ニュージーランドのビル・イングリッシュ首相が、スパゲッティとパイナップルをのせたピザをFacebookに投稿して、国論が二分に割れているという。
ニュージーランド首相の衝撃的ピザが国を二分 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
「昨晩、家族にディナーを作りました。ピザの上に缶入りスパゲティを乗せるのが『アリ』だと思う人はいいねを!」とのコメントと共に、同首相はお手製のピザの写真とドヤ顔の自撮り写真を投稿したのだ。
Facebookでは、「こんなの投稿するなんて信じられない。ピザ通を気取るわけじゃないけど、人生で一度くらい本物のピザを食べてみたことあるんだよね?」という反対意見や、「あなたの政策は支持しないけど、ピザにスパゲティなら支持できる」などの賛成意見が次々と書き込まれ、意見は真っ二つに分かれた。中には、「ビル、申し訳ないけど、ピザにスパゲティを乗せるような人は、我が国を治めるに適さない。選挙の時は私の票をあてにしないで」や、「次回の選挙では(最大野党の)労働党に投票しようかな」など、家族のために作ったピザが、今年9月に予定されている総選挙にまで影響しそうな勢いだ。
ニュージーランドのイタリア大使館も反応したという。
ピザにスパゲティとパイナップル! NZ首相に批判殺到 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
「缶詰のスパゲティとパイナップルをトッピングした首相のピザへの『ベンデッタ(復讐、ふくしゅう)』」とのメッセージとともに、ニュージーランド人が愛してやまないデザート、パブロバを果物の代わりにサラミで覆いつくした写真をツイッター(Twitter)に投稿した。
うらやましいくらいに平和な話ではある。
ちなみに、2月にはアイスランドの大統領がパイナップルはピザにふさわしくないと主張していたらしい。逆説的に、そういうレシピが存在することをうかがわせる。
「スパゲッティ入りピザ」を作ってみたよ。 ニュージーランド首相の手料理が波紋 | ハフポスト
アイスランドの大統領が、ピザのトッピングとしてパイナップルは相応しくないとする強硬な立場を示し、世界を動揺させた。しかし、このピザに対する態度は、Facebookに自家製ピザの写真を投稿したニュージーランドのビル・イングリッシュ首相ほど、際立ったものではなかった。
ひとつ興味深いのは、ピザにのせたスパゲッティが缶詰のものだということ。
トマトソースにつけこんで柔らかくなった麵として、英国で定番の食品らしく、検索するとデイリーポータルZの記事がひっかかった。
デイリーポータルZ:スパゲッティの缶詰があった
缶詰の入った袋には、友人からのメモも一緒に入っていた。
・イギリスでは人気があります
・低所得層では主食になることもあります
・一缶60〜200円ぐらいで割安です
・イギリス人しか食べないと言われています
この記者の口にはあわなかったようだが、その感想を読んでいて、ふいにグルメ漫画『食キング』第77話で主人公がつくったナポリタンを思い出した。
食キング 9 - 土山しげる | マンガ図書館Z - 無料で漫画が全巻読み放題!
伝説の料理人としてさまざまなレストランの経営立て直しを請け負う主人公が、若手の天才料理人とスパゲッティで対決。主人公はナポリタン、天才はカルボナーラを作るという展開。
その内容は読んでいただくのが早いが、したり顔で料理人たちに説教してきた主人公が、ビックリするような惨敗をきっする。その評価も「こんなケチャップベトベトのナポリタン食われへんで!!」「コンビニのスパゲッティの方がなんぼかマシやで!」という代物で、超人的な主人公に親近感をもたせるというよりも、それまでのエピソードの説得力が一気に失われてしまった。
ただ同時に、その美味しくないナポリタンが正しい「喫茶店のナポリタン」だという主人公の認識は間違っておらず、ただ時代の流れにとりのこされていたことが第79話で明かされる。もちろん時代の流れに取り残されたこと自体が立て直し請負人の設定に反しているとは思うが……ともかくこの『食キング』を読んでいたので、かつてスパゲッティの缶詰を好んでいた世代には素朴な美味しさがあるという報道記事に、不思議な説得力を感じたという話である。