法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』どら焼きが消えた日/ドラヤキ星人の逆襲!?/さがせ!野比家のへっぽこご先祖さま/勝利を呼ぶチアリーダー手ぶくろ

 誕生日SP。まず通常枠で中編を再放送して、別番組をはさんでから19時から三本立ての1時間SPを放送。


「どら焼きが消えた日」は2021年の誕生日SPで放送された中編の再放送。今年の変則的な放送形態も2021年を踏襲したものだろうか。
『ドラえもん』のび太の恐竜/のび太の惑星探査ミッション/マジックの使い道/どら焼きが消えた日 - 法華狼の日記
 続編を放送するにあたって再放送された前日譚にあたる。作画が良好なだけでなく、冒頭から面白いトリックをしかけたり、記憶より楽しいエピソードで当惑した。
 しかしすぐに物語の都合を優先した偶然が連続しはじめるし、先述のトリックが展開にまったく不要だったりして、当時に感じた印象の悪さを思い出した。
 どんでん返しがただの驚かしでしかないと、ネタを知りながら見返した時に茶番感が強くなってしまう。そのため当時の感想よりも悪く感じてしまった。


「ドラヤキ星人の逆襲!?」は、誕生日を前にしたドラえもんの前に、ふたたびドラヤキ星人があらわれる。それはジャイアンスネ夫の変装だったが、地球には本当にドラヤキ星人の子供が残っていて……
 清水東脚本に森山瑠潮と善聡一郎の共同コンテで、アニメオリジナルストーリーの続編ながら中核のスタッフは交代。
 とりあえず物語の都合にあわせた偶然は目立たなくなった。前回ほどの派手な展開はないが、誕生日を祝う対象であるドラえもんと同じ好物をもつ敵の子供との、奇妙な同居を描くドラマとして楽しむことはできた。
 しかし「土良矢木夫」なるどら焼き博士の人気Youtuberが存在する世界観が理解できない。ドラえもんの過剰などら焼き愛好は、あくまで作中世界でも異常という位置づけで、だからこそ周囲が当惑するギャグとして成立している。むしろどら焼きが好きなわけでもない俗悪Youtuberが面白半分に特別などら焼きの抽選を当てようとして愛好家の邪魔をするような展開でも同じ物語が成立したのではないだろうか。


「勝利を呼ぶチアリーダー手ぶくろ」は、女子ふたりがスネ夫を応援していたため、のび太はオセロで逆転敗北してしまったという。そこでドラえもんが強制的に応援させる秘密道具を出す……
 2009年に安藤敏彦コンテ演出で映像化*1した原作を高柳哲司コンテでリメイク。
 前回と同じく秘密道具「チアガール手ぶくろ」はサブタイトルのように「チアリーダー」に変更され、今回は原作でお婆さんが応援する局面でいっしょにいたお爺さんも応援に参加する。
 応援では下着などはまったく見せず、チアリーディングのはげしい動きを映像化してアニメーションとして楽しい。さらにクライマックスは応援だけでなく相撲の作画も良好。


「さがせ!野比家のへっぽこご先祖さま」は、ジャイアンスネ夫VRゲームからのび太は仲間外れにされる。未来でもセワシが同じように仲間外れにされていたが、啓発イベントで機材を貸し出してもらえると知り……
 導入こそのび太の日常だが、セワシドラえもんが協力するドラマに重点をおいたアニメオリジナルストーリー。脚本はこういうしかけがあるエピソードをよく担当する水野宗徳。
 前半は、のび太セワシを対比させることで、単独ではそれほどよくできているわけでもない未来のサバイバルゲームを楽しいコメディにしあげていた。機材をレンタルされた立場はそうとわかる服装を強制されたり、課金しなければゲームで公平に戦えなかったりで未来のネットゲームらしさもある。
 後半は、原作にちりばめられた先祖や親のエピソードをセワシの立場で見聞していった果てにのび太の存在を知るという、作品の前日譚のようなしあがり。別視点の外伝として完成度が高い。