戦争や兵士の実態を、主に近現代の米軍を例として淡々と記述する。読者が軍人、特に米国のそれになることを仮定した予習本といったところ。軍事関係者から多くの情報を得ているためか、反戦非戦的な視点からは納得しにくい倫理観で書かれている箇所も多い。
文体はいかにも翻訳調で、かかりうけが判りにくい箇所がいくつか。統計データからみは特に顕著。そのため、統計的な情報は他の著作と突きつけあわせて読むべきかもしれない。
それでも雑駁な知識を得るには良書と思う。いくつかの基本的な戦闘時の技術など、豆知識的なものが整理されているため、軍事に関わる創作をするにあたっても役立つかもしれない。私のとぼしい軍事知識から見ても大きな突っ込みどころはなく、表現も平易だ*1。
いくつか、目についた項目をあげておく。
項目83「ホモセクシュアルでも軍隊にはいれますか?」という問いに対応する答えは「公言しなければはいれる。(後略)」とある*2。しかし直後の項目84では、一般社会よりもホモセクシュアルの率が軍隊では高く、12%に上るという推定が出されている。セクシャルマイノリティが軍隊でどのように在るかについて複数の項目が割かれており、興味深い。
項目88によると、転属が多いために生涯の友人を築くことが難しくなるそうだ。もちろん友情が続く時は篤いものになる、ともあるが、軍隊のイメージからするとやや意外ではある*3。
項目119では売春婦を相手にする話が書かれている。米軍駐留時に日本や韓国、ヴェトナム他のアジア諸国で大規模なセックス産業が生まれたことも言及されている。基地周辺の売春婦についても言及されているため、RAAに限定した話ではないだろう。ヴェトナム戦争では30万人から50万人の売春婦がいて、平均的なグリーンベレーは25人の売春婦と性交渉したとある。出征期間の短い湾岸戦争ですら帰還時にタイへ「セックス寄港」したそうだ。
項目166と167では焼夷兵器について書かれている。黄燐を使用する焼夷弾……いわゆる白リン弾*4についての言及もある。焼夷弾による負傷について、「ひどい火傷」そして「黄燐は何時間も燃え続けることがあり、肝臓、腎臓、心臓に対する毒性がある」とのこと。ナパームは1980年の国連協定で禁止されたむねが書かれている。
(この感想、続く)