法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『Fate/stay night [Heaven's Feel]』 II.lost butterfly

 闇の中で英雄たちが騙しあい殺しあうデスゲームが展開される日々に、衛宮士郎は後輩の間桐桜と心身の距離を縮めていく。しかし桜の祖父、間桐臓硯が戦いの前面に出て、その過去からつづく計画が明かされ、士郎は究極の選択をつきつけられる……


 三部作の二作目として、2019年に公開されたアニメ映画。ゲーム「Fate/stay night 」の「Heaven's Feel」ルートを映像化する企画において、その凄惨な真相を明らかにする。

 一作目*1もさまざまなホラー映画の要素を感じたが、今回は日本家屋を舞台とした陰々鬱々としたサイコホラーのよう。家族という檻にとらわれた悪夢から『来る』*2も思い出す。
 エロもグロも実写B級ホラーに出てくるレベルではあるが、すでに全年齢向けのアニメ化を重ねてきたシリーズで展開されるとインパクトがある。特にメインヒロインの言動には、そういえば原作ゲームは成年向けポルノという枠組みで伝奇ファンタジーを展開していたな、と見ながら思い出す。よくレーティングがPG12におさまったものだ。
 アクションの大半は中盤にまとめて配置。召喚された伝説的な超人たちの派手な戦闘が延々と続くが、飛び道具の有無や威力の強大さ、同じ舞台でも建物の近くから周辺へうつることで状況の変化を感じさせ、途中から『もののけ姫』のような何もかもを飲みこむ敵からの脱出へ目的を変えて、けっこう飽きずに楽しめた。


 ただ今回もライダーの初戦は敵をあまり追求せず、緊張感がない。もちろん敵マスターの器のちいささは明らかだし、そもそも真の敵でないことはすぐに明かされるのだが、しかし真実を明かすまでは緊張感をもって底知れぬ相手のように描いてこそ落差を感じるものだろう。
 終盤も、主人公にとって最悪の敵のはずの老人のところへノコノコひとりで会いに行って、棒立ちで会話するところで危機感が消える。そこは原作の時代設定もあって携帯電話が普及していない社会だとしても、いやだからこそ公衆電話などをつかって相手とは距離をとりながら情報共有をするような描写にアレンジしても良かった。