十年ほど前、「ならなしとり」というブログで外来生物問題をあつかっていたsalmo氏*1。
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生態系の保全問題で、安易な活動をしていた熊森協会などの批判で知られていた。
しかし近年、はてなブックマークを見ていると、首をかしげるコメントが目に入ることがたびたびある。
[B! メディア] 「最長」のおわり:「忖度」は脅されて? 霞が関どう変わった 反骨の元官僚2人に聞く - 毎日新聞
天下りと未成年への売春で職を追われた人間を反骨とか本気?
記事に登場する元官僚はふたり、前川喜平氏と佐藤優氏だが、佐藤氏が失職したのは議員だった鈴木宗男氏がらみの背任などが理由で、前川氏が辞職したのは天下り斡旋の責任をとるため。
両者に対する批判はさまざまあるだろうが、辞めた理由は「未成年への売春」とは関係がない。前川氏が出会い系バーにかよっていた報道は、政府の虚偽を告発した後だ。
前川喜平氏の「出会い系バー」通いを性的不祥事あつかいするならば、現政権にもっとまずい閣僚がいるのでは - 法華狼の日記
上記エントリのように、出会い系バーは売春とはイコールではないし、すでに未成年が参加しないよう法規制されているという指摘もある。
また、日本の政府と軍隊による歴史的な被害者に対して、その責任者が犠牲者へ謝罪する表現をつくることを「ヘイト」と表現している。
[B! 差別] 韓国人もドン引き、慰安婦像新作『土下座するアベつき慰安婦像』がお披露目 - Togetter
これ、安倍首相だから3アウトだけどなぜかセーフなわけで、今上陛下、上皇陛下だったらさして政治に興味のないノンポリ層すらブチ切れるヘイトでしょ。年々、加速度的に反差別という言葉が薄っぺらくなっていく。
何がどのように「3アウト」なのか理解できない。ウィーン条約を拡大解釈した日韓合意ですら、表現規制のおよぶ範囲は公館近くの記念碑建立までだ。
ただ、この文脈で天皇制という階級差別を前提視する思想をもっているなら、反差別に対して敵意をもつことは自然ではあるだろう。
ツイッターでのアカウント名が「salmo(ポリコレめんどくさい@invasivespeacie」*2となっていることは、差別について何も考えていないことの正直な告白で良いと思う。そのような立場から「反差別」を論じられるとは思わないが。
ライブドアに配信された大紀元を情報源として中国を批判しようとしたこと、その情報が注目されていないことをいぶかしがっていることも、どうかと思った。
[B! 倫理] 中国の教科書が聖書の一節を歪曲 キリストが石で女性を殺害する内容に - ライブドアニュース
あまり話題になってないけど、シャルリもかくやの蛮行を国が法と道徳の教科書にするとか中国共産党はそんなにトランプ再選がお望みで?
大紀元は中国で弾圧されているカルト宗教の法輪功が出しているメディアで、共産党非難を優先するあまり情報源として信用できないことで知られている。
ただ、おそらく反語を意図していると思うが、中国共産党がトランプ再選を望んでいる可能性は少なくないとは思える。
それでも社会科学以外の分野なら一定の信頼がおけるかというと、かなり危ういものを感じている。具体的には「Fact Check 福島」批判への反論で、きちんと内容を精査しないものがあった。
[B! 東日本大震災] 私が「女性や在日コリアン差別に加担している」と事実無根のデマを流されてしまった件 - Togetter
津田と後藤のコラボレーションも1年以上も前か。んでもって昔からこういう風にレッテル貼りで口を封じようとしてきた連中なんだよな。
これについては当時に下記エントリで当該人物の発言をたしかめたが、在日コリアンを犯罪につなげる陰謀論的なツイートなどが多数あった。
「Fact Check 福島」自体の評価はさておいて、あまり周辺が良くないことは気になっていた - 法華狼の日記
日本軍慰安所制度についても、「売春」と位置づけることで日本を免罪できるかのようなツイートをしており、これは女性差別への加担といえるだろう。
そしてツイッターの発言も少し見ると、日本学術会議の任命拒否問題のような学問への政治介入についても、安倍政権のそれを矮小化しつつ、介入を当然視するようなツイートをしていた。
ガースーの今までのうっ憤を晴らすかのような奇襲&制圧前進を見ると、亀みたいに固く守って、気が付けばゆるゆると目的地に進んでいたアベちゃんはとんでもない忍耐力だったなぁ、と。多分、ガースーは前任ほど双方の面目とか落としどころとか配慮しないわ。
— salmo(ポリコレめんどくさい (@invasivespeacie) 2020年10月2日
学術会議、こうも数日で潮目が変わるものか。もともと、若手のキャリア形成に冷淡、数年前からの軍事研究排除など積み重ねた物の結果ではあるが。まぁ、俺もホメオパシーの対処しか擁護できるところないし。極め付きとして会員に平田オリザと上野千鶴子がいたらネットの若い人間は支持しないわ。
— salmo(ポリコレめんどくさい (@invasivespeacie) 2020年10月3日
もちろん、どのような組織でもさまざまな批判にさらされるものだが、salmo氏の論拠はどれも政権の介入を肯定する材料にはなるまい。
そもそも今回は上野千鶴子氏や平田オリザ氏が任命拒否されたわけではなく、むしろ加藤陽子氏のような保守的な学者が排除されたことが注目されてきた。
くわえて法の支配の軽視という問題は第二次安倍政権からくりかえされてきたことであり、日本学術会議側の問題ではありえない。公文書や統計の捏造や改竄をつづけ、それが暴かれても開きなおってきた過去の延長線上に今がある。
*1:以前に対立的にやりとりした時、idコールされても無視するむねを表明されたので、今回も通知がいくのは避けておく。比喩とかの話 - 法華狼の日記