法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

赤城毅氏の、従軍慰安婦問題と左翼にまつわるツイートを紹介

赤城毅名義で架空戦記等を、本名の大木毅名義でノンフィクションを手がけているakagitsuyoshi氏*1
かつて従軍慰安婦問題をあつかった秦郁彦氏の著作に翻訳を提供したことがあり、ツイッターでふりかえっていた。話題ごとに前後させつつ引用する。

ここまでは秦郁彦氏の著作がどのように書かれたかの背景として興味深い証言ではあった。


しかし慰安所制度がどのように問題視されてきたかという話にうつると、いささか首をかしげるところが出てくる。

ここで不思議なのは、「Seidlerの研究」が「従軍慰安婦は日本にしかない悪逆非道な制度であると主張していた左翼には、きわめて都合の悪い」という認識。
たとえば1995年の吉見義明『従軍慰安婦』には「軍隊に慰安婦はつきものか――各国軍隊の場合」という章があり、「各国軍隊の周辺でも、日本軍の慰安所にある程度まで類似した施設がつくられたことが、次第にあきらかになりつつある」*2と指摘されている。旧日本軍と同時期のドイツ軍もとりあげられ、Franz Seidlerを参照して「国防軍・親衛隊など各軍に慰安所があったようだ」*3と紹介している。
もちろん各国の社会状況や人権意識などで違いは生まれるし、問題の固有性を見つめる研究も重要だろう。切りとった観点によっては日本以外にほとんど存在しない問題という考えはありうる。梶村太一郎氏のように、日本軍慰安所制度を固有の問題として強く批判する立場からでも、同盟国の性奴隷犯罪行為としてドイツの最新研究を紹介することがある*4
しかして左翼であれば日本軍固有の問題を見つめる時でも、まずは「軍隊そのものが慰安所類似の施設を生みだしていくという傾向がうかがわれる」*5という立場をとるはずだ。


念のため、akagitsuyoshi氏は下記のようにもツイートしている。普遍化による矮小化に加担しかねない考えではあるが、少なくとも日本の性暴力を否認はしていない。

だから、この観点から研究を進められるというならそれで良いのだが、自身もまた「イズム」にとらわれていないかは省みてほしい*6

なぜ今になって紹介したのかというと、つまらないギャグが評判になっていたから

akagitsuyoshi氏のツイートは以前に見かけて、引っかかりをおぼえつつも興味深く読んだのだが、今回わざわざとりあげたのはid:Donoso氏の示唆による。

まず、つまらないギャグがすべった*7ことはid:hokusyu氏が甘受すべきところとして。
かつてSeidlerの研究をもちだしていたakagitsuyoshi氏も、知識でマウンティングするギャグを下記のように批判していた*8

ここでakagitsuyoshi氏に知識でマウンティングすることへの自省をうながせば、多少はポジティブな転換へ助けとなるだろうと期待する。