法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『今年最後のドラ笑い!! 大みそかだよ! ドラえもん1時間スペシャル』初売りドライ・ライト/百人一首にアンキパン/オンボロ旅館をたて直せ/雪でもポカポカ! エアコンフォト

2012年末以来の大晦日SP。ただし長さは1時間で、放映時刻も16時半からと変則的。どちらかというと年末のSP番組で放映されなかったエピソードの調整といった感があるが、それなりに季節ネタを集めてはいる。


「初売りドライ・ライト」は、日光を固形化した未来のエネルギーをめぐる大騒動。のび太がいつものように商売しようとするが、どら焼きで釣られたドラえもんが暴走していく。
エネルギー問題を高度に抽象化した原作を、ほぼ忠実にアニメ化。最初は無料で配られて地域の価値観を変容させたり、独占によって天井知らずに値段がつりあげられたり、流出することで地域の環境を一変させてしまったり、商売のていねいな描写が経済寓話としても楽しい。技術そのものは環境に優しいからこそ、普遍的な寓話として成立している。
アニメ化による独自の見どころは少なかったが、最後に地域の環境が一変した様子を、延々とカメラがドリーアウトする1カットで表現したクライマックスは印象的。


百人一首にアンキパン」は、カルタ大会の賞品をほしがるジャイアンに、のび太スネ夫はふりまわされ、捨てられる。そこで別チームとして対抗することに。
今回で唯一のアニメオリジナル。あくまで町内のカルタ大会なので公式のチーム戦とは違うが、百人一首カルタの暗記方法や上の句で下の句を探さなければならないことなど、エッセンスは充分に入っている。1首1枚ずつ食パンを食べなければならないところ、3人でわければ33枚という微妙なラインにも説得力がある。
オチもふくめて意外性はまったくないが、原作の秘密道具と季節ネタを合体させ、てがたく完成していた。


「オンボロ旅館をたて直せ」は、のび太が家出してホテルの玄関で雨宿りしていたところ、宿泊客とかんちがいされてしまう。その縁からはじまる物語。
ひねったかたちで原作者の別作品とクロスオーバーする短編を、素直にアニメ化。ホテル業の舞台裏や建物のさびれぐあいなど、少しリアルにディテールを足す方向にふくらませ、天候などのメタファーでキャラクターの状態を演出する。
思いちがいと善意がかさなり、のび太が客観的に自己を見つめる結末へといたる。基本プロットがシンプルなので、足し引きする必要はない。


「雪でもポカポカ! エアコンフォト」は、チームの弱さに怒ったジャイアンが、寒中トレーニングを強行。のび太は秘密道具をつかって気楽にのりきろうとする。
自分を撮った写真の状態が反映されるという、「のろいのカメラ」にちかい設定。単行本に収録されたのは最近のこと。
まず、アニメオリジナル描写として、ママが写真を窓の外に捨てる経緯が不自然。ここは原作通りに毛布を洗おうともちだすだけで良かったのでは。のび太が最後に熱くなる展開も、焚火から七面鳥の丸焼きに改変。熱くなったり平気になったりを交互にくりかえすギャグはいいとして、スネ夫が写真に気づかず聞く耳をもたないのは、ひきのばしのための御都合主義。たとえば寒中トレーニング時、のび太スネ夫を馬鹿にして、その意趣返しという展開であれば、好みではないが納得はできた。