法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『魔術士オーフェン』雑多な感想

 秋田禎信によるライトノベルシリーズの序盤を、わたなべひろし監督が1998年にTVアニメ化。J.C.STAFFが制作してキャラクターデザインの相澤昌弘や岩倉和憲が参加している。

 全体をとおして岩倉和憲のエフェクト作画が絶品なことで有名。スタジオディーンが2020年から制作しているリメイクTVアニメ『魔術士オーフェンはぐれ旅』と比べても圧倒的に作画は良好だ。
 細かいところでは第1話、氷の入ったクリームソーダを少し混ぜる描写が、動きは少ないが氷のハイライト加減などが当時としては良好。続くエピソードでもモップの毛一本一本をていねいに手描きで作画。第8話は冒頭の水飛沫を線で表現したのがモダンで、影や透過光のつかいかたなど前半は新房演出っぽさがある。
 さらにOPは1も2も本当に良い。またEDの2と本編でゆめ太カンパニーがデジタルペイントした一回だけ、アナログではなくデジタル彩色なところがアニメ制作の過渡期らしくて歴史を感じさせる。


 物語は原作ファンには不評だったらしいが、未読なまま視聴した立場としては初視聴の当時も再視聴した現在も問題なく楽しめた。
 原作に忠実らしいリメイクTVアニメと見くらべて、ひとりでもがいていた主人公オーフェン*1が、ステファニーをはじめとして旅の仲間を集めるようになり、少しずつ事態の解決のピースを集めていく連続ストーリーというコンセプトは理解しやすい。
 第5話から第6話は原作の後のエピソードをひろったらしい子狼*2を、マスコットにするアニメ向けアレンジと、マジクのキャラの掘り下げに活用されている。
 リメイクTVアニメと違って、主人公の師匠チャイルドマンと姉アザリーを後半まで入れかえさせないことで、主人公の数年間を的外れにせず、アザリー個人の策謀の限界も描けている。
 そして人助けなどでチャイルドマンの立派さを旅の中でオーフェンに認識させ、ついにハーティアの説得に心を動かしたエピソードで、あえて入れかえがおこなわれることでオーフェンが再びチャイルドマン不信に陥る。皮肉なディスコミュニケーション展開がドラマチックに状況の印象を強める。


 連続視聴するとトリックスターが多すぎという印象はあったが、チャイルドマンの偉大さをオーフェンに伝えるためハーティアの立ち位置を変えたと思えば理解はできる。
 あと、ステファニーは後で知った原作の位置づけと比べて、明らかに良いアレンジだ。オーフェン個人がちょっと距離を感じているくらいで、そういう人物として幸せをつかんだ結末もふくめて好ましい。しかも物語の根幹にある入れかわり展開の予兆的なキャラクターとしても効果をあげている。

*1:弟子マジクはオーフェンを尊敬しつづけるがゆえ、変化をうながさない。

*2:この物語の世界観ではドラゴンに位置づけられる。