法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』気球で世界一周!?/大ピンチ!スネ夫の答案

OPに挿入されるように、さまざまなかたちで恐竜が登場。さまざまな素材を編集した現OPだからこそ可能な手法か。


「気球で世界一周!?」は、日本人初の気球による世界一周をめぐり、成功するか失敗するかでのび太たちとジャイアンたちが賭けをすることに。そして秘密道具でさまざまなピンチを助けるが……
80日間世界一周』から着想したかごとき短編を、2005年リニューアル以降で初のアニメ化。脚本は鈴木洋介で、ひのもとひろしがコンテを担当する。
google地図をアナログ化し、リアルタイムで楽しめるようにしたような秘密道具をつかって気球を観察し、さらに地図を操作するオプション道具で気球を山脈や漂流から救う。昔は手に汗をにぎる冒険劇を子供が手助けするエンタメと思っていたし、今回のアニメも楽しめはしたのだが……
……アニメオリジナルで漂流や竜巻からの救出を追加したことで、そもそも冒険家を超常能力で助けることは主体性の軽視ではないか?という疑問をおぼえてしまった。秘密道具をつかって助けているのでは、純粋な賭けではないのではないか?という疑問もおぼえた。かといって原作で描かれてない冒険家の顔や固有性をアニメオリジナルで描かれても困るし、命を失いかねない危機を助けようとする応援と善意が根幹にあることも無視はできないが……
漂流と竜巻から救う場面で、アニメオリジナルのオプション道具を出したのが良くなかったのかもしれない。地図上をあおいで気球をコントロールする「地球うちわ」は、地図を描きなおす原作のオプション道具「地球消しゴム」等とニュアンスが違いすぎる。地図の変化で対応できないトラブルは冒険家自身の努力で回避するしかなく、のび太たちは見守りながら応援するだけ……といった描写ならば納得できたかもしれない。悩ましいところだが。
それとは別に、映像面でも今回は興味深いところがあった。原画スタッフの半分以上がWHITE LINEの韓国アニメーターなのはともかく、キャラ設定と作画監督も小西富洋と共同で「チャ ミョンジュン」というアニメーターがつとめている。たぶん2005年リニューアル以降に共同とはいえ外国人らしき作画監督が入るのは初めてだ。
また、原画の少数の日本人アニメーターに「うろ」という名義のクレジットがあった。SNSで仕事を請けるような若手デジタルアニメーターを思わせる変名で、何か情報がないかと検索したが、はっきり断言できる情報は見つからなかった。
どちらにしても劇場版にとられていた作画リソースが戻ってきたのか、全編アニメーションとして見どころがあった。秘密道具で気球を見る角度を変えるカットで、気球が縦回転する作画にあわせた背景のスライドが完璧。ジャイアンスネ夫が気球ごっこする場面も、原作通りほとんどサイレントで描写するからこそ*1、動きだけで面白味をつくるすごさがわかる。途中で気球を襲う竜巻の作画もすばらしく、主線のないフォルム優先の輪郭など、WEB系作画のような魅力があった。ストーリーのため俯瞰や煽りの構図も多く、それが破綻していない。


「大ピンチ!スネ夫の答案」は、ひょんなことからスネ夫の答案がマクガフィンと化す原作を、2018年にアニメ化した回の再放送。
hokke-ookami.hatenablog.com
しかしあらためて見ても皮肉な展開だ。

*1:それだけに、ひとつだけ効果音を入れたのが残念。