法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『岸辺露伴は動かない』(9)「密漁海岸」

 アワビの密漁をおこなおうとしていた男ふたりが、夜の海岸で恐怖におそわれる。漫画家の岸辺露伴は担当編集の泉京香につれられて、隠れ家のようなイタリアレストランにたどりついた。イタリアから来た料理人トニオ・トラサルディひとりがきりもりするレストランの最初の客として、露伴たちは不思議な料理を食べていく……


 荒木飛呂彦原作のNHKドラマの、劇場版をはさんだ4期。これまでと違って単発放送だが、そのぶんだけ物語も映像も密度があがっている。
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 特に、中盤まで「密漁海岸」ではなく、『ジョジョの奇妙な冒険』からトニオの登場エピソードを映像化しているところがいい。これまでのシリーズでは、どうしてもドラマの枠にひとつのエピソードを映像化すると間延びしがちと思っていた。1時間枠ならば2エピソードをあわせるくらいがちょうどいい。
 その中盤まではレストラン内にひとつだけあるテーブルにふたりだけ座り、つぎつぎに出てくる料理が異常を生みだしていくところが舞台劇のよう。さほどリソースがあるわけでもないドラマで、予算をつかわず緊張感のある画面が成立している。
 でんでんの演じる漁師の怪しげな言葉を回想する場面や、クライマックスにおける密漁の水中撮影などは雰囲気たっぷり。そこからアワビやタコが人間を襲う描写のB級ホラーへの転調ぶりも楽しい。