『ふたりはプリキュア』の根底にあるのは「日常の中で勇気を出す話」です。たとえばノーマン・ロックウェルの絵画「The Problem We All Live With」(注)のあの黒人の女の子。「学校に行く」というただそのことが、彼女にとってどれほど勇気がいったことか! もちろん、そこまで政治的・歴史的なテーマはなくとも、僕は観た人一人一人が小さな勇気の火種を持ってもらえるような作品を作りたかった。
注=「The Problem We All Live With(共有すべき問題)」 アメリカ全体が人種差別を当然としていた1960年代の絵画。白いワンピースを着た黒人の小学生の女の子がスーツの男性=連邦保安官に囲まれ、たった独りで登校する姿を描いた作品だ。
ゾンビ映画というジャンルそのものを作りあげた巨匠によるフェイクドキュメンタリー*1をはじめ、これまでいろいろなPOVホラーを見てきたが、劇中劇『ONE CUT OF THE DEAD』の完成度は上位に入る。
劇中台詞のとおり舞台となる廃墟には雰囲気があるし、廃墟から森へ逃げたり小屋に隠れたりと、ワンシーンなりに情景が変化に富んでいる。人体切断などの特殊メイクも、きちんと実物大のそれを複数用意して、低予算とは感じさせない。ワンカット撮影そのものも、カメラが階段を昇り降りしたりして単調な構図になることをさけている。
尺が短いおかげでゾンビの襲撃が多くてダレないし、劇中劇中劇の男女のやりとりが劇中劇の男女のやりとりで反復されるという構成も美しい。
そして、それなりに劇中劇がよくできているからこそ、つたない部分が印象的に浮かびあがり、その種明かしを再現していく後半に納得感があった。