「ばくはつこしょう」は、ねぼうして遅刻しそうなのび太に泣きつかれて、ドラえもんはクシャミの威力で目的地へ飛ぶ秘密道具を出す。しかしクシャミをする人間は大変で……
2013年にアニメ化*1した短編をリメイク。演出の江上潔はサンライズのベテラン演出家だが、おそらく初参加。通常どおり番組半分の枠なのに演出助手がいて、作画監督補佐がふたり、原画や第二原画も多数。よほどスケジュールに問題があったのだろうか。
しかし絵柄の統一感こそ弱めだが、作画そのものは悪くない。序盤の道路奥からフルショットで4人が歩いてくるカットのように、スタジオジブリですら回避しそうなアニメーションを普通にくりだしてくる。住宅群ごしにちいさくのび太が飛んでいるのを近景のジャイアンが見たり、飛行をテーマにしたエピソードらしい空間を広くつかった絵コンテもいい。コショーによる煙エフェクト作画も悪くない。
冒頭からクシャミしては四次元ポケットから普通のボックスティッシュを出すドラえもんも、季節感を表現しつつ肩透かしな天丼ギャグとして笑わせてくれた。
ただ、ジャイアンがあちこちの地域に行くダジャレオチはしつこいし、剛田家に帰ってきて大変なことになる多段オチも間延びしている。
「バランストレーナー」は、乗馬やサーフィンの腕前をスネ夫が別荘で自慢するという。そこでのび太が珍しく招待された。少し後にスネ夫がやってきて、実は乗馬もサーフィンもできないという……
末期原作を2005年リニューアル以降で初アニメ化。小倉宏文監督のコンテだが、今回は雰囲気にあわないギャグも少なめで見やすかった。
アニメオリジナルでスネ夫の自慢にサーフィンを追加。スネ夫が空き地の土管を波に見立てたり、ジャイアンが参加して山の斜面でビッグウェーブに挑戦したり、アニメスタッフが今回の秘密道具の根源にあるゴッコ遊びの楽しさを理解していて、ストーリー上の必然性こそ弱くても全体の雰囲気から浮いていない。ロングショットを活用したビッグウェーブの雄大な表現も、よく動く作画ともども見ごたえあった。
座布団が動きと鳴き声だけで馬や牛のように感じさせるところも、アニメーションの根源的な力を感じさせる。ここは原作の時点でも地味にすごかったが、その良さをアニメとして発展させていた。