法華狼の日記

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『ドラえもん』野比家は三十階/暴走!プレゼントの木/水はみていた

今週から三本立てに番組フォーマットを変更。あわせてタイトル画面も、リニューアル初期のようなデザインになった。
もともと原作を映像化するにおいて、現代のアニメのテンポでは描写を足さないとならないので、原作を尊重する時間配分としては適度なところ。ただフォーマット変更を告知するため、せっかく少し前になくなった本編内の告知テロップがあったのだけ残念。
また公式サイトでは、各話のあらすじが書かれた「おはなしリスト」に、今回から原作の該当エピソードが明記されるようになった。
2015年5月15日(金曜日)「野比家は三十階」「暴走!プレゼントの木」「水はみていた」|ドラえもん|テレビ朝日


野比家は三十階」は、高層マンションに住む友人をうらやみ、夜中にこっそり高層マンションの生活を体験する。
途中の階層を増やす「四次元たてましブロック」とは違って、エレベーターのように家そのものを上昇させ、疑似的な高層建築として楽しむ。夜間にふたりだけで抒情的に楽しむところは、家ごと海まで旅行した「夜行列車はぼくの家」*1にも似ている。
アニメオリジナル描写としては、夜景を見ながら夜食を楽しもうとする場面の台詞が面白い。二階が三十階になるよう設定したから一階は二十九階になる……というのび太のツッコミが自然で、むしろ原作にないことが不思議だ。0点の答案が風にふきちらされる場面で、同じように洗濯物が飛んだら大変だろうという原作の台詞を変えたのも良いアレンジ。現代ならば洗濯物は屋内で乾燥させるだろう。
コンテはパクキョンスンで、作画監督は田中薫。的確なパースで描かれる夜景のリアリティある美しさと、回転したり台風で飛ばされる家のていねいな作画が良かった。


「暴走!プレゼントの木」は、しずちゃんへの誕生日プレゼントのため、一年前から育てようとして忘れていた秘密道具が暴走する。
たしかアニメオリジナルストーリーだが、誕生日プレゼントのエピソードは原作でも多いし、一年前ののび太がタイムマシンで確認しにくる導入もうまく、ちゃんと『ドラえもん』らしさがある。
展開に大きな意外性はないが、のび太と対比するように出木杉が育てたバラをプレゼントに選んだり、暴走した秘密道具の出したプレゼントが設定を反映していたり、それらしい描写にてっしているので違和感もない。
暴走した「木」の付けPANで予想したとおり、コンテは善総一郎監督。塀ごしに庭の内と外を対比するレイアウトが印象に残った。


「水はみていた」は、さまざまな水が過去に映した情景を秘密道具で楽しんでいたところ、ちいさなドラマにかかわることになる。
友人のトラブルをのぞくという下世話な楽しみもあるし、水道水がどのように家庭にとどくかという教育的な描写も好奇心をそそる。後半から主軸となる田舎と都市の対比だが、以前のアニメ化においては違和感があった。しかし成長幻想が完全に失われた今、ふたたび現代的な情景になっている。
また、しずちゃんの風呂場をのぞく場面は、半裸まで見てしまう原作*2と違って、今回は未遂で終わる。原作通りのちいさなしっぺ返しもあるし、オチでもダメ押しするように追及される。原作の展開を尊重しつつつ、それに問題があることは無視しない。
やや止め絵も目立ったが、最後まで誠実に映像化しており、アニメスタッフに好感を持った。

*1:近年に八鍬新之介がコンテ演出を担当した時がすばらしく、その名前を印象に残した。『ドラえもん』雲に乗って学校へ/夜行列車はぼくの家 - 法華狼の日記

*2:個別「20080229074753」の写真、画像 - hokke-ookami's fotolife