巨大な敵より巨大化した女性イメージが拳をふりあげた時に「まさか」と思ったが、本当に叩きつけるとは思わなかった。巨大化したアイテムに5人のプリキュアが乗って敵へ突進する必殺技とか、巨大な薔薇が敵を押しつぶす必殺技とか、これまでも色々とあったプリキュア力技の中でも最大級。
ツインのフォルテッシモをダブルでとか、プリキュアの姿が見えないほどのロングショットでマリンインパクトの威力を衝撃波の作画だけで見せるとか、マントをはおった状態なため既存の必殺技も作画演出が新しくなっているとか、他にも見所は多かったのだが。
物語は順当。前回で描いたことを、時間をかけて再確認したといったところ。新たに描かれたのは、成長に「自立」も必要であるということ。4人が同時に危機を抜け出してしまうと、物語上は違っていても映像表現としては「自立」でなくなってしまう。だから1人だけが試練に直面することが必要だったのだろう。
また、キュアブロッサムの場合は周囲の人間が優しくありのままを受け入れてくれていると明示した上で、それでも「チェンジ」したいという本人の感情を引き出したところも、これまで描いてきたキャラクター関係を尊重した上で物語フォーマットに落とし込んでいて感心した。
キュアブロッサムが自身の鏡像と和解する内容は前回ままで工夫が感じられなかったが、その時系列をずらして和解を後回しにし、過去をふりはらう感傷をいだきつつ戦いへ突入する流れは美しい。暗闇で無言でマントを羽織るキュアブロッサムのカット、ゆっくり始まる挿入歌も効果をあげている。
演出は長峯達也。花びら舞い散る光景を舞台として、そっけなく説明的なロングショットと衝撃だけ描く極端なクローズアップだけで構成された殺陣は、師匠である山内重保を思わせる。
マントをはおって飛び立つ場面で一瞬だけ低空を滑ってから飛び上がるタメの演出、決意とともに額の焼け焦げをぬぐうキュアマリンなども良かった。
作画監督は稲上晃で、原画に爲我井克美、大田和寛、他。敵が殴りかかってくるパースがついた腕のフォルム、先述したマリンインパクト、再生する蛇首といったカットが目を引いた。あと、必殺技バンクで女神が殴って地面が砕ける作画に見おぼえがあるが、どことなくアニメアールっぽいので森田岳士だろうか。