法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

はてな匿名ダイアリーの、従軍慰安婦問題へ言及しているエントリいくつか

こんな内容で「中道右派」を自称する意味がわからない。
慰安婦問題でいつも感じること

必要悪として売春施設を基地や駐屯地のそばにすえるのは理解できるし、あるいはやむを得ないと私も思うが、だからと言ってもろもろの罪は消えてなくならない。

橋下徹大阪市長と認識が大差ない。「やむを得ない」という考えに、何か具体的な根拠はあるのだろうか。

ここで私がいつも言いたくなることは、

慰安婦の女性たちに、現在でも兵士たちのために体を売る女性たちに、売春婦や風俗嬢たちに、なんでもっと素直に「ありがとう」「ごめんなさい」という一言が言えないんだろう

と。

さまざまな経緯で売春を強制された人々に対して、社会として謝罪が必要だとして、なぜ補償するという話は出さないのだろうか。
それに、どういう理路で感謝の言葉を出すべきなのかが、よくわからない。自己決定権にもとづいて性的サービスを職業として選択した相手に対してならば、ことさら第三者が感謝する必要はないと思うのだが。
仮に、現代社会における性的サービス従事者がしばしば権利を充分に発揮できていないという前提で話しているならば、必要なのは感謝の言葉とは別にあるのではないか。

本来政治的に扱ってはならない問題を救う唯一の方法はそれしかないし、外交のような難しいことはよく分からないが、他国からの批判を封じるにもこれしかないと思う(それでも批判し続けると赤の他人からはたいていアホに見えるもんだ)。そして、日本から米国からアジア諸国から、みんな売春婦や風俗嬢にちゃんと頭を下げるしかないんだろう。

「一言」で他国からの批判を封じられるという発想や、「一言」があれば批判を続ける他国が「アホ」に見えるという発想に、とてつもない意識の断絶を感じる。
そもそも「必要悪」という意識で温存させたい立場から、そのような「一言」が出されても、どれほどの重みがあるのだろうか。


次のエントリはタイトルで自己紹介しているのでわかりやすい。
http://anond.hatelabo.jp/20130515060032

あの発言自体は悪くない。
だって、あれ平時の性欲をどうするかって問題でしょ。
なんで戦時中の慰安婦がでてくるんだよwwwと。

あの発言自体には問題無かったのに、戦時と絡みつけたらそりゃ慰安婦問題として叩かれるだろwww

順序が逆だ。さまざまな場所で取材の細かい経緯が公開されているが、橋下市長は現在の話から始めていたわけではない。
まず村山談話についての見解を問われて、慰安婦問題へ言及したのが先だ。
橋下徹大阪市長「米軍の風俗業活用を」はいかなる文脈で発言されたのか(2013年5月13日) / 大阪市長・橋下徹氏ぶらさがり取材全文文字起こし | SYNODOS -シノドス-

僕は、従軍慰安婦問題だってね、慰安婦の方に対しては優しい言葉をしっかりかけなきゃいけないし、優しい気持ちで接しなければいけない。意に反してそういう職業に就いたということであれば、そのことについては配慮しなければいけませんが。
しかし、なぜ、日本の従軍慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるかというと、その当時、慰安婦制度っていうのは世界各国の軍は持っていたんですよ。

つまり、午前の時点では他国の事例に言及しつつも、あくまで「当時」のこととして橋下市長は語っていた。
そして午後にあらためて慰安婦問題の見解を問われた時、「その当時は必要だったんでしょうね」と市長は答えた。それに対して「今は違う?」と記者に質問され、米軍司令官の話を持ち出した。
橋下徹大阪市長「米軍の風俗業活用を」はいかなる文脈で発言されたのか(2013年5月13日) / 大阪市長・橋下徹氏ぶらさがり取材全文文字起こし | SYNODOS -シノドス- | ページ 2

でも、慰安婦制度じゃなくても風俗業ってものは必要だと思いますよ。それは。だから、僕は沖縄の海兵隊普天間に行った時に司令官の方に、もっと風俗業活用して欲しいって言ったんですよ。そしたら司令官はもう凍り付いたように苦笑いになってしまって、「米軍ではオフリミッツだ」と「禁止」っていう風に言っているっていうんですけどね、そんな建前みたいなこというからおかしくなるんですよと。

この橋下発言が報じられた時、司令官の顔は再び凍ったかもしれない。
ちなみに少し後の質疑で、事件との因果関係を単純に肯定しているわけではないというくだりもある。全体を見ると、結局「発散」の話に戻っているが。

活用したから事件がおさまるという風な因果関係にあるようなものではないでしょうけど、でも、そういうのを真正面から認めないと、建前論ばかりでやってたらダメですよ。そりゃあ兵士なんてのは、日本の国民は一切そういうこと考えずに成長するもんですから、あんま日本国民考えたことないでしょうが、自分の命を落とすかもわかんないような、そんな極限の状況まで追い込まれるような、仕事というか任務なわけで。それをやっぱり、そういう面ではエネルギーはありあまっているわけですから、どっかで発散するとか、そういうことはしっかり考えないといけないんじゃないですか。


慰安婦問題に関する橋下氏の功績は、二つあると思う。 1. 世界最強のアメリ..

慰安婦問題に関する橋下氏の功績は、二つあると思う。

1. 世界最強のアメリカ軍に、性処理の問題を突きつけたこと。

ある意味で恥晒しな方法でアメリカを日本側に引き込んで、朝鮮が慰安婦問題で騒げばアメリカ軍に飛び火しかねない構図を作った。

あのような問題提起で、まともにとりあってもらえると思うのだろうか。それこそ「オフリミッツ」という建前を遵守するという回答で終わるだけだろう。米軍の具体的な状況や事例に基づかず、せいぜい橋下個人の見聞や体感に基づいた主張にすぎない。
林博史教授のような、従軍慰安婦問題を専門的に研究している歴史学者こそが、米軍と性的施設の関係をくわしく調べて批判している。
paper71

日本が独立を回復するとGHQの命令は出せなくなった。そこで米軍の経済的影響力を使って、性病感染源をオフリミッツにすることにより、その経済的打撃を憂慮する行政と地元の協力(性病に感染した女性の摘発と治療)を得るという方式をとった。極東軍司令部はオフリミッツがそうした道具に利用できることを理解していた(五二年七月七日の指揮下部隊への通達[77])。

上記論文には、米軍が太平洋戦争後すぐからオフリミッツを利用することで、性病管理を事実上のアウトソーシングしていた歴史が指摘されている。現実には「建前」と軍隊機構が密接に結びついているのだ。