法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』半分の半分のまた半分/あの日あの時あのダルマ

動画工房回。期待通り、ちょっと癖のある絵柄でよく動く。


Aパートは、のび太が自らの身体を切り刻んで増殖していくビジュアルから、まず面白い。基本的に原作通りだが、アニメとなって動くだけで印象が強烈になる。
また、アニメ独自の演出として、分割するごとに体積が半分、つまり身長が約8割に減っていくのび太の視点に合わせ、カメラ位置も下がっていく。犬に追いかけられる場面など、巨大な犬に追いかけられるような恐怖感があって上々。


Bパートは、著名な「感動作」を、細部にアレンジを加えつつアニメ化。
印象的なわりに意外と短い原作をアニメ化するにあたって、時事ネタ*1を省きつつ母子ですれ違うコメディを大幅に加え、その流れで原作以上に険悪な雰囲気を作り出す構成の妙にうなる。すれ違うコメディ描写もただの馬鹿騒ぎではなく、秘密道具の特性と登場人物の性格を活かした、雰囲気を損なわない普遍性ある内容。
のび太が祖母の記憶とダルマをきっかけに一人で立ち直る展開は原作のままだが、描かれていなかった祖母や母の気持ちも語られる。どちらかといえば、幼児退行してから成長しなおす原作のシンプルで説話的な構成が好みだが、母と子で見るTVアニメらしいアレンジも悪くない。甘さだけでなく厳しさもあった祖母が、さらには自身の死後や義理の娘にまで目を配る広い視野まで持ち合わせていたという真実は、周囲に対する思慮の深さもうかがわせて、なかなかに感動的。
映像面も、何度も映し出される石段ある風景にノスタルジックな情感があって、劇場映画かと思うほど力が入っていた。

*1:森村誠一原作映画の宣伝コピーと知らなくても問題なく読みすごしそうな、さりげなく埋め込まれたギャグなので、必ずしも省く必要はないと思うが。