法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダムAGE』第6話 ファーデーンの光と影/第7話 進化するガンダム

第6話は、とにかく終盤の流れ、特に主人公の言動がおかしい。
サラブとエウバ、2勢力の争いを止めようとして勝手に出撃した主人公が、途中で突如として現れたUEと戦闘し、終わった後で一方の勢力に拘束されそうになると「僕はコロニーを守ったんだ!」と叫ぶ。いや、コロニー内勢力争いに介入する気まんまんだったじゃんフリット君。
同じ流れでも、UEが遠くに見えているのにサラブとエウバは目前の敵対勢力にかまけていて気づかず、しかたなく主人公が出撃してUEを撃退したという展開であれば、ずっと自然だったはず*1。出来事を起こす順序がおかしい。
せっかくTVアニメのガンダムでは珍しく市街戦に力が入るかと思えば、戦闘時にシャッターがせりあがる思いつきのような設定で効果が半減。イワークのように住みにくい場所へ追いやられている人々がいる設定なのだから、そういうところでサラブとエウバが戦っているという設定で充分だろう。市街地を描くのが背景美術に負担がかかるというなら、イワークの住むあたりは外壁の装飾や塗装に力を入れる余裕がないという設定で問題ないはず。
複数のMSが市街地で歩いて戦闘しあう映像はTVアニメではひさしぶりで良かったし、作業用MSがこけの一念を通す場面もガンダムらしい良さがあった。しかし、日野社長は話の流れだけ提示して、脚本作業は専門家に任すべきではないか。面白げなイベントを並べる*2ところまでは娯楽作家として良いのだが、細部をつめようという努力が感じられない。


第7話では、過去の戦争を今もひきずっている大人達を主人公が批判したら、君達も復讐心で動いていると指摘が返ってくる描写が好印象。他にも、安易に帰すとなめられるので歓待しつつ拘束したままにする政治描写や、自分の土地ゆえの愛郷心は持っているという描写があって、前回と違って人物像に奥行きがある。主人公と対立する相手にきちんと相応の理屈があるので、日野脚本らしくないなと思ったら、兵頭一歩脚本だった。
シャッターに守られた小競り合いではない本気のMSバトルが巨大感たっぷりに展開され、弱いパイロットもせいいっぱい時間稼ぎしようとする描写がある。ところどころにツッコミどころは残っていたが、今回以上の水準が守られるなら文句はない。感想を見てまわると第6話に続いて評判が悪いものの、キャラクターが根底に持っている描写を掘り下げたり、主人公と対立するキャラクターが相応に独自の思想を持っているかのように動くところは、明らかに日野脚本と違っている。
あと、タイタスが登場した時の強調されたパースや、奥側の手足が影で真っ黒に塗りつぶされている省略法から、大張正己の流れをつぐ大塚健作画監督と予想したら、正解だった。地表をガンダムが疾駆するシーンも、演出としては特にどうということもないが、線の省略やフォルムは良い感じ。

*1:というか、この展開を次の第7話でやった。

*2:たいてい既視感のあるイベントにすぎないが、普通の作家ならひねりたくなるところをてらいなく見せるのは、ある種の長所ではあると思う。