法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』おすそわけガム/宇宙戦艦のび太を襲う/思い出せ!あの日の感動

「今年最後のドラ笑い!! 年忘れだよ!ドラえもん1時間スペシャル」と題して、火曜日の17時半に放映。番組終盤に映画次回作の主題歌を、担当する歌手miwaの実写と小芝居してから流したりも。
アニメ本編は3作品とも原作があるが、どれもアレンジの中途半端さが少し残念だった。作画は全体として良く、「オバケ」という残像を描くアニメーション技法の多用は楽しかった。


「おすそわけガム」は、一枚のガムを他人とわけて食べると、相手の食べているものを味わえるというストーリー。
さまざまな味を楽しむ主人公の反応を描く、藤子・F・不二雄の食事描写力が主軸のエピソード。今回のアニメ化は反応こそグルメアニメのように大袈裟だが、さまざまな菓子の作画がしっかりしていて、それなりに美味しそうだったのが良い。
しかし、ガムを与えられたジャイアンが「鼻クソでも入ってんじゃないのか」と怪しみ、原作通りに不味さがのび太の口に広がるオチになるかと思いきや……意図的に野良犬へガムを与えた原作と違って、カラスにガムが奪われたというオチ。子供が犬にガムを食べさせないようにするための改変なのかもしれないが、ならばガムをゴミ捨て場に捨てるだけで充分だったのでは。


「宇宙戦艦のび太を襲う」は、予知夢を発端として宇宙からの侵略者に対抗しようとするストーリー。
原作は頁数こそ短編にすぎないが、構成としては大長編に近い。侵略者の正体が病原体であることなど、映画『ドラえもん のび太と銀河超特急』の原型になった感もある。
途中までは原作と同じ展開だが、侵略者がのび太ではなくしずちゃんに飛びこみ、さらに宇宙戦艦が薬に耐性があるという展開から、のび太ドラえもんが体内に入って戦うアクションへと移行する。つまり『ミクロの決死圏』のパターンだ。今井一暁コンテに小野慎哉作画監督という布陣で、さすがビーム飛び交う戦闘は迫力あった。
しかし水野宗徳脚本にしては場面ごとの関連性が弱くて、アレンジした部分のおさまりが悪い。尺不足のためだろうか、それとも原作のエイプリルフール関連をアレンジする必要があったためか。年末SPでアニメ化せずとも、新春まで待ってアニメ化すれば、より原作を活用できたと思うのだが。


「思い出せ!あの日の感動」は、新鮮な気持ちで物事に向きあえなくなった主人公が回復するストーリー。
2005年に番組がリニューアルされた初回にもアニメ化された、印象深いエピソード。1時間SPの3番目であること、嶋津郁雄作画監督であることも同じ。
最初は秘密道具の能力で直接に、次に秘密道具で過去をふりかえって自然に前向きになる。二段構えで、しっぺ返しもなく感動的な結末をむかえ、しかし周囲とのギャップでギャグ漫画としても成立している。そのままアニメ化しているので相応に楽しめたが、ちょっと楠葉宏三総監督のコンテは表現がおおげさかな。2005年の米たにヨシトモコンテは、俯瞰で主人公を見おろす構図が印象的で、原作らしいドライさが適度に感じられて好みだった。