法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

従軍慰安婦について、当初から変わらない主張をつづけているだけなのに、存在しない変化を見ている人々

「はてサ」の「ウォッチ」すらできないウォッチャー - 法華狼の日記

どれも反論と呼べる領域に達していない。対象を読まずに評する、根拠を出さない、理路も示さない、あやふやな記憶で語る、引用しても曲解する……はてさて「ウォッチ」とは何だろうか。

せめて「ウォッチ」という名に恥じないくらいの認識力は示してもらいたい。それが現状のようにできないままならば、誹謗中傷や捏造歪曲を前提とした「アンチスレッド」にでも改名することを勧める。

ちょっとした経緯で「はてなサヨクウォッチ」の最新スレッドを見たところ、以前に指摘した問題が何ひとつ改善されていないままだった。
はてなサヨクウォッチ避難所 18 - 1565098839 - したらば掲示板
スレッドの「>>2」に下記のような注意書きもあるので、「可能性」にとどまらない明白な事実だね、と応じれば終わる話ではあるが。

客観性・中立性を装いつつ、明示されることなく、ヲチャの政治的・社会的所属あるいはヲチャ自身の利害を反映している意見・主張を含んでいる可能性があります。
そうした能動的な欺瞞行為がなされていない場合であっても、掲載すべきデータを掲載しない等の方式でヲチャの政治的・社会的所属あるいはヲチャ自身の利害を反映し、客観性・中立性を意図的に欠けさせる形での不作為による欺瞞行為がなされている可能性があります。
さらに、以上のようなヲチャの意図による欺瞞行為がなされていなくても、 ヲチャが無意識に有するバイアスにより、客観性・中立性が損なわれている可能性があります。


しかしスレッドの最初にある1年前のやりとりを見て*1、「ウォッチ」と名乗りながら対象への興味が欠けているさまに興味深さをおぼえた。

24: 名無しさん :2019/08/18(日) 19:45:55 id:oaLkMXxQ0
ほっけさんが慰安婦海外比較のあれこれ書いてるけど
一番主張したいだろう日本軍慰安所特殊論(=その特殊性が罪)を
露骨にいえない時点で状況が変わったのを感じる


吉田証言を学者は相手にしないも
運動の末端が扇情的な情報を使ってきたのが批判されてるのに反論になってないよ

26: 名無しさん :2019/08/19(月) 07:10:07 id:zwhoa0Tg0
一応ほっけさんの記事のリンク出さないとということで。


https://b.hatena.ne.jp/entry/s/hokke-ookami.hatenablog.com/entry/20190817/1565967600

33: 名無しさん :2019/08/21(水) 17:37:05 ID:0sW6e34Y0
そう言えば一昔まえは、はてサとか自称歴史研究者が
慰安婦制度は、人類の歴史上類をみない性暴力!」みたいなこと言ってたよね
他の問題ではそもそも被害者が名乗り出なくて研究が進んでないのに何言ってるんだ、って感想を覚えてたっけ
それがいまじゃ「古くから日本軍慰安所との類似が指摘されているドイツの慰安所」(@ほっけさん)だもんな

このブログを私が書きはじめたのは2007年5月*2。すでに同年7月のエントリでソ連軍の性暴力にふれている。
何もかも、全く同じ風景だ - 法華狼の日記

従軍慰安婦を問題にしている人ならば必ず知っている歴史*1ではあるが、証言をふくむ実態を読めば一段と重い。

*1:吉見義明による岩波新書従軍慰安婦』他、基本的な概説書では昔から他国軍隊の性的暴力例として言及されている。

読んでのとおり、日本軍慰安所制度を問題視する人々には他国軍の性的暴力も存在が知られているという認識を表明している*3
2011年には米軍慰安婦を映画化した『カジュアリティーズ』の感想を書き、2016年には実写版の戦争映画ベストテンでも私選した。
『カジュアリティーズ』 - 法華狼の日記

女性を慰安婦として拉致する口実として、小隊の規律を守るという建前を小隊長が主張したこと。戦争犯罪が狂気による特異例ばかりでなく、身勝手な立場から考える合理性によっても起こされることを示している。

戦争映画ベストテン〜実写限定〜 - 法華狼の日記

ベトナム戦争における米軍慰安婦事件が題材。戦争映画として標準的に見どころがある前半から、徐々に軍隊映画らしい後半へ移行していく。

そして2017年、赤城毅ツイートへの疑問を書いたエントリで、まさにドイツとの関連を無視してないことが無視されがちな状況について私は書いていた。
赤城毅氏の、従軍慰安婦問題と左翼にまつわるツイートを紹介 - 法華狼の日記

