法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』イロガラドラえもん/海に入らず海底を散歩する方法/22世紀で夏休み

「40周年だよ!ドラえもん1時間スペシャル」と題して、来年の映画と同じモチーフの「恐竜ハンター」を大山のぶ代版から再放送。
また、ひみつ道具コンテストの最優秀賞をショートアニメ化。これは2005年リニューアル初期のミニアニメを思い出させた。
40周年だよ! ドラえもんひみつ道具コンテスト|ドラえもん|テレビ朝日



「イロガラドラえもん」は、ドラえもんが自分にワックスをかけようとしたが、そこでドラミちゃんが送った秘密道具は、さわったものの色や柄がうつる機能があった……
オリジナル秘密道具「インスタントファッションワックス」でドラえもんの体色を変わるだけのエピソード。けっこうデザインが面白いと思ったら、テレ朝夏祭りでグッズなども販売されるという。
ただ色がうつるだけで終始するが、何かにさわった描写があれば必ず変化させ、デジタル素材をはりこんだりして質感にもバラエティがあり、徹底することで面白味が生まれている*1。ネズミの体色がうつって家から逃げ出したり、ジャイアンスネ夫しずちゃんと出会ってファッションショーでいじられたり、状況も変化するので見ていて飽きない。
物語のつじつまも意外とていねい。色を決めてから別の秘密道具で定着させる設定がそれらしいし、ワックスを塗った青い部分だけ色がうつることから床の色がうつらない理由が説明されなくてもわかる。


「恐竜ハンター」は、のび太ドラえもんが勇敢さを証明するように白亜紀へタイムスリップして、恐竜を捕獲しようとする。到着してすぐドラえもんが恐竜をおびきよせたが……
シンエイ動画版TVアニメが放送開始した1979年4月に初期原作をアニメ化したものの再放送。現在は女児向けアニメの監督で活躍している森脇真琴が演出を担当。
まだ設定がかたまっていない時期の原作であり、いくつか後の公式設定と矛盾する描写がある。2015年に再アニメ化した時も、いくつか整合性を高めるアレンジをしていた。
『ドラえもん』恐竜ハンター - 法華狼の日記

原作では眼鏡を凸レンズとしてあつかうという、のび太が近視という設定と矛盾する描写もあった。今回のアニメ化では、眼鏡を使った逆転理由を変えることで地味に矛盾を解消したのが期待を超えて良かった。

この1979年版は恐竜をつかまえる根幹設定こそ変えていないが、クライマックスを大きく省略。危機を脱するために眼鏡を使う場面もなければ、眼鏡を失ってドラえもんを撃ってしまうギャグもなく、火山の噴火でそのまま助かる。
ついでに『ドラえもん』という作品が視聴者に定着していないという判断からか、秘密道具の機能説明が原作よりも全体としてていねいになっている。
また、のび太がおびえながら囮となる原作と違って、ぼやきながら囮として歩くことで、とぼけた味わいがあった。恐竜も原作ほどリアルな作画ではない。


「海に入らず海底を散歩する方法」は、四丈半島の別荘にいるスネ夫から、楽しくレジャーしている写真がとどく。対抗するため、ドラえもんは水をはじく秘密道具を出して……
2009年にアニメ化*2した短編を再アニメ化。主に『クレヨンしんちゃん』で活躍していた今村洋輝が演出として2度目の参加。
全体として前回よりも原作に忠実。波打つ海面を手描き作画でしっかり動かしたり、のび太がちゃんと靴をはいて海底を歩いたり、クルーザー船の機能を細かく描写したりと、ディテールを足す方向でアレンジしている。
ひとつ感心したのが冒頭でスネ夫が送ってきた写真に、折り紙の船が入っていたアニメオリジナル描写。壊れたクルーザーのかわりに巨大な折り紙船をつくるオチは同じでも、原作では何ら前振りがなかったが、今回のアニメでは軽い意趣返しのニュアンスがあって、物語がきれいに閉じている。


「22世紀で夏休み」は、ドラミちゃんに提案されてドラえもんが22世紀で1日の休みをもらうことに。しかしセワシは意外とひとりだちしていて、何もすることがないドラえもんは……
ほぼ未来世界を舞台にしたアニメオリジナルストーリー。小林英造脚本に大杉宜弘コンテで、これまで原作などで断片的に描いてきた未来世界をそつなく映像化した。
未来世界でもテレビは薄型平面なのかと思ったが、考えてみれば秘密道具のスクリーンも多くが平面だし、逆に現代でも電子書籍化されながら漫画はモノクロが主流のままだから、ありえないことはないか。
ぼんやり何もすることがないドラえもんの姿が珍しく楽しいし、ハツメイカーや時限バカ弾などの印象的な秘密道具エピソードを未来で再演しているのは安心して楽しめる。