび太を選んだんだ“現実的に”有り得ない!!! - Togetter window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[…

TVアニメ『ドラえもん』のLGBT描写について

『ドラえもん』の原作がはじまったのは1969年。作品を読めば、そこかしこに時代の限界がかいまみえる。 都合のいい結婚相手を求めて時間改変しようとする根幹設定からして、現代の感覚では通用しないだろう。 同時に、連載をつづけながら世界観のアップデー…

こうの史代が高橋葉介に影響を受けているという説

高橋葉介セレクション 夢幻紳士作者: 高橋葉介出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/01/01メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る 特に、まだ絵柄がかたまりきっていないデビュー作の『街角花だより』がわかりやすい。 街角花だより (ア…

中国のポスターデザイナーによるドラえもんパロディ絵が興味深い

黄海という人物による映画『STAND BY ME ドラえもん』のポスターで、中国の古典パロディになっている。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; j…

『サザエさん』の創作背景をうかがわせるエピソードをふたつメモ

西新に疎開した長谷川町子の住居裏に、頭山満の家があったらしいという2017年のツイート。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.create…

「ゴールデンカムイにポリティカルコレクトって言葉使うの違和感ある」ことの説明として出された「一番分かりやすい」ツイートが、私には一番分からない

「ポリコレへの配慮」と「マンガを面白くするための配慮(臭み抜き)」は別物だよという話 - この夜が明けるまであと百万の祈りで引用されていた、5chneewei55氏による一連のツイートなのだが、読んでいて首をかしげた。 window.twttr = (function(d, s, id)…

『BILLY BAT』

見える人々をそそのかす、カートゥーン調キャラクターの幻「ビリーバット」。同じ姿の2体がいて、どちらかが人類を誤った方向へ導こうとしている…… ひとつの漫画キャラクターをめぐる架空の現代史を描いた浦沢直樹作品。2008年から2016年にかけて断続的に連…

『大長編ドラえもん のび太と夢幻三剣士』には、「VRMMO」の先駆としての価値もある

映画化を前提として1冊で完結するよう連載された『大長編ドラえもん』シリーズ。その14作目として1993年から執筆されたのが、『夢幻三剣士』だ。 大長編ドラえもん14 のび太と夢幻三剣士 (てんとう虫コミックス)作者: 藤子・F・不二雄出版社/メーカー: 小…

『デビルマン』で、漫画版にだけ登場していた飛鳥了と、TVアニメ版とでは人格も立場も違う不動明の、共通項に気づいた

あるていどまでネタバレになるが、まず主人公の不動明について。 TVアニメ版では悪魔が人間になりかわったもの。人間の女性を愛したことで、仲間の悪魔に敵対することを選んだ。 漫画版では、人間が悪魔と融合しつつ人格を残したもの。同じ立場の元人間とと…

「アニメで最も衝撃だったシーン」といえば『キテレツ大百科』のアレ

下記の匿名エントリが注目されている。 アニメで最も衝撃だったシーン まどマギ3話やがっこうぐらし1話(あとめぐねえ)が定番なんだろうが俺はあえてサムライフラメンコ7話を挙げたい。 はてなブックマークでも少なくない作品があげられているが、いくつかは…

ドラミって情緒は知っているし教えることもできるのに、出力される行動には情緒がないよね

それでもアニメ化されるとキャラクターにふくらみが多少は生まれる。ドラミ自身が楽しむような描写は、アニメオリジナルストーリーの『映画ドラえもん のび太のパラレル西遊記』では見られる。 だからこそ、少ない頁数につめこむ傾向の原作漫画を読むと、合…

『世界まる見え!テレビ特捜部』世界は不思議であふれてる! ウソかマコトかSP

今年最後の放送は2時間SP。目を疑うような情景や、まだ真偽のはっきりしない研究が次々に提示されて、情報バラエティとして素直に楽しかった。 「詐欺師の意外な手口」は元詐欺師が詐欺を実演。ふたつのトランクをホテルへあずけて、しばらくフロントとやり…

