法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』いろいろソーダセット/マジックボックス

三宅綱太郎演出、嶋津郁雄作画監督のベガエンタテイメント回。


「いろいろソーダセット」は、飲むことでさまざまな状態になれる秘密道具が登場。それを使って野球で活躍しようとしたり、出木杉しずちゃんに嫌わせようとしたりするが……
伊藤公志脚本による完全アニメオリジナルストーリー。秘密道具のデザインは悪くなかったし、さまざまな身体能力を獲得したのび太の描写はアニメとしてよくできていたが、物語に褒めるところがなかった。
まず、秘密道具の機能からして引っかかる。ダジャレ系のネーミングなのに、飲めば確実にそうなって、助動詞「そうだ」がもたらす印象とは異なる。このネーミングならば、能力を発揮できる最後の一押しとして本人の信念などが必要と設定してほしい。
ソーダの形状をしていることも、意図せず噴出して間違って飲ませるオチくらいにしか効果がない。泡に秘密道具の成分がふくまれているという設定が語られているのだから、排尿ではなくゲップやオナラで能力を失う設定にするべきではないか。
のび太が違うソーダを間違って飲んでしまう局面も不自然すぎる。先にドラえもんがいろいろなソーダがあると説明していたのだから、いくらのび太でも確認せず飲むのならば、急いでいるだけではない理屈をつけてほしい。そもそも、ソーダセットに色々なソーダの種類があるという説明を最初にする必要はなかった。


「マジックボックス」は、のび太が貸した漫画をジャイアンが返さず、戻したはずだと主張されたことが発端。そこで手と足と目だけを遠くに移動できる秘密道具を使うが……
寺本幸代コンテによる、記憶では2005年以来に初めてのアニメ化。最近にアニメ化された同種の秘密道具が出る原作短編「出ちょう口目」*1には構成の妙があった。比べるとストーリーは平凡だが、ネーミングにもあるように切断マジックのような秘密道具のデザインと機能がおもしろく、機能も「どこでもドア」などの派生でありつつ独自性がある。
今回のアニメ化では、秘密道具の独自性を活かすように、手足目を分離する筒を犬がくわえる展開を追加。手さぐりで少しずつ状況がわかっていく過程がおもしろいし、放り投げられた時の主観視点も映像として楽しい。それをドラえもんが助けにいくのは、それならば移動は最初からタケコプターを使えばいいとも思ったが。
また、オチも大きくアレンジされている。原作では徹底的な復讐が成功して、ジャイアンに気づかれるも犬を巻きこんで反撃をふせぐが、今回のアニメではジャイアンが筒をマイクカバーにして歌の練習をはじめる。復讐をやりすぎてしっぺ返しにあう一般的なパターンになってしまったのは、好悪がわかれるところだろう。犬を巻きこむことを肯定しないためのアレンジとして、理解したいところではあるが、もう少しアイデアはほしかった。