法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』雑多な感想

 WEB小説を商業化リメイクした同名ライトノベルを2024年7月からTVアニメ化。エロコメやエログロを多く手がけてきたティー・エヌ・ケーが制作。

 アルコールで酩酊しないと自由な配信ができない序盤の主人公に、悪い意味でジュディ・ガーランドを思い出す……

 そのストロングゼロのようなアルコール飲料を痛飲しつづける主人公キャラクターをはじめ、ひたすら浅いネットミームをつめこんだだけのような描写がつづく。
 さして意外性がないパターン化されたやりとりが詰め込まれているがゆえ、理解に頭をつかう必要がない独特のストレスの少なさはあったが……ここまでニコニコ動画や匿名掲示板のような定型のやりとりだけで進行するアニメというのもなかなかない。たぶん苦手な人は決定的にあわないだろう。
 主人公を女性にすることで女性相手のセクハラを正面から描写しつづけるのも、悪い意味で現在の日本のインターネットらしさがある。あと数年もすれば面白さがまったくわからなくなりそうだが、さらに十数年たてば時代の記録としての価値が出てきそうな感じもある。


 映像作品としては不思議なことに、なぜか配信者の生身や日常シーンでもVTuberアバター姿でキャラクターを描写。今敏作品のようにしろとまではいわないが、外見を自由に変化させられる媒体ならではの面白味がまったく出ていない。

パプリカ

パプリカ

  • 林原 めぐみ
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 これでは同年の『真夜中ぱんチ』*1のようなアニメ的キャラクターが配信者になる作品でも情景として大差がない。あまり作画リソースが潤沢でない作品で装飾の多いキャラクター作画をつづける意味もよくわからない。
 かわりにモブの顔をうつさない方針があり、ようやく第4話で期待していたしかけが機能するが、以前からアバターをつかわない状態のVTuberで近い描写をつづけることもできただろう。意外性もさほどなく、人間関係がせまい作品なので真相が明かされる以前に正体に気づいてしまった。
 個別回では第10話の人狼風ゲームは楽しかった。敵味方を誤認させるトリックは見えすいていたが、キャラクターが薄いVTuberが姿を隠していたことは実際に存在を忘れていたので驚いた。まさか初登場の時点から当該エピソードまでまともに描写されず印象づけもされていなかったことが伏線として機能するとは……ただ、アバターを演じるVTuberと、人狼という役割りを演じながら敵味方をさぐりあうゲームの、表現として似ているところをうまく重ねあわせれば、もっと良いエピソードになれたところが惜しい。
 他に最終回はギャグアニメやギャグマンガの最終回だけシリアスになるパターンをオーソドックスにこなしていて、コンテンツパッケージとしては優秀だった。IQが高いという設定はともかく、社会になじめなくて仮面をかぶっていたキャラクターがVTuberになることで仮面をはずせた逆説は回想描写もふくめて面白かったから、もう少し踏みこんだドラマを展開して良かったかもしれない。深く踏みこまず浅く終わったことで見やすくライトなエンタメとしてパッケージングできているとも思うが。