法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『獣装機攻ダンクーガノヴァ』雑多な感想

 1980年代に人気だったアニメシリーズ『超獣機神ダンクーガ』の、遠い未来という設定でつくられた2007年のTVアニメ。

 監督は若手アニメーターとして過去作で敵デザインなどを担当した大張正己で、シリーズ構成は同じ制作会社葦プロダクションの別作品によく参加していた首藤剛志


 内容としては、各話の戦いは大いなる脅威へそなえるためで、最終的に人間のみがもつ無限の可能性でたちむかう、いつもと変わらぬ大張アニメ。OPも各種ロボット演出も月面決戦も既視感がつきまとうというか伝統芸能というか……
 2002年から2004年にかけて展開された『超重神グラヴィオン』シリーズが大張アニメらしいナルシシズムを前面に出して笑わせつつ感動させたことに対して、今作は首藤脚本の作風もあってかナルシシズムをスカして脱力させる。主題歌も挿入歌も異様に軽くて、まったく勇壮さを感じさせない。脚本家コラムによるととっておきのネタという主人公の赤ちゃんポスト出生は、さらっと語られることもあって、よくある捨て子ネタと違いを感じない*1
 しかし原典が3クールかけたTVシリーズで完結できず複数のOVAにつづいたことと比べて、手癖のような構成なので1クールでもそれなりに話はまとまっている。脚本家コラムに書かれた現場の混乱はほとんど感じない。最終決戦での生身の決着も唐突な技の説明台詞にこそ首をかしげたが、搭乗機を乗り捨てながら敵の中心に生身でたどりついた勢いがあるので目をつぶれる。手描きメカ作画の見どころも多く、紺野直幸が原画に参加した回など作画の個性が良い意味で出ていた。ふたつの存在に分離した超常的なキャラクターを若本規夫が演じて、敵側はいつもの演技なのに、味方側ではひさしぶりのクールな演技が楽しめる面白味もあった。
 また、さらりと語られる世界設定の基盤が、2011年の東日本大震災をへた現在に見返すと未来予知のように感じられた。第二次関東大震災で日本が貧しくなり、少子化成人年齢がひきさげられ、円安と物価高騰に苦しんでいる。しかもDVDに収録された第6話未放送カットでは、「日本が世界に誇れるのは、昔は車、精密機械。でも今は……オタク向けのアニメとゲームソフトくらい?」という台詞が、オタク文化の賞揚ではなく社会の停滞として語られる。そんな貧しい日本だからこそ主人公のような搭乗員を秘密裏に集める対象となった、といった説明まである。後の描写と比べると、ここはその場しのぎの釈明の可能性もあるが。