前回の次回予告とサブタイトル通り、プリキュアが自身の鏡像と戦うことで成長しようとする。過去シリーズの映画『Yes！プリキュア5〜鏡の国のミラクル大冒険！〜』等をふまえていると思わせつつ、鏡像と戦う以外の要素まである展開が面白い。
まず手始めに隕石のごとく巨大な敵が落下し、試練以外にプリキュアのアクションが見られたのは嬉しい驚き。これまでキュアムーンライトが強すぎて協力という感覚が薄かったこともあり、4人同時の必殺技を見せておく脚本上の必然性もあったのだろう。
その巨大な敵はプリキュアへの挨拶みたいなもので、敵組織サバークの首領格デューンがさらなる攻撃を宣言、プリキュア達が試練の必要性を感じる展開も自然だ。敵がわざわざ予告をするところは少し御都合主義だが、ナルシスト的なキャラクターとして許せる範囲。
そして各プリキュアが自身の影と戦う試練。影を変わる前の自己であり過去ととらえ、乗り越えつつも忘れずにいようとする結論は普遍的で、逆にいうと驚きはない。ここで感動できるならば、各プリキュアが自分を変えようとしていた姿を過去の話で見て、今回の冒頭でも再確認したためだろう。自分を変えつつ肯定するという作品のテーマにも合っている。
そしてプリキュアパレスに並ぶ石像設定を軽く回収した後、見ていて気になっていたキュアブロッサムの不在が指摘され、次回に引くという意外な展開。考えてみれば各プリキュアの中で一度も心の花を枯らせたことがないキュアブロッサムの存在意義を、今ここで問い直す展開もまた必然といえる*1。同時に、分断されながら4人全てが同時に同じ結論に達するような不自然さも排している*2。
今回の演出は境宗久コンテに畑野森生演出。それぞれのプリキュアイメージを反映した舞台としているだけではあるが、どこかで見たようでどこでもない風景で試練が行われた描写が新鮮。描けることは描ききり、変身や必殺技を除いてイメージ的な背景を用いてこなかった今作品において、ここまで観念的な風景が連続したのは記憶している限り初めてだ。逆光や光量の増したカットも多用されていて、不安をもたらす物語をよく表している。
作画監督は奥山美佳。いつもの可愛らしい絵柄だが、開いた口の形がハート状になる癖には違和感が少し。
*1:もちろん鬱屈自体は折にふれて描かれてきたし、プリキュア変身にあたっての性格変化なども描かれていた。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20100404/1270416125
*2:個人的な好みとしても、仲間の大切さを強調する作品でも1人2人は周囲と別の方向を見ていてほしい。
