法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ハリーのしっぽ/ポスターになったのび太

「ハリーのしっぽ」は、野比家が物置をかたづけていた時、巻物が出てくる。それは明治時代に書かれた、天から災いがきたという体験談だった。のび太ドラえもんは真相を調べるためタイムマシンで行ったが……
中期から後期にあたる原作を、2005年以降に初アニメ化。のび太の祖父の物語だったが、時代をあわせるためか、のび太の高祖父のエピソードに変更。
絵コンテは新作では2018年*1以来の高橋敦史。タイムスリップした明治時代のディテールが細かい。ただ風景を資料のひきうつしで見せるのではなく、どら焼きの原型を試食させてもらってドラえもんが喜んだり、のび太がラムネを飲んで現代と変わらないと評したりして、実感的な過去として描こうとしていた。
他にビニール製の浮輪が時代をへて、ヨレヨレになった原作にくわえて、ボロボロに崩れていく描写を足す。ただ原作をひきうつすのではなく、よりリアルに、そしてアニメとして動きをつける方向にアレンジしていることが素晴らしい。
ただ、すでに1986年にハレー彗星が接近していたことは劇中で言及してほしかった。その直前に描かれた原作は時事ネタ作品でもあった。さまざまな理由であまりよく見えずに社会的な記憶に残らなかったこともふくめて説明すれば、いくつもの歴史を超えて今があるという感動が増したかもしれない。


「ポスターになったのび太」は、スネ夫の部屋にかざられているポスターがのび太はうらやましくなり、自作するがうまくいかない。そんな時に母から粗大ゴミを出すように命じられて、その大変さに困るが……
つくしやまコンテ演出で、前半と同じ単行本に収録された、同じゴミ整理エピソードの原作をアニメ化。こちらもかなり作画が良好。くしゃくしゃになったのび太をちゃんと手描きでそれらしく作画し、動かしていることに感心した。原画に山口晋や大塚正実など。劇中ポスターもさまざまな作品のパロディで、それらしいデザインにしあげている。
いろいろなものを平面的に収納できる紙状の秘密道具を、生きているポスターへと発展させる物語。最初から最後まで、ほぼプロットしては原作に忠実。
のび太が眠りこけるまで、しずちゃん出木杉のやりとりを原作よりも増やしている。また、原作ではしずちゃんのび太ポスターを丸めることに参加するが、アニメではおだやかな性格によせているためか今回は出木杉がひとりでゴミ箱へ捨てる。

*1:hokke-ookami.hatenablog.comただし2021年に原画にクレジットされたことがある。そのエピソードの絵コンテは今回の演出を担当した善聡一郎。 hokke-ookami.hatenablog.com