不思議なのは、「Seidlerの研究」が「従軍慰安婦は日本にしかない悪逆非道な制度であると主張していた左翼には、きわめて都合の悪い」という認識。
たとえば1995年の吉見義明『従軍慰安婦』には「軍隊に慰安婦はつきものか――各国軍隊の場合」という章があり、「各国軍隊の周辺でも、日本軍の慰安所にある程度まで類似した施設がつくられたことが、次第にあきらかになりつつある」*2と指摘されている。旧日本軍と同時期のドイツ軍もとりあげられ、Franz Seidlerを参照して「国防軍・親衛隊など各軍に慰安所があったようだ」*3と紹介している。
もちろん各国の社会状況や人権意識などで違いは生まれるし、問題の固有性を見つめる研究も重要だろう。切りとった観点によっては日本以外にほとんど存在しない問題という考えはありうる。梶村太一郎氏のように、日本軍慰安所制度を固有の問題として強く批判する立場からでも、同盟国の性奴隷犯罪行為としてドイツの最新研究を紹介することがある*4。
しかして左翼であれば日本軍固有の問題を見つめる時でも、まずは「軍隊そのものが慰安所類似の施設を生みだしていくという傾向がうかがわれる」*5という立場をとるはずだ。

つまり「古くから日本軍慰安所との類似が指摘されているドイツの慰安所*4という2019年の認識は過去から何も変わっていないし、事実エントリでも紹介してきた*5
そもそも引用文に「古くから」という形容がある時点で、新たな認識でないことは自明だろう。「変わった」という「いま」の「状況」は、残念ながら大きな改善などなく問題がつづいている。


「>>1」で「ウォッチ対象(はてなサヨク)の訪問は基本的に歓迎しません」と注意していることの含意も理解はできる。上記にかぎらず*6、言及対象の主張を歪曲して難癖をつけつづけるためには、訪問されて誤りを指摘されては困るのだろう。
スレッドに見られる言及対象への興味の薄さは、同じ「>>1」で「お帰り下さい。書き込んだ場合、荒らし行為とみなします」と注意している「ネット右翼国士様在特会その他の方」と大差ない。

*1:最初に私に言及しているのは「>>7」だが、私ではない人物の主張とてらしあわせて「ダブスタ?」と問いかけるような明らかな難癖なので、スレッド内でもほとんど相手にされていない。ずっと後に「>>133」が「 むしろ「大誤報」とか評価するほうが「虚偽」にあたるらしい」と言及しているが、該当エントリで私が「大誤報」ではないと指摘しているのは、その部分は朝日新聞もとりさげず誤りも認められていないからだ。反論する形式でhokusyu氏の根拠を提示してしまったcider_kondo氏 - 法華狼の日記

*2:厳密には、はてなダイアリーという別サービス。そのサービス終了にともなって、はてなブログにインポートするかたちでブログつづけている。

*3:さすがに現在に読みかえすと他人に期待を押しつけすぎていたと反省したいが、当時のインターネット世論における従軍慰安婦問題の位置づけからして正直な実感でもあった。「従軍慰安婦を問題にしている人」が今よりずっと少なく、こだわりの強い人が多い印象があった。

*4:「ドイツやフランス軍による戦場での管理売春、従軍慰安婦、性奴隷」というTogetterの事実誤認 - 法華狼の日記

*5:今回はコメント欄での言及はふれない。はてなダイアリーからインポートした時、コメント欄の書き込み時刻表記が消えた問題もある。インターネットアーカイブに残っていなければ確認も難しい。

*6:「>>14」で「人身売買がすごく大きなウェイトを占めていた」といった林博史氏の指摘が、「スレで何度も指摘されてたけど、林先生からはっきりと言及されたな」と語られていることにも、少なくとも私個人は違和感を禁じえない。「奴隷」という言葉が「人身売買」と密接につながっていることは、それだけで独立したエントリを2012年に書いている。「奴隷」は、必ずしも支配者が直接的に強制連行で集めたわけではない - 法華狼の日記 もちろんこれが初めてではなく、2007年6月の時点で「何より、騙して売春婦にして拘束し、人身売買も行ったということが重要な問題なのだ」といった文章も書いている。マイク・ホンダの肖像 - 法華狼の日記