「くしゃみに気をつけろ」は、ドラえもんが風邪をひいてクシャミを連発。ドラミが薬をわたして医者を呼んでくるが、ドラえもんは間違えて声を固める秘密道具を飲んでしまう……
脚本は伊藤公志で、コンテは前シリーズディレクターの善総一郎。秘密道具「コエカタマリン」の、原作ではオチだったドラえもんのクシャミ連発を、全編のトラブルとして描いたアニメオリジナルストーリー。
新型コロナ禍にぶつかったのは間が良いのか悪いのか。いや、テーマ選定などは新型コロナ禍が話題になる以前だとしても、再放送をつづけているなかで延期する判断はできただろうし、あえて今だからこそ放送したのかもしれない。
基本的にドラえもんが注射を嫌がり医者から逃げるし、医者は聴診器を柱にあててしまうヤブだったりするが、薬を飲んで寝ることを選択する。人間で風邪をひいているスネ夫などはマスクをして、未来の巨大注射を事故でされてひどい目にあうが*1、最終的にドラえもんの影武者として最後の注射を受けいれて回復する。子供が医者や注射を嫌がる気持ちを頭から否定はせず、しかし受けいれて楽になる背中を押す……と解釈するのは好意的にすぎるだろうか。
そうした病気のアレコレを無視すれば、アクションの多いドタバタギャグとして楽しいエピソードではあった。おおぜいから追われて隠れたドラえもんが、クシャミをしたため遠くの景色に巨大な声が発生するビジュアルが楽しい。原作では漫画の描き文字がそのまま固まるという、手塚治虫のようなメタ描写をSF設定で劇中の事実として描くことが要点だが、アニメでもテロップが表示されることは少なくないのでメタギャグとしての効果は感じられた*2。
担当するアニメーターは、秋山めぐみキャラ設定に吉田誠作画監督だが、原画は二度目の大竹正枝一人原画*3。固まった声が手描き作画でていねいに動いたり、止め絵でも画面を埋めるほど多く、それでいて絵が荒れてなくて感心する。また、公園でドラえもんへ飛びかかるジャイアンの描線が荒い直線で目を引いたが、これは演出段階の指示かもしれない。しかしキャリアがあるアニメーターなのに、ここまで別の作監がついていることが逆に不思議だ。ミニコーナーの作画を担当したことはあるが、『ドラえもん』では本編の作画監督を経験したこともないはず。
「友だちの輪」は2018年の再放送。良い百合オチ。
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