「ヒミツゲンシュ犬」は、のび太が0点の答案をごまかそうと父の万年筆で偽造しようとして、うっかり万年筆を壊してしまう。秘密にすべきことが増えて、ドラえもんに泣きつくと……
かつて単行本未収録だった原作を、小林英造脚本、森山瑠潮コンテ演出でアニメ化。
物語の構造は「ポータブル国会」*1に近いが、勝手な理由で秘密を隠そうとするのがのび太以外の子供たちもふくまれること、秘密道具が議会を象徴する無機物ではなく一匹の飼い犬を模していることで、人間の無茶な願いをたくされる問題に違ったニュアンスが生まれている。
無理やり願いの束を食べさせられる秘密道具が哀れで、かわいらしい。最後に願いの束を吐き出してしまったことで、のび太だけでなく他の子供も怒られていることを住宅街に灯がともる夜景で表現したスケール感も良かった。
「水玉カプセルの旅」は、町内会の川掃除にいきたくないのび太のため、ドラえもんが水のありがたさを秘密道具で教えようとする。水玉サイズに縮小して、水の循環を追う旅に出る……
2005年リニューアル前のアニメオリジナルストーリーを演出作画だけ交代してリメイク。志茂文彦脚本に平井峰太郎コンテというスタッフ構成は、今になってみると意外な感がある。2005年リニューアル直前まではVHSに録画していたし、未整理なので見返すことは困難だが。
しかし内容は秘密道具の機能で自然を体験的に観察する物語として楽しい。水の循環を追いかける原作として「水はみていた」*2もあるが、こちらは間近で水のおかれた環境を知るニュアンスがくわわっていて、雲のなかはマイナス40度だから出てはいけないといった豆知識でサスペンスを高める。河川の汚染問題もゴミ捨ての直接的な被害にあうことで実感的な描写となった。
最後はややリニューアル前らしい教訓くささが出てしまった感もあるが、こういう子供向けアニメがあってもいい。