法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『フレッシュプリキュア!』第24話 せつなの苦悩 私は仲間になれない!

シリーズディレクターの一人に昇格した座古明史が演出、さらにキャラクターデザイナー香川久が初めての作画監督
草原の丘に座って街を見下ろす少女に雲の影が落ちる冒頭から、夕焼けの丘を皆と歩いて少女が街へ帰る結末まで、画面も構成も計算されている。
個人的には、果物を透明なゼラチンで固めて輝かせているケーキ描写が面白い。輝かせることで美味さ奇麗さを表現する、ともすれば安易なアニメ演出が、現実に後追いされた描写と感じた。
変身や必殺技の新規バンクが作られたこともあって、原画にも名の知られたアニメーターが並んでいる。特に志田直俊のバンク作画は特徴的で、一目で判別できた*1。手描きらしさを消した流麗な描線に、引っかかりのないアニメート……流行りの作画アニメと対極にある個性が、逆に面白く感じる。


物語に目を移すと、良い話だったとは思うが、段取り臭さが強くて好みではなかった。実質的な選択は前回で済ませているということもあって、物語の全要素がキュアパッションを後押しするばかり。ウェスターが戻るよう説得する場面くらいでしか能動的な意思を見せない。
逆にいえば、イース=せつな=キュアパッションが自身の立ち位置を定めていく流れは力強くて無理がなかった。特に、桃園家の母から娘へ、娘から友達へ思いやっていく構図が……できすぎていると少し感じたが、美しいと思う。
未練を断つと残す姿を対比して、敵側の人間関係も描けていた。未練を残すからこそ、戦う動機を強く持って挑んでくるウェスターの迫力もあった。
それだけに、残りのプリキュアに存在意義がなさすぎて、困惑するほどだった。先述した段取り臭さの一因だが、葛藤も前振りも描かれず能天気に敵を受け入れてしまっている。とってつけたように登場させるくらいなら、今回のドラマにからませるべきではなかった。敵を受け入れる物語は後で描く方がそれぞれの存在感を出しやすいはず。

*1:とかいいつつ、EDクレジットに表記されるのが遅かったので、「まさか新人のフォロワー仕事か?!」とやきもきした。