法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

元しずかちゃん役の野村道子氏に取材した女性自身インタビューの、配信記事が興味深い

2020年10月13日号に掲載されたインタビュー記事が、インターネットでも配信されていた。
雑誌の公式サイトでは、『サザエさん』の二代目ワカメちゃんに選ばれ、テレビ朝日版『ドラえもん』の立ちあげに参加してから、両方を勇退するまでの思い出話がつづられている。
しずかちゃん演じた82歳声優「これからは声優界に恩返しを」 | 女性自身

「年齢による声の変化に合わせて、絵を描いてくれているんじゃないかと思うくらい、ごく自然に演じられたんです。でも、体力的な問題も出てくる。風邪をひけば長引くし、イベントで全国を回るのも限界。なにより、60歳を超えて『しずかちゃんのお姉さんです』とイベントで紹介されるのは、さすがに抵抗がありますよ」

04年ごろ『ドラえもん』の制作サイドからも「メンバーを刷新したい」と打診があった。 これを機に、野村さんは『サザエさん』も降板。ワカメちゃんを29年、しずかちゃんを26年演じ続けたが、最後の収録も“いつか同窓会をしよう”と約束したから、さみしさよりは、安堵感のほうが強かった。だが、野村さんはその後、がん闘病生活を送る夫で声優の内海賢二さんを支えることとなる。

野村さんにとって、悲しい別れは続く。ドラえもんファミリーとの「同窓会」をする約束も、ついに果たせなかったのだ。

「ペコさんの認知症がニュースになったと思ったら、かべさんが胃がんで15年に、肝さんが’16年に、立て続けに亡くなって……。“何でこんなときまで一緒なの!?”って、すごくショックでした」

「かなえたい夢はすべてかなって、思い残すことはないけど……。残りの人生、恩返しの意味も含めて、若手の育成を、もうちょっと頑張ってみようかな、と」という発言を最後にもってきているものの、全体としては追想がしめる。
声優時代の楽しい記憶と、病身の夫や仲間を見送った体験談という、いかにも高年齢向け女性雑誌らしいインタビュー記事だ。


しかしYAHOO!ニュースに配信された記事を読むと、まったく印象が異なる。
しずかちゃん演じた82歳声優の半生…1千万円使い込まれ裁判も(女性自身) - Yahoo!ニュース

週末の、静まりかえった都内のオフィス街の一角に、少し場違いな浴衣姿の若者が集まり、雑居ビルに吸い込まれていく。この日、若手声優を育成する「スクール・デュオ」の稽古場では、11人の生徒が、机を高座に見立てて、落語を披露していた。途中、言葉に詰まる生徒に、ソファに深く腰かけ、全体を見渡していた女性が助け船を出した。

「セリフが飛んでるよ~。誰か、プロンプ(セリフを教え、役者を助ける)してあげて」

声の主は、同スクール代表で、声優の野村道子さん(82)。

ここで登場するのは、声優業を『ドラえもん』と『サザエさん』にしぼってプロダクションを支えた経営者であり、現在も現場で声優の育成に心血をそそぐ指導者でもある野村氏。
無頓着な夫から賢プロダクションの経営をまかされ、マネージャーを研修させる余裕もなく人員の入れかわりのはげしかった歴史。親友と思っていた経理の女性が独立をしかけ、その1千万円のつかいこみも発覚した過去。新型コロナ禍で仕事が激減するなか、業界では安値のスクールで後進を育てる現在。
どれも声優プロダクション経営者のインタビューとして興味深い。不祥事が正面から語られにくいアニメ雑誌では読めない内容だ。


しかし共同通信などの配信社の記事が掲載される新聞によってつかわれる部分が少しずつ異なることはよくあるが、雑誌の配信記事でここまで印象が変わる内容は記憶にない*1
それとも興味関心がある分野の注目記事だから気づけただけで、これまでも同じくらい大きく内容が違うことは何度もあったのだろうか。


ここまで書いての追記になるが、女性自身サイトでもYAHOO!ニュース配信と同じ記事がアップロードされていた。よく調べておくべきだった。
しずかちゃん演じた82歳声優の半生…1千万円使い込まれ裁判も | 女性自身
おそらく雑誌上では一連の記事を別記事として配信し、それがはてなブックマークを別々に集めた結果が上記の印象の違いを生みだしたようだ。
つまりメディア側が差を生んだのではなく、インターネットで注目する客層の違いがここであらわれたと考えるべきなのだろう。原因は私のような読者側にあったわけだ。