法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ダジャレーランド/無敵!コンチュー丹

アニメオリジナルの前半と、原作にほぼ忠実な後半と。嶋津郁雄作画監督なので、映像は平均的。


「ダジャレーランド」は、スネ夫がもらった遊園地のチケットをわけてもらって、のび太たちは遊びに出かける。しかしそこは園長しかスタッフが出てこないくらい古くさびれた遊園地だった……
アニメオリジナル秘密道具「ダジャレイガン」で遊具を撃ち、ダジャレにあわせた新機能をもった遊具へ変えて楽しむ展開だが……思いついたダジャレをモチーフにした遊具を並べて楽しむばかりで、工夫が感じられず冗長かつ単調。お化け屋敷などはダジャレで笑いに変えたため、むしろ恐ろしさが減ってつまらなくなったようにも見えた。
さびれた遊園地側の良さが見えないため、たまたま来日していて楽しんだ他国の王族に支援してもらったオチも、苦労がむくわれたようにも見えない。原作にもさびれた店が秘密道具の力を借りて再生していくエピソードが複数あるが*1、それらの店は古ぼけながらも客を大切にする努力はつづけていた。
そもそもダジャレにあわせて変化させることと、遊具が新しくなるのは、まったく異なる機能ではないだろうか。遊園地の良さを表現するためにも、遊具そのものはメンテナンスされていて、ただ古臭くなっただけだからこそ、モチーフを変化させるだけで現代の子供でも楽しめるようになった……といった描写にすべきだったのではないか。


「無敵!コンチュー丹」は、いつものようにジャイアンにいじめられたのび太が、秘密道具で昆虫の能力をもって復讐しようとする。しかし秘密道具を飲んだ直後は効果が出ずに……
2005年に安藤敏彦コンテ演出でアニメ化した短編を、小笠原卓也コンテで再アニメ化。恥ずかしながら名前に見おぼえがなかったが、2018年から設定制作をつとめたスタッフで、シンエイ動画所属の制作進行らしい。これから演出家としても活躍していくのだろうか。
物語は理科的な生物的知識*2にもとづき、そのまま超人的な活躍を描きだす。そうした原作を逸脱しない映像化で、繭をつくって蛹になり、朝に羽化するまでの情景の美しさなどはよくできていた。前回に放送されたスライムで遊ぶドラえもん*3が登場して、TVアニメとしての連続性をアピールしたのも楽しい。
アニメオリジナル描写といえば、決闘の観客としてクラスメイトを集めたことと、原作にはないカメムシの特性によってクラスメイトを悪臭で困らせてしまったことくらい。決闘が終わった後に昆虫能力の欠点を描く構成そのものは原作通りだし、追加する能力としては違和感がないものの、あまり良いとは思えなかった。一晩かけて生まれ変わり、ジャイアンを圧倒する強さを誇りながら、つまらないものが弱点となる、そんな落差が薄められたためかもしれない。

*1:『ドラえもん』ひっこし地図でおひっこし/かがみでコマーシャル - 法華狼の日記『今年最後のドラ笑い!! 大みそかだよ! ドラえもん1時間スペシャル』初売りドライ・ライト/百人一首にアンキパン/オンボロ旅館をたて直せ/雪でもポカポカ! エアコンフォト - 法華狼の日記のようにアニメ化もされた。

*2:昆虫を人間のサイズにした仮定で力の大きさを説明していたが、実際はサイズをそのまま拡大しても正しい比較にはならない。しかし、単純にサイズで比較する説明はいかにも理科の入門書的であり、感覚を優先した秘密道具らしい設定と考えれば世界観に合っている。

*3:『ドラえもん』ゆめの町、ノビタランド/ドラえもんをのぞいちゃえ! - 法華狼の日記