「山おく村の怪事件」は、両親の結婚記念日に何を贈ろうかとのび太が頭を悩まし、父は日曜だから休もうとしているが、工事の騒音で邪魔されていた。そこにドラミちゃんが登場して……
2009年にアニメ化*1した原作を、前半のみの短編としてリメイク。ややギャグを増やしつつも原作どおりの清水東脚本に、今井一暁コンテ。
何よりも中本和樹の単独作画監督による一人原画が特色。全体的に良好な作画で、いつもと違うシチュエーションをそつなく映像化していた。
もどった街中でちゃんと冒頭の工事音がして、ジャイアンとスネ夫に声が聞こえず、行き倒れの物真似と判断して去っていくアニメオリジナル描写が良かった。
2009年版では弱められた怪奇色も出ている。ただ、せっかくなら雪だるまが動く場面まで真相を隠して、街中で救出された謎めいたニュースからさかのぼるように真相を見せていくアレンジをしてもおもしろいかも。
しかし、無人だからと他人の家をつかうシチュエーションは、廃墟ブームがつづいている今だからこそ逆に現実の問題と関連づけられそうな危険も感じた。今後にアニメ化するときは、のび太たちが入る家は誰でも自由に使えるよう告知された集会所などの設定が追加されるかも。
「争奪戦回避銃」は、演劇の主役や給食のプリンや理科の顕微鏡をジャイアンが独占し、のび太は不満をもらす。おまけにドラえもんがのび太のどら焼きを食べかけていて……
これまで演出をつづけていた岩岡夢子の初コンテ演出回にして、今年初のアニメオリジナルストーリー。アニメアール原画回でもある。オリジナル秘密道具は平等に分割するかわりに性質も薄まるという、おすそわけガムを思い出させる設定*2。
どら焼きを食べかけて抗議された後、秘密道具の機能説明で事実上どら焼きを半分食べて再び抗議されるドラえもんの意地汚さがかわいい。
そして漫画こそ面白味のなさに三方一両損で捨てられたが、途中からジャイアンは機能がおちた分割品すべてを独占。さらにジャイアン自身が事故で小さく分裂して、予想外の方向に転がっていく。
小さい3人になっても、協力して非道をはたらいたり、たがいに争ったりするジャイアン。そして巌流島の決闘劇で、武蔵と小次郎とお通をすべて演じる。まさか冒頭の全部主役がシュールなオチの情景につながるとは思わなかった。
*1:hokke-ookami.hatenablog.com
*2:あくまでスネ夫が感想で語るだけの、あまり活用されない設定だが。 hokke-ookami.hatenablog.com