法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『大魔獣激闘 鋼の鬼』

 ひとりの青年が親友に呼ばれて、謎の軍事実験をおこなっている島へやってくる。待っていたのは親友とその彼女。彼女は青年のかつての恋人だった。そして実験をおこなっている親友が、変調をきたしているらしいことを知らされる……


 1987年に発売された約1時間のOVA平野俊弘監督と会川昇脚本でAICが制作という、『戦え!!イクサー1』からつづくスタッフ構成に、恩田尚之をキャラクターデザインにむかえて作られた。

 大畑晃一がデザインを担当した「鬼」は生体的な魅力があり、グッドスマイルカンパニーがMODEROIDブランドでプラモデル化し、7月に発売予定。

 いい機会なので以前に書いた感想をエントリとして上げておこうかと思ったわけだが……


 ……肝心のアニメの内容といえば、別作品と同時発売するためスケジュールがまったくなかったらしく、原案と脚本をつとめた會川昇がDVDブックレットで言外に語っているように、あつまったスタッフのわりに映像はきびしいしあがり。
 湖川友謙がたちあげたビーボォー系の恩田尚之らしく煽り構図は多いが、真横から顔をクローズアップしたカットともども、どうにも似たような角度ばかりで印象は単調。作画枚数も影も少なめで、直前の初キャラクターデザイン作『魔龍戦記』に迫力で劣っている。芋っぽい太眉デザインとインド系っぽい褐色デザインのダブルヒロインは魅力的だが、省力のためか顔面クローズアップばかりの絵コンテのせいで印象に残らない。
 異次元から呼び出された人型メカは線が多く、先述のように魅力的なデザインでよく動くが、対比物が何もない場所で一対一で戦うだけなので巨大感がなさすぎる。一般的な風景に架空の存在が映りこむ異化効果も、戦闘が人類や自然を傷つける緊迫感もない。
 ストーリーにいたっては何らかの意思で人格が変わった親友に対して主人公が戦うだけなので、異なる意思がぶつりかりあうドラマの妙味もない。おそらくは映像の魅力をひきだすために、あえてドラマは浅く単純に整理した企画ゆえとは思うのだが……