「美しい日本の憲法をつくる熊本女性の会」が『ドラえもん』の比喩をつかっていた報道について少し

熊本大学教授の高原朗子氏へのインタビューを産経新聞がのせていた。 結成2周年を迎えた「美しい日本の憲法をつくる熊本女性の会」 熊本 - 産経ニュース 私は憲法学者でなく、心理学者です。法律論や条文解釈を研究しているわけではありません。 インタビュ…

連載が打ち切られた漫画家のツイートを見て、過去のツイートを思い出す

「知るかバカうどん」というペンネームで活動している漫画家のbakaudondon氏が、一般誌での初連載が打ち切られたと報告していた。 読者アンケート人気1位にもなったメンヘラJKの恋愛描く『君に愛されて痛かった』が打ち切り 理由がひどすぎて作者荒れる - To…

難民に裏があるアニメを、みんなもう忘れたのだろうか

id:hokusyu氏の下記ツイートに対して、そんな作品を見たことがないというリプライばかりついている。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js …

暑さと寒さをめぐる、のび太なみの頭脳の匿名記事

冷房が効きすぎて寒い なんでメンバーの過半数が上着着てるのに冷房止めな.. なんでメンバーの過半数が上着着てるのに冷房止めないんだよ馬鹿か 上記に対する下記の返答に既視感があった。 寒いのは厚着をすればどうにかなるが、暑いのはどうにもならんでし…

CampFireのクラウドファンディングで制作して、夏コミに出していたプロフェッショナル

OVA『エイリアン9』やTVアニメ『灼熱の卓球娘』の監督で知られる入江泰浩氏が、漫画を制作してコミックマーケットに参加していることを、知っている人は知っている。 https://camp-fire.jp/updates/25399 来週日曜日のコミケ三日目で販売です。 皆様にはメモ…

そもそも藤子F作品って『ドラえもん』に限らず、集団に従属することへの不信感があるよね

もちろん大日本帝国に対しては、戦時下において抑圧された子供として育った意識もあるし*1、漫画文化への抑圧を知っている手塚治虫*2を師としてあおいだ意識もあろう。 戦争そのものの無意味さという観点からは、あえて超常の存在による日本軍の勝利を描いて…

「スパゲッティの缶詰?『食キング』のナポリタンかな?」

ニュージーランドのビル・イングリッシュ首相が、スパゲッティとパイナップルをのせたピザをFacebookに投稿して、国論が二分に割れているという。 ニュージーランド首相の衝撃的ピザが国を二分 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャル…

『五色の舟』

十五年戦争の末期、異形の肉体をもった五人が、見世物小屋の一座として芸を売っていた。 街中に係留したボロ舟で生活し、懇意の医師から診察される日々。表向きは興行が許されない時代だが、それゆえ秘密裏に資産家から芸を求められ、世間よりは暮らしに余裕…

青林工藝舎はお家騒動で飛び出した分家なので、青林堂に残って守ろうとした本家からはわだかまりもあるはず

かつて特殊な漫画出版社として知られていた青林堂を、パワハラを受けた社員とユニオンが訴え*1、証拠として現社長らの録音が報じられた。 社員をスパイ呼ばわり 青林堂の社員がパワハラ訴え暴言音声を公開【追記あり】 青林堂はカムイ伝などを連載した「伝説…

『火垂るの墓』や『はだしのゲン』に比べれば、まだ『この世界の片隅に』は“よくある反戦アニメ”に近い

まだアニメ版の『この世界の片隅に』は観れそうにないが、産経記事*1の監督コメントで『火垂るの墓』が好意的に言及されたこともあって、とりあえず原作準拠で考えをまとめておく。 【スクリーン雑記帖】「この世界の片隅に」をめぐる“国旗”論争 政治的意味…