法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ゆめの町、ノビタランド/ドラえもんをのぞいちゃえ!

テレビ朝日版のアニメ放送開始40周年を記念して、冒頭でドラえもんがあいさつ。OPも旧主題歌を現役声優が歌うバージョンになり、映像も名場面をダイジェストしたPVに。
前後ともに伊藤公志が脚本を担当し、絵コンテも大杉宜弘ディレクターが担当するという力の入れよう。スケールを表現する煽りを多用した前半の構図や、緻密な手描き作画が楽しめる。


「ゆめの町、ノビタランド」は、ローラースケートで遊べる広い場所を求めて、秘密道具で庭にミニチュアの街を作り、身体を縮小して遊びはじめる。友人たちも自由に遊び始めるが……
テレビ朝日版の第1回*1を再アニメ化。のび太をひきそうになる自動車の細かいメカ作画や、終盤で街を破壊する野比母の怪獣のようなコンテが印象的。
物語の大筋は原作から変わらないが、出木杉らが街を楽しむ場面を増やして、さらにジャイアンがリサイタルを開こうとする危機を追加。ちゃんと短編として楽しめる密度があった。
ガリバートンネルを通る描写で、アニメ第1回を意識したようなコンテを切っている。のび太たちが『ウエストサイド物語』のように踊るアニメオリジナル描写も、ミニチュアのテレビが使える説明で『ウエストサイド物語』を映す。細かなオマージュが楽しい。


ドラえもんをのぞいちゃえ!」は、のび太ドラえもんの仲の悪さをセワシが案じていたところ、ドラミの助言で観察することになった。モニターに映されるドラえもんの毎日は……
セワシとドラミちゃんがドラえもんを観察するエピソードは原作にもあるが、公式サイトのおはなしリストでは原作表記がない*2
「ゆめの町、ノビタランド」「ドラえもんをのぞいちゃえ!」|ドラえもん|テレビ朝日
実際、いくつかの描写が今回のアニメに反映されている原作短編の「ションボリ、ドラえもん」は、ドラミちゃんがドラえもんのかわりをする展開だ。のび太がいない時間帯でドラえもんが何をしているのかアニメオリジナル描写で見せる今回は、物語の構造が異なる。
いわば今回は、40周年記念でドラえもんの日々を総集編のように見せるエピソードだ。さまざまな恋の相手がいる描写や、ひまつぶしにスライムで遊ぼうとする描写なども、ちゃんと原作やアニメに元ネタがある。
いつもと違った視点からドラえもんのび太の日常を見ること自体が楽しいし、細かい元ネタの確認がまた楽しい。視点のコンセプトは原作から引いているので違和感もない。ファンサービスとして完璧な回だった。

*1:2010年のスペシャルで再放送もされた。『ドラえもん』町内突破大作戦/映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史/ゆめの町ノビタランド - 法華狼の日記

*2:ちなみに現在のWikipediaでは、カラー作品集の第1巻に原作があるかのような表記になっているが、読み返しても該当するエピソードが見当たらない。ドラえもんのアニメエピソード一覧 (2005年4月 - ) - Wikipedia