まず、『ちびくろサンボ』が一時期に封印された理由は「黒人を黒く描いたこと」ではない、と指摘するツイートがあった。
「ちびくろさんぼ」が一時、入手できなくなった事件は残念な話だと思ってますが(既に復活して普通に買えますけど)、あの時問題になったのは「黒人を黒く描いたこと」じゃなくて、主に「サンボ」というのが蔑称じゃないか?という話でしたよね。 https://t.co/Ofx5TW3R5V
— Dr. RawheaD (@RawheaD) 2019年1月27日
復刊を訴える書籍は当時に読んだが、たしかに否定も肯定もさまざまな理由が語られていた。
- 作者: 径書房編集部
- 出版社/メーカー: 径書房
- 発売日: 1990/08/01
- メディア: 単行本
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黒人のカリカチュアとして主に批判されていたのは、口の大きさや唇の厚さなど。「サンボ」という言葉が、書かれた時点とは異なる文脈をもった問題なども論じられていた。
それとは別に、『ちびくろサンボ』という作品そのものが著者の表現とは異なるかたちで出版流通し、それが低評価をまねいたという指摘もある。
対する反論として、「黒人を黒く描いたこと」そのものが抗議されて表現が封印された事例をあげようとするツイートがあった。
おはようございますm(__)m
— ヴァレーリエ・オスカル(職業:とりあえず浪人。変態紳士志望) (@valerievopw) 2019年1月27日
何が笑えないって、あたしが生まれる前の、アニメ『オバケのQ太郎』の「国際オバケ連合」というお話。
世界中のオバケが集まるんだけど、黒いオバケが出てる、それだけで、黒人差別だと難癖つけて、放送できないようにしましたからね。あの家族団体は。たった3人ですよ。
生まれる前のことと書いているので、おそらく伝聞を記憶違いしているだけだろうが、リプライツリーには同意があるだけで反論がない。
単純な話として、「国際オバケ連合」では多様な人種になぞらえて多数のオバケが登場しており、当時の商品には「黒いオバケ」も複数いる。
「国際オバケ連合」復活! - 藤子不二雄ファンはここにいる
批判の対象となったのは、左下にいる「ウラネシヤ代表のボンガ」。暑い国から来たボンガは、寒い国から来たエスキモーのオバケのアマンガと対立する。
そこでアマンガがQ太郎に対して、ボンガは「バケ食いオバケ」であり「人間でいえば人食い人種」だとふきこみ、昔のことだとボンガが反論する。ここまでは劇中人物が誤った偏見を語った描写ではあるが、ボンガが今もオバケを食いかねない描写もギャグとして出てくる。
この表現が封印されるべきかは別問題として、「黒いオバケが出てる、それだけ」にとどまる描写でないことは明らかだ。
また、わずか家族3人の団体による抗議は、圧力としては弱い。むしろその抗議もまた表現の自由のひとつと考えていいだろう。
その抗議に妥当性がないのに作品が封印されたのであれば*1、まず批判されるべきは過剰に委縮した出版社ではないだろうか。
ちなみに藤子・F・不二雄は作品の封印で委縮するどころか、カニバリズムをモチーフとして選びつつけ、異なるベクトルで傑作の短編2作品を遺している。
- 作者: 藤子・F・不二雄
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