法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ハートキャッチプリキュア!』第46話 クモジャキー!コブラージャ!あなたたちを忘れません!!

サブタイトル通り、敵幹部が退場。
コンテは地岡公俊が担当し、最終決戦を盛り上げる。大田和寛や、河野宏之などが原画に参加している。全編通してアクションが連続。正面からの殴り合いから敵の攻撃をいなすまで、剛と柔を使い分けた殺陣がメリハリあって楽しめた。
特に、キュアマリンが妖精を助けてクモジャキーの剣を折る、一連のカットが特に目を引く。アクションにおいて打撃で破片が飛び散るシーンは、今シリーズでは少なかった。今回は敵地に乗り込んでいるおかげで、アクションで建造物を破壊できない制約がなかったのだろう。


しかし、物語の展開には積み重ねが薄いと感じてしまった。
美しいというモチーフでコブラージャがキュアサンシャインへからんでいく姿は、これまでも描かれていたからいい。しかしクモジャキーの相手をキュアマリンがつとめた展開は、制作側の事情があからさまだ。祖母を助けさせるためキュアブロッサムを先に行かせ、キュアムーンライトも後でダークプリキュアと対決させるため、特に因縁があるわけでもないキュアマリンが消去法で選ばれただけだろう。
敵幹部のキャラクター自体は立たせつつ、各話の自由度を上げるためかプリキュアとの因縁を描いてこなかったつけが、この終盤にきて露呈してしまった感がある。因縁を重視すれば各話の完成度が落ちるかもしれないので、単純に良し悪しは決められないが、せめて前振りはどこかで入れてほしかったところ。
もともと幹部とプリキュアの個人的な因縁がシリーズを通してほとんどないので、1対1で決着をつける展開は避けて、2対2のタッグバトルでも良かった。強さのための強さを求めるクモジャキーを相手にするなら、せめて最弱のプリキュアであるキュアブロッサムか、古武道の家に生まれたキュアサンシャインがふさわしいと思う。
初期からプリキュアとしてクモジャキーと対峙してきたくらいしか因縁がないのに、クモジャキーの内面を知った風に説教するキュアマリンに、プリキュアシリーズの悪い癖が出てしまっていた。せめて、もう少しキュアマリンらしいバカっぽくウザくも真摯な説教であれば、脚本家*1のスピーカーと化しているかのような印象にはならなかった。


ここで勝手な案をいうと、キュアマリンキュアブロッサム達と同行し、クモジャキーは最強の妖精であるコッペと戦っても良かったかもしれない、などと考えたりする。
饒舌だが強さ以外には何も求めない空虚なクモジャキーと、無言だが大切な人を常に念頭において他者を助けるコッペという対比関係。よそ見ばかりするコッペにクモジャキーはいらだつが、そうして他者を案じた強さを持つコッペが真の強さを見せる、なんて展開でいい。
口では強敵を求めながら、プリキュアで最も小柄な少女相手に剣をふるうクモジャキーという微妙な絵面も、コッペが相手なら変身前であれ変身後であれ問題なくなる。
……もちろん、プリキュアでもなんでもないマスコットキャラクターが一人で敵幹部を倒してしまう展開は、現実には難しいと思うが。

*1:今回の脚本担当は井上美緒。