法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダムAGE』第16話 馬小屋のガンダム

セム編開始の日野脚本。家のすぐ近くの馬小屋にガンダムを本当に隠してあるとか、子供心をくすぐるようなイベントをためらわず入れるところは、本当に長所だとは思う。もちろん前後との繋がりは色々とまずいが。
特に、フリット編で正体を隠して攻撃していた火星側が、現在では戦争で優勢に立っているという状況変化に違和感が大きい。自身の正当性を喧伝するためならフリット編で正体を明かしていても良かっただろうし、正体を明かすと不利になるからゲリラ戦をしかけていたなら正面から戦い続けてなぜ優勢になれる。


セムがなぜそこそこの操縦技術を持っているのかとか、周囲との人間関係はどうなっているのかとか、アセム編単独の基本設定はテンポ良く提示できている。それだけに、考証齟齬の大きな原因となるフリット編が不要という論に、つい賛同してしまいそうになる。
たしかに、最初から火星と地球圏が戦っているという導入でも問題なかったろう。主人公が初期しばらく普通に学園生活を送っている展開は過去の『ガンダム』でも珍しいし、充分に独自性を出せたはず*1


ただ、型落ちのガンダムが敵の新型に勝利したところは、けっこう現実の兵器でも三十年以上前のものが現役だったりするから、そう違和感はない。どちらかというと、プロペラ戦闘機がジェット戦闘機にとって変わるようなブレイクスルーが短期間で何度も起きた宇宙世紀が異例なのだ。
つたない技量を懸命さで押し切って敵に勝利した戦闘も悪くない。市街地戦闘で建造物と対比されてMSの巨大感があり、後半に草原で戦うことも変化を生んでいる。そして、名も無き味方のMSジェノアスが要所要所で手助けする描写が良い。ガンダムに比して弱いジェノアスを弱く描いたまま活躍させ、戦いに不慣れな主人公が勝利する説得力を上げていた。
コンテ演出は助監督の酒井和男ガンダム起動場面で擬似的に回り込んだり、今回のコンテは被写体を中心にとらえつつも空間の広がりを描く、面白いカットが多かった。


あと、次回サブタイトルは『セックスと嘘とビデオテープ』みたいだな。

*1:映画『機動戦士ガンダムF91』で描かれているといってもいいが、映画ゆえに普通の生活を送る描写は序盤早々に終わってしまった。